コラム
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セミナー「2024年度診療報酬改定が医業経営に及ぼす影響と対策 」ご案内

セミナー「2024年度診療報酬改定が医業経営に及ぼす影響と対策 」ご案内

2024年は、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の改定に加え、6年に一度見直しされる医療計画の改定年にもあたり、医療・保健・介護・福祉の事業に携わる私たちにとってとても重要な年といえます。また、地域医療構想のゴールである2025年の前年にもあたり医療制度の大きな見直しが想定されます。先週、1月26日に点数はまだ未記入ですが、2024年診療報酬個別改定項目が741ページのボリュームで発表されました。改定のたびにページ数が増えて読み込むのもひと苦労です。本コラムでは詳細を述べるスペースがありませんが、来る3月4日に弊社代表の伊藤が、医療・介護・ヘルスケア戦略特別セミナー(主催:株式会社 新社会システム総合研究所)を実施いたします(添付のパンフレットをご参照ください)。
本講座では、診療報酬改定を中心に、過去からの医療制度改革の流れを確認しながら、令和6年度の改定の意味、内容を概説いたします。また、日本において人口減少・少子高齢化が進展する中、今後の医業経営を健全に維持・発展させるために医療機関が何をなすべきかについても、中小企業診断士で医業経営コンサルタントのプロである講師が対応策を解説いたします。
 セミナーの時点では点数も発表され、より具体的な診療報酬改定の内容を披露できると思います。ご期待ください。

セミナー講義のながれ
1. 医療提供体制の変遷…地域医療構想、地域包括ケアシステム etc.
2. 診療報酬改定の変遷
3. 入院医療…機能の明確化 etc.
4. 外来医療…紹介受診重点医療機関 etc.
5. 令和6年度診療報酬改定概説
6. これからの医療制度の課題
7. 医療機関に求められる今後の対応

令和6年度診療報酬・薬価等改定について

令和6年度診療報酬・薬価等改定について

令和6年度診療報酬・薬価等改定は、医療費の伸び、物価・賃金の動向、医療機関等の収支や経営状況、保険料などの国民負担、
保険財政や国の財政に係る状況を踏まえ、以下のとおりとなりました。

1.診療報酬 +0.88%(国費800 億円程度(令和6年度予算額。以下同じ))
 各科改定率 医科 +0.52%
歯科 +0.57%
調剤 +0.16%

うち 看護職員等ベア対応 +0.61%
食費基準額の引き上げ +0.06%
効率化・適正化 -0.25%
その他 +0.46%

2.薬価等 -1.00%(国費▲1,200 億円程度)
 ①薬価     -0.97%(国費▲1,200 億円程度)
 ②材料価格  -0.02%(国費▲20 億円程度)

全体改定率  -0.12%

2023年8月病院報告 患者数について、コロナ禍前(2019年7月末)との比較で入院7.8%減、外来5.1%減—厚生労働省 病院報告

2023年8月病院報告 患者数について、コロナ禍前(2019年7月末)との比較で入院7.8%減、外来5.1%減—厚生労働省 病院報告

11月17日の厚生労働省の公表した2023年8月分病院報告では、
・2023年8月末の患者数、コロナ禍前の2019年7月末比で入院7.8%減、外来5.1%減
・病院の平均在院日数、「短縮」と「延伸」を繰り返す混乱がいまだ継続
・一般病床の利用率、コロナ感染症の影響で2023年8月末は72.7%と依然として低い水準

であることがわかりました。

本年(2023年)7月末における1日平均患者数は、病院全体で、入院:114万1213人、外来:124万897人となりました。
前年同期2022年7月末と比べると、入院では3.0%の増加、外来では4.6%の減少となりました。外来の減少は今夏の新型コロナウイルス感染症第9波の影響が考えられます。
また、 2021年8月末と比べると、入院では0.6%の減少、外来では0.9%の減少。 2020年8月末と比べると、入院では1.4%の減少、外来では7.5%の増加となりました。
さらに、コロナ感染症の影響がない2019年8月末と比較してみると、入院では7.8%減、外来では5.1%減となっています。

入院・外来ともにコロナ禍前の患者数には、いまだ戻っていないことが確認できます。入院についてはコロナ重症患者等をすぐさま受け入れられるような空床(即応病床)の確保、コロナ重症患者に対応するための、一部病棟・病床閉鎖などが続いていることが、患者数が依然として戻らないことの要因であると考えられます。このため入院に関して、当面、患者減の傾向が継続すると考えられます。

〇医療法上の病床種別ごとの「入院患者数」と「過去の同月からの変化」
・一般病床:64万2419人(前年同月比9.1%増、2021年8月比4.0%増、2020年8月比2.3%増、2019年7月比6.0%減)
・療養病床:23万2374人(前年同月比0.4%減、2021年8月比4.9%減、2020年8月比6.5%減、2019年8月比14.1%減、ただし療養病床→介護医療院への移行なども加味して考えなければならない)
・精神病床:26万3628人(前年同月比0.6%減、2021年8月比2.9%減、2020年8月比4.9%減、2019年8月比6.9%減、ただし地域移行推進による減少なども加味して考えなければならない)
・結核病床:1194人(前年同月比8.9%増、2021年8月比0.8%減、2020年8月比16.1%減、2019年8月比21.4%減)
また、平均在院日数は、病院全体では25.6日となり、前月から0.4日の短縮となりました。
病床種別に見ると、
・一般病床:15.3日(前月から0.2日短縮)
・療養病床:119.5日(同7.1日短縮)
・精神病床:259.7日(同4.8日短縮)
・結核病床:29.5日(同8.0日短縮)
・感染症病床9.9日(同増減なし)

コロナ感染症の影響により、ある月に短縮すれば、翌月に延伸し、さらにその翌月には再び短縮するなどの状況が繰り返されており、依然として医療現場の混乱が続いていることがわかります。

さらに、月末病床利用率を見ると、病院全体では76.8%で、前年同期2022年8月末と比べて2.7ポイント上昇、コロナ感染症が本格化していた2021年8月末と比べて1.1ポイント上昇、2020年8月末と比べて0.9ポイント上昇でしたが、逆にコロナ禍前の2019年8月末と比較すると1.2ポイント低下となりました。

