2025 年 4 月 22 日公開
新年度のベースアップ評価料算定にむけた3ステップが明らかに
前回のコラムでも取り上げたベースアップ評価料に関して、厚生労働省から新たな通知がありました。具体的には、「ベースアップ評価料届出後の流れ」についての詳細が明らかになりました。本コラムでは、その概要についてご紹介します。
(以前のコラム:https://iryo-soken.co.jp/blog/article.html?page=141)
これまでベースアップ評価料を算定した医療機関には、「賃金改善計画書」および「賃金改善実績報告書」の作成と提出が求められていましたが、その具体的な手続きについては示されていませんでした。今回の通知では届出後に必要な手続きの流れと合わせて、「賃金改善計画書」と賃金改善実施報告書の詳細についても示されました。
ベースアップ評価料届出後の流れを大まかに見ると3つのSTEPが必要とされています。
<STEP1:令和6年度分評価料と賃金増加分の差額を確認>
まずは「賃金改善計画書」と「賃金改善実績報告書」の作成(STEP2および3)
に向けて、以下の①~③を確認します。
① 「令和6年度分ベースアップ評価料収入の集計
(ベースアップ評価料の算定を開始してから令和7年3月まで)」
② 「(対象職員の)賃金改善措置による賃金増加分の計算」
③ ①「ベースアップ評価料収入」と②「賃金改善措置による賃金増加分」
の差額を計算
計算した差額を参考に必要に応じて、令和7年度の賃金改善計画における対象職員へのベア等の金額を見直すことができます。また、「ベースアップ評価料収入分」に余りが出ている場合には、余り分は令和7年度に繰り越して、令和7年度の賃金改善分に用います。令和7年度の賃金改善計画において、 繰り越し分+令和7年度の「ベースアップ評価料算定金額見込み」により、ベア等の金額(対象職員の基本給等にかかる1か月の賃金改善見込み額)を再度調整します。
<STEP2:賃金改善計画書の作成と提出>
令和7年6月30日までに令和7年度分の「賃金改善計画書」を作成し厚生局に提出する必要があります。外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみを届出する場合にはベースアップ評価料Ⅰ専用届出様式のファイルを選択し、上記以外の場合は従来版のベースアップ評価料届出様式のファイルを選択します。ファイルを選択後は記載が必要とされているシートを使用して賃金改善計画書を作成します(図表1)。
図表1:令和7年度分「賃金改善計画書」の作成・提出 ②従来版様式
(出所:厚生労働省 令和7年度分「賃金改善計画書」の作成・提出 ②従来版様式https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001467693.pdfのP8より)
また、提出する際は、区分変更がなければ賃金改善計画書のシートのみの提出で可能となっています。
<STEP3:賃金改善実績報告書の作成と提出>
前年度にベースアップ評価料を届け出ている医療機関等は8月31日までに地方厚生(支)局へ「賃金改善実績報告書」の作成・提出が求められています。
報告書の内容に関しては、記載が必要とされているシートへ賃金改善実施期間やベースアップ評価料算定期間、前年度のベースアップ評価料による収入実績等を必要とされている項目を入力し、作成します。
以上のSTEP1~3までを表にまとめたものが下記となりますので再度、チェックしておきましょう(図表2)。
図表2:ベースアップ評価料届出後の流れ(令和6年6月から令和7年2月までにベースアップ評価料の届出を行った場合)
(出所:厚生労働省 事務連絡(令和7年3月31日)/ベースアップ評価料による賃金改善の実績報告に係る届出様式の改定等についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001467693.pdfのP2より)
また、「賃金改善計画書」と「賃金改善実績報告書」を作成するうえで「給与総額」と「基本給等総額」の違いについて疑義解釈に記載があったので見てみましょう。
【疑義解釈 問7】
ベースアップ評価料の届出様式における
「給与総額」と「基本給等総額」の定義如何。
「給与総額」とは基本給のほか、各種手当や賞与等、法定福利費の事業主負担分を含む金額であり、「基本給等総額」とは「給与総額」のうち、基本給及び決まって毎月支払われる手当を指す。
(出所:厚生労働省 事務連絡 令和7年度3月31日/ベースアップ評価料による賃金改善の実績報告に係る届出様式の改定等について「疑義解釈」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001469798.pdf の別添8 P5)
具体例として、「基本給等総額」の含めるものとしては、基本給、住居手当、調整手当、家族手当、役職手当 通勤手当、資格手当等の決まって毎月支払われる手当とされています。また、役員報酬は基本給等総額に含まれないので注意が必要です。
最後に、ベースアップ評価料は、医療業界が直面する人材不足という深刻な課題に対する、重要な診療報酬のひとつです。以前のコラムでも触れましたが、この制度を活用してエッセンシャルワーカーの賃金改善を図ることは、職員の安定的な確保とモチベーションの向上につながります。その結果として、現場の働きやすさが向上し、最終的にはより質の高い医療を患者に提供することが可能になります。制度を「評価料」として終わらせず、実効性のある運用につなげていくことが、今後ますます求められていくでしょう。
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2025年1月 医療総研株式会社 代表 伊 藤 哲 雄