次期トリプル改定に向けて意見交換会での議論がはじまる
■2024年は今後を見据えた医療・介護提供体制の構築に向けての重要な年
次回の2024年度の診療報酬改定は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬が同時に改定される、いわゆるトリプル改定が行われます。さらに2024年度は、
● 2025年に向けて地域医療構想を推進するとともに、医療介護総合確保促進会議による「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」がとりまとめられる
● 新興感染症対応を含め第8次医療計画が2024年度から始まる
● 2024年度から医師の働き方改革が実施される
● 医療DXの取組みが進んでいる
● 革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市や医薬品の安定的な供給を図る観点から、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で、薬価制度などの議論が行われている
● プログラム医療機器(SaMD)の検討が求められている
など、多岐にわたる事項が控えています。このように2024年は、2040年を見据えた医療・介護提供体制の構築に向けて、インパクトの大きい重要な年になることが想定されています。
トリプル改定に向けては、各報酬がより有機的に連携したものとなるように設計される必要があります。そのために、2018年度同時改定時と同様に、それぞれが具体的な検討に入る前に、同時改定に関する議論を行えるよう、関係する委員等が参加する意見交換会が設定されました。
■9つのテーマで意見交換会が開催される
意見交換会のテーマとしては、①地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携、②リハビリテーション・口腔・栄養、③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療、④高齢者施設・障害者施設等における医療、⑤認知症、⑥人生の最終段階における医療・介護、⑦訪問看護、⑧薬剤管理、⑨その他-の9つが設定されました。
2023年3月15日の意見交換会では上記①②③を、2回目の4月は同様に④⑤を、3回目の5月で⑥⑦を検討し、⑧については各テーマ内で議論する予定となっています。
■要介護者等の高齢者の入院は地域包括ケア病棟での受入れを促進か
3月15日の意見交換会では、前述のとおり①地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携、②リハビリテーション・口腔・栄養、③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療の3つのテーマについて議論されました。
たとえば③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療では、「高齢者にとって一般的な 疾患である誤嚥性肺炎や尿路感染症等に対する入院医療を急性期一般病棟が担っている実態があり、このような医療機関が提供しうる医療の内容と、要介護者等の高齢者が求める医療の内容に乖離がある可能性がある」という意見が挙がっています。具体的には、要介護高齢者等に求める医療内容には、治療に加えて介護・リハビリ提供も必要となりますが、急性期病棟ではそれらの提供が十分でないことが指摘されています。
一方で地域包括ケア病棟における介護施設・福祉施設からの入院患者の受入は急性期一般病棟と比べると少ない実態があります。リハビリテーション専門職等の多職種が一定程度配置されており、また入退院支援部門の設置が要件化されている地域包括ケア病棟や医師が配置されている介護保険施設等が要介護者等の高齢者の急変対応を担うことを推進する必要があるとの意見が挙がっています。
前回の診療報酬改定においても、地域包括ケア病棟の3つの機能をバランスよく提供することが求められましたが、次回の改定においても同様にサブアキュート機能の強化が強調される可能性がありそうです。
このように意見交換会では、次回の改定に向けたさまざまな要素が検討されています。今後の議論の動向にも注視が必要といえるでしょう。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。