とくに急性期・高度急性期病床では、コロナ感染患者受け入れのために空床を確保しておくこと、コロナ感染症対応のために、一部病棟・病室を閉鎖し医療資源を集約化することなどが必要なことも手伝って病床利用率が下がっていると考えられます。これらの数字からもコロナ感染症流行前の状況には依然として戻っていないことがわかります。

〇病床種別の利用率
・一般病床:72.7%(前年同月比5.9ポイント上昇、2021年8月比4.2ポイント上昇、2020年8月比2.8ポイント上昇、2019年8月比0.4ポイント上昇)
・療養病床:84.4%(前年同月比1.3ポイント上昇、2021年8月比0.3ポイント低下、2020年7月比0.1ポイント低下、2019年7月比2.6ポイント低下)
・精神病床:82.1%(前年同月比0.4ポイント低下、2021年8月比1.3ポイント低下、2020年8月比2.9ポイント低下、2019年8月比3.9ポイント低下)
・結核病床:31.5%(前年同月比3.5ポイント上昇、2021年8月比1.4ポイント上昇、2020年8月比3.3ポイント低下、2019年8月比3.3ポイント低下)
・感染症病床:89.2%(前年同月比871.8ポイント低下、2021年8月比736.7ポイント低下、2020年8月比29.6ポイント低下)

このように、一般病床とりわけ急性期病床を中心に、コロナ感染症の重症患者が発生した場合に、すぐさま受け入れられるように空床にしておくことも求められているため、長期間で低い水準で推移していることがわかりました。

訪問看護におけるオンライン資格確認の導入について、議論がなされました-中医協総会

訪問看護におけるオンライン資格確認の導入について、議論がなされました-中医協総会

10月11日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で訪問看護におけるオンライン資格確認の導入について議論・検討されました。

訪問看護レセプトのオンライン請求・オンライン資格確認

• 訪問看護ステーションにおいて、令和6年6月よりレセプトのオンライン請求とオンライン資格確認を開始する。
• また、令和6年秋の保険証廃止を見据えつつ、オンライン請求・オンライン資格確認を義務化する。その際、現行の保険証廃止は、国民の不安払拭のための措置が完了することが大前提であり、医療現場に混乱が生じないよう、安心してマイナ保険証を利用できる環境を実現する。

1. オンライン請求・オンライン資格確認の開始

・訪問看護ステーションのオンライン請求を開始(省令改正・令和6年6月施行予定。適用は翌月請求分から)
・訪問看護ステーションのオンライン資格確認を開始 ※令和6年6月開始予定
・訪問看護ステーションに対するオンライン資格確認導入に係る財政支援
※ オンライン請求の開始に向けて準備が必要な機器等の一部は、オンライン資格確認と兼用することが可能
 
2. オンライン請求・オンライン資格確認の義務化・経過措置

・ 訪問看護ステーションにオンライン請求を義務化(省令改正・令和6年秋(保険証廃止時期)施行予定)  
※ 経過措置:通信障害、システム整備中、ネットワーク環境、改築工事、廃止・休止、その他特に困難な事情
・訪問看護ステーションにオンライン資格確認を義務化(省令改正・令和6年秋(保険証廃止時期)施行予定) 
※ 経過措置:システム整備中、ネットワーク環境、改築工事、廃止・休止、その他特に困難な事情

論点として以下のことがあげられました。

○令和6年秋の保険証廃止を見据えつつ、訪問看護基準(省令)を改正し、訪問看護におけるオンライン資格確認 の導入を義務化することとしてはどうか。その際、令和6年秋時点でやむを得ない事情がある場合は、期限付きの 経過措置を設けることとしてはどうか。
○ 居宅同意取得型に実装される再照会について、当該医療機関等との継続的な関係のもと訪問診療等が行われている場合における2回目以降の訪問においては、療養担当規則等に法令上の資格確認方法として位置づけることとしてはどうか。
○ 療養の給付等に関する請求方法等についての法令改正を踏まえた療養担当規則等の改正を行ってはどうか。

https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001155187.pdf

令和6年度診療報酬改定について「高齢者の救急搬送等」「かかりつけ医機能」をどのように対応し、どのように報酬で評価すべきか検討される—中医協

令和6年度診療報酬改定について「高齢者の救急搬送」や「かかりつけ医機能」をどのように対応し、どのように報酬で評価すべきか検討される—中医協

令和6年度の診療報酬改定に向けて、9月27日に開催されました中央社会保険医療協議会の総会、および診療報酬基本問題小委員会「入院医療等の調査・評価分科会」の中間まとめ報告が行われました。入院医療・外来医療のそれぞれについて、今後の個別具体的な論議に資する技術的検討事項が改めて整理されました。
 また、同日の中医協総会では「2022年度医療費の動向」を踏まえ、医療機関の経営状況をどのように見るべきか、という議論も行われています。

「高齢者の救急搬送、急性期入院医療」にどのように対応すべきかが最重要論点

中医協の下部組織「入院医療等の調査・評価分科会」で中間まとめが行われました。
例えば急性期入院医療では「高齢の救急搬送患者、急性期患者をどの病棟で受けるべきか、関連して看護必要度の評価内容をどう見直すべきか」「平均在院日数の基準を短縮すべきか」、回復期リハビリ病棟では「リハビリ・栄養・口腔管理の一体的実施をどう進めるか」、外来では「がん化学療法の外来移行をどう進めるか」などが重要検討項目として浮上しています。

9月27日の基本小委・総会には、この中間まとめが報告されました。
中医協委員からは、今後の議論に資するよう、例えば次のような「分析の深掘り」「技術的・専門的な見地からの更なる検討」を行ってほしいとの要請がの声が挙がったようです。

【外来医療について】
特定疾患療養管理料では、在宅時総合医学管理利用などと異なり「時間外加算1取得医療機関での算定多い」との傾向は見られないが、それは特定疾患療養管理料の算定要件に「時間外加算1取得」が含まれていないためで、当然のことではないか。「時間外加算1を取得していない医療機関」がかかりつけ医機能を果たしていないわけではない。特定疾患療養管理料算定病院が地域で果たしている「かかりつけ医機能」について、より多面的な分析をすべきである。

かかりつけ医機能発揮の観点から、「どのような疾患を特定疾患療養管理料の対象に含めるべきか」を検討すべきである(例えば慢性腎炎や間接リウマチ、認知症なども対象に含めるべき)

コロナ禍で慢性疾患患者の受診控えが生じ、「治療間隔の延伸」「治療中断」なども起こっている。医学管理の質を確保する観点から、「長期処方の増加度合」やそれに伴う「医療機関の負担増」なども分析すべき。

