令和6年度の診療報酬改定に向けて、9月27日に開催されました
中央社会保険医療協議会の総会、および診療報酬基本問題小委員会「
入院医療等の調査・評価分科会」の中間まとめ報告が行われました。入院医療・外来医療のそれぞれについて、今後の個別具体的な論議に資する技術的検討事項が改めて整理されました。
また、同日の中医協総会では「2022年度医療費の動向」を踏まえ、医療機関の経営状況をどのように見るべきか、という議論も行われています。
「高齢者の救急搬送、急性期入院医療」にどのように対応すべきかが最重要論点
中医協の下部組織「入院医療等の調査・評価分科会」で中間まとめが行われました。
例えば急性期入院医療では「高齢の救急搬送患者、急性期患者をどの病棟で受けるべきか、関連して看護必要度の評価内容をどう見直すべきか」「平均在院日数の基準を短縮すべきか」、回復期リハビリ病棟では「リハビリ・栄養・口腔管理の一体的実施をどう進めるか」、外来では「がん化学療法の外来移行をどう進めるか」などが重要検討項目として浮上しています。
9月27日の基本小委・総会には、この中間まとめが報告されました。
中医協委員からは、今後の議論に資するよう、例えば次のような「分析の深掘り」「技術的・専門的な見地からの更なる検討」を行ってほしいとの要請がの声が挙がったようです。
【外来医療について】
特定疾患療養管理料では、在宅時総合医学管理利用などと異なり「時間外加算1取得医療機関での算定多い」との傾向は見られないが、それは特定疾患療養管理料の算定要件に「時間外加算1取得」が含まれていないためで、当然のことではないか。「時間外加算1を取得していない医療機関」がかかりつけ医機能を果たしていないわけではない。特定疾患療養管理料算定病院が地域で果たしている「かかりつけ医機能」について、より多面的な分析をすべきである。
かかりつけ医機能発揮の観点から、「どのような疾患を特定疾患療養管理料の対象に含めるべきか」を検討すべきである(例えば慢性腎炎や間接リウマチ、認知症なども対象に含めるべき)
コロナ禍で慢性疾患患者の受診控えが生じ、「治療間隔の延伸」「治療中断」なども起こっている。医学管理の質を確保する観点から、「長期処方の増加度合」やそれに伴う「医療機関の負担増」なども分析すべき。
高血圧症などの慢性期疾患の管理について、生活習慣病管理料や地域包括診療料等の算定は極めて少ない。既存の「かかりつけ医機能を評価する」とされている診療報酬項目を体系的に整理しなおし、慢性疾患の管理をどの診療報酬項目で評価するかを考えていくべき。
特定疾患療養管理料でも「計画書作成・交付」などを要件化し、より効率的・効果的な疾患管理を行えるようにすべき。
オンライン診療の適切な実施に係る指針では「初診での睡眠薬処方は禁止」されているが、不眠症が上位疾患に浮上しており「不適切なオンライン診療の可能性」が示唆されている。さらなる分析を進め「健全な形でのオンライン診療の普及」を目指すべき。
【入院に係る横断的事項】
「病院に歯科があるケース」と「外部から歯科クリニックが関与するケース」との違いなどについて分析を進めるべき。
【急性期入院医療について】
総合入院体制加算から急性期充実体制加算への移行の背景には「点数差」(急性期充実>総合入院)があるのではないか。総合入院体制加算の役割を踏まえた「点数引き上げ」を検討すべき。
看護必要度A項目について2022年度に「点滴ライ同時3本以上管理」が「薬剤3種類以上管理」に見直されたが、該当割合が急増している。どういった薬剤が使用されているのかなどを詳しく見るべき。
高齢者の救急搬送・急性期入院医療をどういった病棟で主に対応するかも考慮した制度設計を考えていく必要がある。
「高齢者の救急搬送・急性期入院医療にどう対応していくか」が今後ますます重要な課題となる。その際「地域包括ケア病棟で受ければよいではないか」といった乱暴な議論をするのではなく、「2次救急病院では、まず急性期病棟で初療し、必要に応じて地域包括ケア病棟へ転棟する」「2次救急対応ができない病院の地域包括ケア病棟では、まずトリアージをきちんと行える急性期病院で初療し、必要に応じて下り搬送で受け入れる」といった丁寧な視点で検討していかなければならない。
【DPC改革について】
効率性係数・指数については「本来の趣旨に沿わないケース」があることを踏まえて「計算方法の見直し」などを検討すべきだが、複雑性係数・指数については「計算方法の見直し」ではなく、データ数の少ない病院などはDPCからの退出を促すルールを検討すべき。
【回復期入院医療について】
高齢者の救急搬送・急性期入院医療について、「下り搬送を行い地域包括ケア病棟で受ける」ことが現実的であろう。ただし、「地域包括ケア病棟に直接入棟する患者」と「急性期病棟を経て地域包括ケア病棟に入棟する患者」都では、医療資源投入量等が大きく異なり、両者を同様に扱うことには疑問がある。そうした点を専門的視点で整理してほしい。
回復期リハビリ病棟における「FIM測定の適正化、第3者評価」に関連して、「入棟中のFIMの定期的な評価」を導入する方向で検討を進めてほしい。
【慢性期入院医療について】
療養病棟における医療区分の精緻化・細分化の方向には賛同できる。介護施設等との役割分担も踏まえ、どういった患者をどういった医療機関で受け入れることが適切かの検討を進めてほしい。
こうした意見を踏まえて、入院・外来医療分科会で改めて「深掘りの分析・議論」を行うと同時に、中医協総会で今後本格化する個別具体的な論議も進められていくでしょう。