高血圧症などの慢性期疾患の管理について、生活習慣病管理料や地域包括診療料等の算定は極めて少ない。既存の「かかりつけ医機能を評価する」とされている診療報酬項目を体系的に整理しなおし、慢性疾患の管理をどの診療報酬項目で評価するかを考えていくべき。

特定疾患療養管理料でも「計画書作成・交付」などを要件化し、より効率的・効果的な疾患管理を行えるようにすべき。

オンライン診療の適切な実施に係る指針では「初診での睡眠薬処方は禁止」されているが、不眠症が上位疾患に浮上しており「不適切なオンライン診療の可能性」が示唆されている。さらなる分析を進め「健全な形でのオンライン診療の普及」を目指すべき。


【入院に係る横断的事項】
「病院に歯科があるケース」と「外部から歯科クリニックが関与するケース」との違いなどについて分析を進めるべき。


【急性期入院医療について】
総合入院体制加算から急性期充実体制加算への移行の背景には「点数差」(急性期充実>総合入院)があるのではないか。総合入院体制加算の役割を踏まえた「点数引き上げ」を検討すべき。

看護必要度A項目について2022年度に「点滴ライ同時3本以上管理」が「薬剤3種類以上管理」に見直されたが、該当割合が急増している。どういった薬剤が使用されているのかなどを詳しく見るべき。

高齢者の救急搬送・急性期入院医療をどういった病棟で主に対応するかも考慮した制度設計を考えていく必要がある。

「高齢者の救急搬送・急性期入院医療にどう対応していくか」が今後ますます重要な課題となる。その際「地域包括ケア病棟で受ければよいではないか」といった乱暴な議論をするのではなく、「2次救急病院では、まず急性期病棟で初療し、必要に応じて地域包括ケア病棟へ転棟する」「2次救急対応ができない病院の地域包括ケア病棟では、まずトリアージをきちんと行える急性期病院で初療し、必要に応じて下り搬送で受け入れる」といった丁寧な視点で検討していかなければならない。


【DPC改革について】
効率性係数・指数については「本来の趣旨に沿わないケース」があることを踏まえて「計算方法の見直し」などを検討すべきだが、複雑性係数・指数については「計算方法の見直し」ではなく、データ数の少ない病院などはDPCからの退出を促すルールを検討すべき。


【回復期入院医療について】
高齢者の救急搬送・急性期入院医療について、「下り搬送を行い地域包括ケア病棟で受ける」ことが現実的であろう。ただし、「地域包括ケア病棟に直接入棟する患者」と「急性期病棟を経て地域包括ケア病棟に入棟する患者」都では、医療資源投入量等が大きく異なり、両者を同様に扱うことには疑問がある。そうした点を専門的視点で整理してほしい。

回復期リハビリ病棟における「FIM測定の適正化、第3者評価」に関連して、「入棟中のFIMの定期的な評価」を導入する方向で検討を進めてほしい。


【慢性期入院医療について】
療養病棟における医療区分の精緻化・細分化の方向には賛同できる。介護施設等との役割分担も踏まえ、どういった患者をどういった医療機関で受け入れることが適切かの検討を進めてほしい。




こうした意見を踏まえて、入院・外来医療分科会で改めて「深掘りの分析・議論」を行うと同時に、中医協総会で今後本格化する個別具体的な論議も進められていくでしょう。

【告知】オンライン無料セミナー開催のご案内

【告知】9月12日(火)開催 オンライン無料セミナーのご案内

「今後の外来医療の方向性を展望する」 ~2024年診療・介護報酬改定に向けて~
主催:Ubie株式会社

2023年9月12日(火) 19:30~20:30
2023年9月13日(水) 19:30~20:30 
※13日はオンデマンド配信になります。

上記テーマにて当社代表の伊藤哲雄が登壇し、講演をいたします!

セミナー概要

1. 令和6年度の同時報酬改定の方向性と課題

2. 今後の外来医療の展望について

3. 医療機関が今からでも対策すべきポイント

※参加対象:クリニックの経営・運営に携わる方

詳しくはこちらから

ぜひご覧ください!

「在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院」の流れを評価し、救急搬送や受け入れ負担の軽減を図るべき。―入院・外来医療分科会

「在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院」の流れを評価し、救急搬送や受け入れ負担の軽減を図るべき。―入院・外来医療分科会

8月10日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」において、

「在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院という流れの患者」も、「救急搬送後に直接地域包括ケア病棟へ入院する患者」と同様に医療・看護の必要性が高く、医療資源投入量も多い。こうした患者の評価を高くして、救急搬送前の医療機関受診を促進することで、「救急搬送・救急受け入れ」の負担を減らすことが可能になる。

一部に短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟があり、在宅復帰率の向上、自宅等からの患者受け入れ割合の向上を容易に実現できている。地域包括ケア病棟の在宅復帰率計算などから短期滞在手術等基本料算定患者を除外するなどの工夫を行ってはどうか。

こういった議論が行われました。


在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院という流れの患者についてより高い評価を。

地域包括ケア病棟について、2024年度診療報酬改定に向けて「高齢の救急搬送患者受け入れをどう推進していくか」が重要事項となっています。

これまで、高齢の救急搬送患者について「急性期病棟で受ける際のインセンティブを縮小していく」「地域包括ケア病棟で受ける際のインセンティブを強化していく」といった議論が行われてきています。

8月10日の入院・外来医療分科会では「救急搬送患者」のみならず、「初診・再診後に入院する患者」についての分析も行われ、次のような状況が明らかにされました。
「在宅等で療養しているが具合が良くないが、救急搬送するほどではなく、医療機関の外来を受診する」→「診察の結果、入院加療が必要と判断される」といったケースで、このような患者について「救急搬送が必要となる手前において医療機関受診を促すことができれば、救急搬送・救急対応の負担を軽減することができるのではないか」と期待されています。


〇初診・再診後に入院する患者」でも、救急搬送患者と同じく誤嚥性肺炎や尿路感染症が多い
〇「初診や再診後に入院する患者」では、医療・看護などの必要性が「救急搬送後、直接、地域包括ケア病棟に入する患者」に近い(医療・看護などの必要性が高い)
外来受診後の地域包括ケア病棟入院患者は、救急搬送後の直入患者と同様の医療・看護状況にある


「初診や再診後に地域包括ケア病棟に直接入院する患者」の受け入れを適切に評価してはどうか、という意見も出されています。一方では「救急搬送後に直接入棟する患者や初診・再診後に入院する患者以外では、医療資源投入量が少ない。その点を勘案した評価を検討するべき」と逆の視点での意見も出た中で議論を行っています。


地域包括ケア病棟の在宅復帰率などから短期滞在手術等基本料算定患者を除外してはどうか


また、8月10日の入院・外来医療分科会には、地域包括ケア病棟における短期滞在手術等基本料3の算定状況も報告されました。

地域包括ケア病棟の多くでは「短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者」を受け入れていませんが、一部病棟では受け入れも行っており、中には「短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者割合が10%以上の病棟」もあります。
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟も一部にある
このような病棟(短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者割合が10%以上の病棟)では、
・家庭から入院した患者割合が高い
・自宅等へ退院する患者割合が高い
・平均在院日数が短い
などという特徴があります。

短期滞在手術等基本料3は「一定の軽微な手術を2泊3日で治療する」ことを評価するものなので「在棟日数が短くなる」「自宅からの入院、自宅への退院が多くなる」ことは当然ですが、これは、短期滞在手術等基本料3を多く受け入れると、地域包括ケア病棟の施設基準を満たしやすくなります。(自宅等から入棟した患者割合要件、在宅復帰率要件等)
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟では、自宅等からの入院患者割合が高い
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟では、在宅復帰率が高い
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟では、平均在院日数が短い
しかし、短期滞在手術等基本料3患者の受け入れが地域包括ケア病棟の本来の目的に合致しているのか改めて考えてみなければいけないかもしれません。。

急性期一般病棟においては「平均在院日数の計算に際して、短期滞在手術等基本料算定患者は除外する」「看護必要度の評価から短期滞在手術等基本料算定患者は除外する」などの対応が図られています。短期滞在手術等基本料算定患者では、本来の姿と異なる形で「在院日数の短縮」「看護必要度割合の上昇」が実現できているのが現実でしょうか。

地域包括ケア病棟の施設基準についても、こうした「短期滞在手術等基本料算定患者の除外」が検討されていく可能性もあります。

なお、ごく一部では、「短期滞在手術等基本料算定患者割合が50%以上」の地域包括ケア病棟もあるようです。

次回診療報酬改定のなかでは、
地域包括ケア病棟の要件や基準がより一層厳しくなることも想定しなければいけないのかもしれません。

外国人患者を受け入れた実績のある医療機関の2割で未収金が発生、一部では「月間100万円を超える」大きな未収金も発生―厚労省

外国人患者を受け入れた実績のある医療機関の2割で未収金が発生、一部では「月間100万円を超える」未収金も発生―厚労省

厚生労働省が7月28日に公表した2022年度の「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」結果から、

我が国を観光等で訪れた外国人患者が、傷病にあい、医療機関を受診する場合、通訳等に要するコストを考慮し「1点を15円、20円」などとして医療費を請求することが医療機関判断で自由に行えるが、多くの医療機関は「1点10円」のままで費用請求を行っている。

また、ほとんどの病院において通訳費用を請求していない。

外国人患者を受け入れた実績のある医療機関の2割で未収金が発生しており、一部ではあるが「月間100万円を超える」大きな未収金も発生している。

このような状況が明らかになりました。

【厚生労働省資料】
・令和4年度医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査について(概要版)
医療機関における外国人患者の 受入に係る実態調査 結果報告書


半数の病院が「外国人患者の受け入れ」実績あり

新型コロナウイルス感染症が下火なり、日本を訪れる外国人旅行者が急速に増加しています。外国人旅行者が増えれば、傷病で医療機関を受診する外国人患者もおのずと増加します。しかし、外国人患者側には「どの医療機関に行けば良いのかわからない」、医療機関側には「言語対応はどうすればよいのか、費用請求はどのように行えばよいのか迷ってしまう」などのさまざまな疑問が生じます。

このような疑問を解消し、外国人患者が安心して医療機関にかかれるよう、また医療機関側が安心して外国人患者を受け入れられるような体制整備に向け、
・外国人患者を受け入れる医療機関リストの作成
・医療機関に向けた外国人受け入れに関するマニュアルの整備(患者が保険に加入しているかなどを事前に確認するとともに、事前に概算費用を提示するなどの重要性を指摘)
・費用負担について、「通訳等に係る費用は実費請求できる」「診療費は自由診療として医療機関が価格を設定できる」こと
などを明らかにする―などの取り組みが行われています。

今般の実態調査では、医療機関側の取り組み状況(外国人患者受け入れ体制、受け入れ実態)が明らかにされました。全国の約5000病院、約1500クリニックが回答しています。

まず「2022年9月における外国人患者を受けた実績」を見てみると、病院ではちょうど半数(50.0%)が「受け入れ実績あり」と回答しています。受け入れ患者数は「10人以下」が多くなっていますが、1000人を超える病院も一部にはあります。

また、厚労省による「外国人患者受入れのための医療機関向けマニュアル」の病院における認知度を見ると、
・内容を知っている:31.8%
・名前は知っているが、内容は知らない:47.5%
・知らない:20.7%
となりました。

厚労省による外国人患者受け入れ事業の認知度は、
・希少言語に対応した遠隔通訳サービス:70.4%
・医療機関における外国人対応に資する夜間・休日ワンストップ窓口:54.0%
・外国人患者受入れ医療コーディネーター養成研修:54.8%
・外国人向け多言語説明資料一覧:57.7%
・外国人患者受け入れ情報サイト:47.1%
・訪日外国人受診者医療費未払情報報告システム:46.6%
・外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP):25.6%
となっています。
サービス・事業によって認知度に差があることがわかります。

JMIPもしくはJIH認証医療機関で「外国人患者の受け入れ」体制が充実
次に、外国人患者の受け入れ体制を見ると、次のようになっています。

【自院における外国人患者の受診状況を把握しているか】
・病院全体:詳しく把握11.6%、大まかに把握50.6%、把握していない37.8%
・拠点的医療機関:詳しく把握11.6%、大まかに把握56.2%、把握していない32.2%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:詳しく把握77.6%、大まかに把握22.4%

【外国人患者の受入れ体制の現状を把握し、課題を抽出しているか】
・病院全体:実施8.5%、未実施91.5%
・拠点的医療機関:実施24.2%、未実施75.8%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:実施96.5%、未実施3.5%

【自院で「外国人患者受入れ体制整備方針」を策定しているか】
・病院全体:整備完了4.0%、整備中8.6%、未整備87.5%
・拠点的医療機関:整備完了17.1%、整備中17.4%、未整備65.4%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:整備完了90.6%、整備中7.1%、未整備2.4%

【外国人対応マニュアルを整備できているか】
・病院全体:整備完了5.2%、整備中8.3%、未整備86.5%
・拠点的医療機関:整備完了20.8%、整備中16.5%、未整備62.7%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:整備完了91.8%、整備中4.7%、未整備3.5%


拠点的医療機関は「各都道府県で、外国人患者の受け入れ等を積極的に行ってもらうとして指定された医療機関」、JMIP認証医療機関は「日本医療教育財団が運営する外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)の認証を受けた医療機関)」、JIH認証医療機関は「Medical Excellence JAPANにより、渡航受診者の受け入れに意欲と取り組みのある病院として推奨されている医療機関」をさします。JMIPもしくはJIH認証医療機関で「外国人患者を受け入れる体制、取り組み」が進んでいることが伺えます。拠点的医療機関には「さらなる取り組み」に期待したいところです。


なお、外国人患者受入れ医療コーディネーターの配置・業務の状況を見ると、上記と同じように「JMIPもしくはJIH認証医療機関で配置等が進んでいる」ことが分かりました。コーディネーターの役割としては、「院内の部署・職種間の連絡調整」が最多となっています。

ほとんどの2次医療圏内に「外国語対応可能な医療機関」が1か所以上整備
次に、2次医療圏における多言語対応(医療通訳・電話通訳・ビデオ通訳・自動翻訳デバイス等)の状況を見ると、
・医療通訳者が配置された病院がある2次医療圏:158(全体の47.2%)
・電話通訳が利用可能な病院がある2次医療圏:235(同70.1%)
・ビデオ通訳が利用可能な病院がある2次医療圏:113医療圏(同33.7%)
・外国人患者の受け入れに資するタブレット端末・スマートフォン端末等を医療機関として導入している病院がある2次医療圏:315(同94.0%)
・前述のいずれかが利用可能な病院がある2次医療圏:328(同97.9%)
となっています。

ほとんどの2次医療圏で「何らかの外国語対応が可能な病院」が存在している状況となっています。外国語対応が難しい医療機関では、外国人患者が来院し「自院では対応が困難(外国語に対応できない)である」と判断した場合には、2次医療圏内の「外国語対応が可能な医療機関」を紹介することが求められます。


外国人患者の診療費は1点単価10円のところが多い、通訳費請求はごく一部にとどまる

次に、注目される「外国人患者の診療費用」を見てみると、次のように「診療報酬点数表に沿い、1点単価(通常は10円)を割り増す形」をとっている病院が一部にあるものの、多くの病院では「通常と同様に1点単価=10円」の診療費を徴収していることが明らかとなりました。

【1点あたり「20円超」とする】
・病院全体:2.3%
・拠点的医療機関:7.9%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:42.9%

【1点あたり「15円超20円以下」とする】
・病院全体:4.8%
・拠点的医療機関:9.0%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:23.8%

【1点あたり「10円超15円以下」とする】
・病院全体:7.4%
・拠点的医療機関:8.2%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:4.8%

【1点あたり「10円以下」とする】
・病院全体:85.6%
・拠点的医療機関:74.8%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:28.6%

(再掲)【1点あたり「10円超」とする】
・病院全体:14.5%
・拠点的医療機関:25.1%
・JMIPもしくはJIH認証医療機関:71.5%


我が国の医療保険に加入していない外国人患者の診療は「自由診療」となり、その費用は医療機関が独自に設定することになります。その際、個々の医療機関で「通訳費はどの程度か」「通常より診療時間はどの程度増えるのか(外国語対応、医療制度の違いの説明などで通常患者よりも多くの時間を割くケースが増える)」などを勘案して設定することが原則で、拠点医療機関やJMIP(日本医療教育財団の認証)・JIH(Medical Excellence JAPANの認証)登録医療機関では、外国人患者へ対応する体制を充実させており、その分、多くのコストを単価に上乗せする必要があると考えていることが分かります。

ところで、国などが「外国人患者では1点●円での診療が望ましい」などの基準を示すことは、公正な取り引きに反するため、なされません。

なお、一部、診療費以外に「通訳費」を請求する医療機関もあります。厚労省は2019年3月28日に通知「社会医療法人等における訪日外国人診療に際しての経費の請求について」を発出し、「外国人患者への診療において医療通訳を活用した場合、その費用を患者に請求することが可能である」旨を明確にしていますが、この内容を知らない医療機関も存在する可能性があります。


外国人患者受け入れ医療機関の2割で未収金発生、一部だが月500万円超の未収金も

さらに、外国人患者においては言葉の壁、慣習の違いなどから、「未収金の発生」も問題視されています。
今般の調査では、
・外国人患者受け入れ実績のある病院(2342、全体の半数)のうち、19.9%で「未収金」が発生した
・月間の未収金発生件数は「5件以下」が多いが、一部に「31件以上」というところもある
・月間の未収金総額は「1万円以下」が多いが、一部に「500万円超」というところもある
・1件当たり未収金額は「1万円以下」が多いが、一部に「100万円超」というところもある
ことが分かりました。


未収金は病院経営を圧迫する大きな問題です。「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」では、未収金発生防止のために、例えば、外国人患者が海外旅行保険に加入しているか、また「これから実施する治療が当該保険でカバーされるか」の保険会社への確認をとったか、などを医療機関で事前にしっかりと確かめる。医療費(概算)の事前説明を丁寧に行うことなどが重要であるとアドバイスしています。

在宅医療ニーズの急増に備えるため「在宅医療の質・量双方の充実」が継続課題となる。訪問看護師の心身負担増への対応も重要課題である—中医協総会

在宅医療ニーズの急増に備えるため「在宅医療の質・量双方の充実」が継続課題となる。訪問看護師の心身負担増への対応も重要課題である—中医協総会

7月12日に開催された中央社会保険医療協議会・総会において、

高齢化の進展により在宅医療や訪問看護などのニーズが急増していく中で、在宅医療等の質・量双方の充実が急務とされ、診療報酬でも対応を検討していく。その際「かかりつけ医機能を持つ医療機関による在宅医療」と「在宅専門医療機関等による在宅医療」とが、連携し、補完しあうような関係構築を目指していくべきではないか。

訪問看護、とりわけ精神疾患患者への訪問看護が増加し、訪問看護ステーションでも対応を強化しているが、現場看護職員の身体的・精神的負担が大きく、事業所間連携や業務負担軽減を可能とする報酬上の手当てが必要となっている。

訪問栄養指導の重要性が増しており、地域の栄養ケア・ステーションと、医療機関・訪問看護ステーション等との連携をこれまで以上に強化していく必要がある。


このような議論(「在宅その1」論議)が行われました。
※在宅(その1)参考資料

高齢化が進展する中で「在宅医療等のニーズ」は2040年度まで増加していくことが確実であり、こうしたニーズに的確に対応するために、「在宅医療等の質・量双方の充実」が昨今の診療報酬改定ポイントの1つとなっています。

厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長が提示した資料からは、「地域によってバラつきがあるものの、在宅療養患者に対する指導管理を包括評価する在宅時医学総合管理料や施設入居時等医学総合管理料、実際の在宅医療提供を評価する在宅医療訪問診療(計画的な在宅医療提供を評価)、往診(緊急時の在宅医療提供を評価)、特別な疾患・状態で在宅療養する患者への対応評価を行う報酬(ターミナルケア加算、看取り加算、在宅がん医療総合診療料など)について、算定件数が増加してきている」状況が確認されており、「質・量双方の充実」が進んでいることが伺えます(もっとも「平素より計画的な訪問診療を強化し、緊急対応である往診を減らすべき」などの指摘もある)。

後者の「量の充実」に関しては、「在宅医療に積極的に対応する在宅療養支援診療所などの整備を進める」方策とあわせて、「一般の医療機関でも在宅医療等に少しずつ対応してもらう」ことが重視されてきています。「体制面などから在宅医療にそれほど力を入れることは難しいが、可能な範囲で在宅医療を行う」医療機関に期待するものです。

具体的には、例えば、「在支診以外の診療所」、つまり「在宅医療にとりわけ力を入れているわけではない」クリニックが、自院のかかりつけ患者が在宅医療が必要となった場合に他医療機関と連携等して24時間の往診・連絡体制を構築することを評価する【継続診療加算】を2018年度改定で新設し、2022年度の前回改定で【在宅療養移行加算】に発展的改組する(市町村や地域医師会との協力により往診が必要な患者に対し、自院・連携医療機関が往診を提供する体制を持つことも併せて評価する)在宅医療を提供する医療機関と、かかりつけ医療機関とが共同して指導管理を行うことを評価する【外来在宅共同指導料】を2023年度の前回改定で創設するなどの対応が図られています。

しかし、こうした新設点数の活用はまだまだ十分とは言えません。前者の在宅療養移行加算は450医療機関(加算I:72、加算II:378)で1か月当たり4000件程度(加算I:2837、加算II:1200)の算定にとどまり、後者の外来共同指導料にいたっては50医療機関弱(在宅医療機関を評価する指導料1:26、かかりつけ医医療機関を評価する指導料2:23)にとどまっています。今後、背景をより詳しく分析し、テコ入れ策を検討することになると想定されます。

また、在宅医療に関しては医療提供体制のみならず、地域の高齢化の状況、居住の状況(住人が密集して住んでいるか、離れたところに住んでいるか)等により大きな違いがあり、「一律の論じる」ことは非常に困難です。都市部では比較的効率的な在宅医療提供が可能ですが、地方では移動時間が大きく、在宅医療を効率的に行うことが困難です。また都市部でも、戸建て住居が多い地域と、高層マンションが多い地域では、「上下移動時間」などの差もあり、考慮すべき要素が多岐にわたります。

こうした状況を踏まえ、2024年度からの第8次医療計画に向けて、在宅医療に関しては、
適切な医療圏を設定する(在宅介護との連携が重要となり「市町村」を圏域とすることが重視される)、
圏域ごとに「在宅医療において積極的役割を担う医療機関」(在宅療養支援診療所・在宅療養支援病など)、「在宅医療に必要な連携を担う拠点」(市町村、医師会など)を適切に整備する、
在宅医療・介護連携をさらに推進する、
在宅療養患者が急変した場合の対応、看取り対応をさらに強化する、
災害時にも在宅医療提供を継続できるよう、BCP作成を進める、
などの方針が固められています。

今後、こうした状況を踏まえながら「在宅医療等の質・量双方の充実」をさらに診療報酬で後押ししていくことになります。

この点について診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は「今後、2040年に向けてさらに在宅医療等のニーズが高まる中、『患者が希望する場所で看取りが行える』ように、報酬面でも適切な対応を行うべきである。その際にはICTを活用した情報連携(在宅医療・介護提供者は主体が異なるため、医療機関・訪問看護ステーション・介護事業所などの情報連携が難しくなる)、病診連携(後方病床の確保が在宅療養を可能とする)、多機関・多職種が連携した24時間・365日体制の確保などが重要ポイントになる」旨を強調。また同じく診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は「地域における平時の水平連携(在宅医療を行う医療機関同士や訪問看護ステーションとの連携など)、有事(新興感染症拡大時など)の垂直連携(在宅医療を行う医療機関と大規模病院との連携など)が極めて重要になる。その際には、地域ごとに現状を把握して課題を整理、それに対応する方策を打ち立てて実行し、効果を評価して、さらに改善につなげていくというPDCAサイクルを回していくことが必要となる」とコメントしています。


かかりつけ医と在宅専門医療機関とが連携し、補完しあう関係構築に期待がかかる

また、同じく診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は、在宅医療提供主体として、大きく、
かかりつけ機能を持つ医療機関
在宅医療専門に行う医療機関
いわゆるメガ在宅医療機関
の3つが考えられるとしたうえで、「かかりつけ医療機関による対応が望ましいと個人的には考えるが、1人開業医などの場合には24時間・365日対応が困難である。その場合、在宅専門医療機関などに委ねた際に、そこで『かかりつけ医療機関との関係』が切れてしまうことがある。例えば『平素はかかりつけ医療機関が対応するが、週末や休日はの在宅専門医療機関等が補完的に対応する』などの連携体制が組めないか、考えていく必要がある」と提案しました。

あわせて池端委員は、上述した地域差に関連し「地方では、移動時間も長く、効率的な在宅医療提供が行えないことから、在宅専門医療機関等が成り立たない」ことを指摘。その場合の補完体制として「地域包括ケア病棟を持つ病院」などに期待を寄せています。地域包括ケア病棟には「在宅医療提供実績」も求められ、2022年度の前回改定で「より積極的に在宅医療提供を行うよう、基準の厳格化」も行われています。今後、2022年度改定の効果(地域包括ケア病棟における在宅医療提供の実績)等も踏まえて、在宅医療等の報酬改定論議を煮詰めていくことになります。

他方、支払側委員は「在宅医療等に関する地域差」の要因を分析するよう要請したほか
かかりつけ医機能を持つ医療機関による在宅医療等提供等、
後方病床による在宅医療支援機能に関する対応、
限られた医療資源の有効活用に向けた「往診」の適正化(通院可能な者は外来受診を行う)、
実効性のあるACP(Advanced Care Planning:人生の最終段階で自分が受けたい医療ケア、受けたくない医療ケアを専門家や家族等と何度も話し合い、可能であれば文書にしておく取り組み)の推進(形だけでのACP作成では意味がない)、
などが重要論点になるとの考えが松本真人委員(健康保険組合連合会理事)から示されています。


精神疾患患者への訪問看護ニーズが増大、現場看護師の負担にも配慮して充実を図るべき

また、在宅療養患者には「訪問看護」提供が極めて重要となります。眞鍋医療課長は、訪問看護について
大規模化・機能強化型が進んでいる(これにより重度者に対し、24時間・365日対応が可能になってくる)
「精神および行動の障害」患者が増加している
小児患者も増加している医療を提供する医療機関
一部に超高額な訪問看護レセプトとなる患者が存在している(極めて頻回な訪問看護が必要な重度者(難病患者)が利用している)
精神科訪問看護の需要が増加し、実績も増えており、一部に「機能強化型以外で精神科に特化した訪問看護ステーションがある
同一建物居住者に対する訪問看護、複数名による訪問看護などが増加している
夜間・早朝、深夜における訪問看護や緊急訪問看護が増加している
退院日当日の訪問看護は増加している(別表8の重度者とりわけ増加)
などの状況を報告しました。

訪問看護のニーズ増に現場が相当程度対応しており、「さならる訪問看護体制の充実」を図っていく必要性が伺えます。

この点については、吉川久美子専門委員(日本看護協会常任理事)から「24時間・365日対応が拡大してきているが、その分、現場看護師の身体的・肉体的負担が増加しており、労働環境の改善、事業所間の連携強化に向けた対応(訪問看護療養費などの引き上げ)が必要である」「特別養護老人ホームなどの入所者に、柔軟に訪問看護提供できる仕組みを同時改定で考えるべき」「精神疾患に対しては、当該患者はもちろん、家族全体への支援が必要となるケースが少なくなく、現在でも『制度(医療、介護、福祉)の枠を超えた訪問看護サービス』提供を現場で行っている。そうした機能に見合った診療報酬上の評価を検討してほしい」との要望が出されています。

栄養ケア・ステーションと医療機関・訪問看護ステーションとの連携強化の推進

さらに、在宅療養患者では「栄養面での指導管理」も非常に重要となります。入院患者であれば、状態に見合った食事が定期的に提供され、摂取状態も医療従事者がチェックを行いますが、在宅患者ではそうはいかず、「栄養面が不十分なために、傷病治療やリハビリの効果が思うように上がらない」といった問題もあります。

このため「管理栄養士による訪問」が注目され、【在宅患者訪問栄養食事指導料】の算定も伸びてきていますが、「そもそもの訪問回数が、他の医療従事者による訪問指導などに比べて極めて低い」のが実際です。

この点については、診療側の池端委員や支払側の松本委員が「地域の栄養ケア・ステーションに所属する栄養士と、在宅医療を提供するクリニック等が密接に連携し、十分な訪問栄養指導を行える体制」を整えていくことが必要と強調しています。すでに診療報酬上は、クリニックと栄養ケア・ステーションが連携した場合の評価(在宅患者訪問栄養食事指導料2)が設けられていますが、「クリニックとステーションとの契約や手続き等で支障がでていないか」を確認していく必要がありそうです。

眞鍋医療課長によれば、栄養ケア・ステーションは全国で110か所設置され、4000名を超える管理栄養士が所属しています。地域の在宅医療を行う医療機関や訪問看護ステーションなどとこれまで以上に密接に連携し、「多職種による総合的な在宅医療提供」が進むことに期待が集まります。

「1人当たり医療費格差」市町村国保で1.37倍、後期高齢者で1.50倍。ベッド数・在院日数の適正化が今後より強く求められるか -「医療費の地域差分析(2021年度)」厚労省-

「1人当たり医療費格差」市町村国保で1.37倍、後期高齢者で1.50倍。ベッド数・在院日数の適正化が今後より強く求められるか -「医療費の地域差分析(2021年度)」厚労省-

厚生労働省は6月30日に2021年度の「医療費の地域差分析」(電算処理分)を公表し、
2021年度の1人当たり医療費(電算処理分)を見る限り、市町村国保では最高の佐賀県と最低の茨城県との間に1.37倍の、後期高齢者医療では同じく最高の福岡県と最低の岩手県との間に1.50倍の格差がある。
このような状況を明らかにしました。

地域差の原因を探ると、医療費の高い地域では「高い頻度で、長期間入院している」ことが再確認できました。「ベッド数が過剰などために、不要な入院延伸がなされていないか」などを確認し、各地域で、医療費の地域差是正に努めることが重要と考えられます。

昨年度(2022年度)から、いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上となることから、今後、急速に医療費が増加していきます。その後、2040年度にかけて高齢者「数」は大きく変わらないものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していきます。「少なくなる一方の支え手」で「増加し続ける高齢者」を支えなければならないことから、公的医療保険制度の基盤は極めて脆くなっていきます。

こうした状況の中では、「医療費の伸びを我々国民の負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ことが必要不可欠であり、医療費適正化に向けては、「1人当たり医療費の地域格差を是正していく」ことが重要方策の1つとなります。

このためには、まず「医療費の地域差がどの程度あり、その要因はどこにあるのか」を明らかにする必要があります。ただし、医療費は「地域の人口構成に大きな影響を受け」ます。高齢者が多い地域では必然的に医療費が高くなり、人口数で除した1人当たり医療費も高くなりますが、これを「遺憾である」と考えることはできません。

そこで「1人当たり医療費の地域差」を分析するにあたっては、「地域ごとの年齢構成(高齢者割合など)の差」を補正・調整することが重要です(年齢構成を揃える形で補正する)。本稿では主に、補正・調整を行った「1人当たり年齢調整後医療費」を、市町村国保(74歳まで)と後期高齢者医療制度(75歳以上)に分けて見ていきます。なお、今回は「電算処理分」のみを集計対象としています。

まず市町村国保の「1人当たり年齢調整後医療費」を見てみると、2021年度は全国平均で38万300円。都道府県別に見ると、最高は佐賀県の46万1579円(全国平均の1.214倍)。次いで鹿児島県:45万6302円(同1.20倍)大分県:44万1912円(同1.162倍)と続きます。

逆に最も低いのは茨城県 33万5129円(全国平均の0.881倍)で、埼玉県:34万9452円(同0.919倍)愛知県:35万1001円(同0.923倍)と続きます。

最高の高知県と最低の新潟都の間には12万6450円・1.37倍の開きがあります。
医療費の地域差を、日本地図を色分けした医療費マップで見てみると、依然として「西日本で高く、東日本で低い」(西高東低)傾向が継続していることを確認できます。

「1人当たり医療費格差」市町村国保で1.37倍、後期高齢者で1.50倍。ベッド数・在院日数の適正化が今後より強く求められるか -「医療費の地域差分析(2021年度)」厚労省-

「過剰病床を埋めるための不適切な入院延伸」を解消し、入院医療費の地域差是正を
では、こうした1人当たり医療費の「地域差」はなぜ生じるのでしょう。この原因を探るには、医療費を次の3要素に分解することが有用です。

(要素1)1日当たり医療費
いわば「単価」
→単価の高低の評価は容易ではありませんが、例えば「不必要な検査をしていないか」「後発医薬品の使用は進んでいるか」などを考えるヒントになります

(要素2)1件当たり日数
一連の治療について、入院ではどれだけの日数がかかり、外来では何回(=日数)医療機関にかかるのか
→例えば、同じ疾病、同じ重症度の患者間で入院日数が大きく異なれば、「退院支援がうまく機能しているのか」などを考えるヒントになります

(要素3)受診率
どれだけの頻度で医療機関にかかるのか
→例えば「頻回受診、重複受診がないか」などを考えるヒントになります



市町村国保医療費の地域差において「入院」「入院外」「歯科」それぞれの影響度合いを見ると、「入院」の影響が大きいことが分かります。そこで入院医療を上述の3要素に分解して「地域差には、どの要素が影響しているのか」(寄与度)を見てみましょう。
入院医療費の高い地域(佐賀県、鹿児島県、大分県など)では、▼「受診率」と「1件当たり日数」が医療費を高める方向に寄与している▼「1日当たり医療費」は医療費を低くする方向に寄与している―傾向があることが分かります(従前と同じ傾向)。一方、入院医療費の小さな地域(愛知県、茨城県、埼玉県など)では、「『受診率』が医療費を低くする方向に寄与している」ことが分かります(やはり従前と同じ傾向)。
これらを総合すると、▼1人当たり医療費の高い地域では、高い頻度で入院し、かつ濃度の薄い医療を長期間受けている▼1人当たり医療費の低い地域では、入院の頻度が低く、かつ高濃度の医療を短期間受けている―ことが推定されます。

つまり医療費の地域差を解消するためには、▼不適切な入院(例えば入院の必要性がない患者を入院させる社会的入院など)が生じていないか▼不適切な在院日数の延伸(例えば病床稼働率を維持するために、退院可能な患者を退院させないなど)が生じていないか—を十分に確認する必要があります。とくに1人当たり医療費の高い地域では、この点の確認・是正が極めて重要です。

さらに、こうした「頻度の高い、期間の長い入院」の背景には「病床数」が大きく関係している点にも留意が必要です(関連記事はこちら、医療費の地域差と病床数との間には、極めて大きな相関がある)。端的に「空き病床を埋めるために、不適切に入院期間を延伸し、結果、医療費が増加してしまう」可能性が考えられるのです。さらに不適切な入院期間の延伸は「院内感染リスクの上昇」「ADL低下リスクの上昇(つまり寝たきりの誘発)」「患者のQOL低下」などの悪影響も招きます。まず「地域の医療ニーズにマッチする病床数になっているか、過剰な病床数整備がなされていないか」を地域ごとに確認し、適正な数に是正していくことが求められるでしょう。

後期高齢者、1人当たり医療費トップ福岡県、最も低い岩手県の1.50倍
次に後期高齢者医療の「1人当たり年齢調整後医療費」を見てみると、2021年度は全国平均で91万819円でした。都道府県別に見ると、最高は福岡県の109万6386円(全国平均の1.204倍)。次いで▼高知県:109万3139円(同1.20倍)▼鹿児島県:107万1324円(同1.176倍)―と続いています。

逆に最も低いのは岩手県の73万2048円(全国平均の0.804倍)で、▼新潟県:73万2787円(同0.805倍)▼青森県:76万2347円(同0.837倍)―と続きます。

最高の高知県と最低の新潟県の間には36万4338円・1.50倍の開きがあります。
後期高齢者の入院医療費について、市町村国保医療費と同様に▼1日当たり医療費▼1件当たり日数▼受診率—の3要素に分解した寄与度を見てみると、入院医療と同様に▼「1日当たり医療費」と「1件当たり日数」は、医療費の高い地域では「医療費を低くする」方向に、医療費の低い地域では「医療費を高める」方向に寄与している▼「受診率」は、医療費の高い地域では「医療費を高める」方向に、医療費の低い地域では「医療費を低くする」方向に寄与している―ことが分かります。
やはり、1人当たり医療費の高い地域では、高い頻度で入院し、かつ濃度の薄い医療を長期間受けていると推定され、「不適切な社会的入院」や「不適切な在院日数の延伸」がないかを見ていく必要があります。

高齢化がますます進行する中では、後期高齢者医療費の適正化(ここでは1人当たり医療費の地域差縮小)に努める必要性が極めて大きく、「病院の病床が介護施設代わりに使用されていないか」などをしっかりと確認し、必要な是正を行っていくことが重要であると考えられます。