コラム
COLUMN

コロナ5類移行後の医療提供体制等について、厚労省よりQ&Aにて内容が示される

5月8日以降、コロナ感染症は5類に移行し「幅広い医療機関で対応」を

厚生労働省は3月29日に、事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」を示しました。

新型コロナウイルス感染症が5月8日に5類感染症に移行することとなり、
「幅広い医療機関での対応」などが段階的に進められていくなかで「高齢者などのハイリスク者対応」が極めて重要となる。
このため、高齢者施設等と医療機関との連携が強く求められ、1医療機関ですべてに対応することまでは求められず、別々の医療機関がそれぞれの機能に応じて連携し、全体として満たすことが求められる。
また、コロナ患者未対応の病院にも「コロナ患者の入院受け入れ」が求められるが、まずは「自院の受診患者・入院患者についてコロナ陽性が判明した後も、引き続き自院で入院対応を行う」ことから始めてもらう。
このような考えを明らかにしました。
(厚労省 (事務連絡本文)と(Q&A))

政府は「現下のオミクロン株の毒性などに鑑みて、私権制限に見合う生命・健康への重大な影響はない」と判断し「5月8日から5類感染症に移行する」ことを決定。
また3月10日には「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等」を決定し、段階的な医療提供体制の見直しなどを進める方針を固めました。
そして今般、厚労省は、「幅広い医療機関での対応、病床確保料の半減、公費負担の一部終了など」を事務連絡で解説するとともに、今般、医療現場の数々の疑問に答えるQ&Aを示しました。

【入院医療】
現在「重点医療機関」を中心にコロナ感染患者の入院受け入れを行っていますが、5月8日の5類移行以降は「病院の機能に応じて、すべての病院で対応する」ことが求められ、
具体的には、
・重点医療機関等は重症患者対応を行う
・「自院で発生したコロナ患者を継続入院させている」病院では、外部のコロナ患者を受け入れる
・コロナ未対応病院でもコロナ患者受け入れを行う
こととされました。

この点について今般のQ&Aでは次のような考え方が示されています。

〇「重点医療機関等以外でコロナ入院患者の受け入れ経験がある医療機関」 に対する「積極的な外部のコロナ患者受け入れ推進」について、
「あらかじめ書面で確認を行う」ことまでは求めないが、自治体から丁寧に説明してほしい※今後、厚労省で啓発用の資材などが提示される
〇地域包括ケア病棟・地域一般病棟(旧13対1・15対1)では、「高齢者施設等からのコロナ患者受け入れ」などを念頭に置き、各都道府県で病床確保の見込み数などを設定してほしい
〇「コロナ入院患者の受け入れ経験がない医療機関」への受け入れ促進については、例えば「コロナ以外の疾患が原因で受診・入院している患者がコロナ陽性と判明した場合、当該受診の原因となった当該疾患の治療を継続する観点からも、引き続き当該病院で可能な限り継続して治療を続けることを徹底する」などの取り組みから始めてほしい
〇国は「病棟全体のゾーニングは基本的に必要なくなる」が、すでにゾーニング等により「既存の1病棟を2病棟に分けて対応する」こと、専任の看護体制については、例えば、夜勤帯など特に人材の確保が困難な場合には「感染対策を徹底した上で、病棟間の支援」など柔軟な対応をすること。なお、重点医療機関については「病棟単位(看護体制の1単位)でコロナ患者専用病床(酸素投与・呼吸モニタリングが可能な病床)の確保」を要件としていることから、5月8日以降の病床確保料の補助上限額も「その他医療機関」と比べて高く設定している

【外来医療】
また、外来に関しては
・都道府県は対応医療機関数の維持、拡大を促す
・都道府県は地域医師会等と連携し「かかりつけ患者への対応」に限定している医療機関へ、「患者を限定しない」よう促す
・新たに対応する医療機関における感染対策設備整備・個人防護具確保について必要な支援を行う
・国は都道府県を通じて医療機関数拡大などの進捗管理を行う
などの方針が打ち出されています。

今般のQ&Aでは、次のような点が確認されました。

〇外来対応医療機関の公表や公表内容については、これまでの「診療・検査医療機関」と同じ仕組みとすることを想定。「診療・ 検査医療機関の一律公表」と同様に、「患者の選択」に資するよう適切に対応してほしい
〇「かかりつけの患者に限定しているか否か」は、これまでの診療・検査医療機関における対応と同様に対応してほしい
〇小児科医療機関が「大人の診療を行わない」ことは、「患者を限定している」ことにはならない

【入院調整】
外来対応医療機関で「患者の症状が重い」「これから症状が重くなる可能性が高い」などで「入院が必要」と判断した場合には、当該医療機関自らが「入院先を探し、入院調整を行う」ことになります。
これまで都道府県等が行ってきた入院調整機能を、現場医療機関に委ねるものですが、混乱を避け、円滑な医療提供を可能とするために、例えば「まず軽症等の患者について医療機関が入院調整を行う」➡「秋以降、重症者等についても医療機関が入院調整を行う」などの段階対応が考えられます。

この入院調整については、次のような考え方が示されています。

〇入院調整にあたっては、5類移行後、受診医療機関だけでなく、国・都道府県・保健所等でも患者情報を共有することについて「医療機関で『患者の同意』を取得する」ことが求められる」と示されているが、この同意取得は「入院調整のために必要となる情報を国や都道府県等の行政機関に共有する旨を説明し、口頭で同意を取得し、その日付とともに診療録に明記する」形とすることを予定している

【高齢者施設等対応】
5類移行後にも、コロナウイルスについて「感染力が弱まる」「毒性が弱まる」わけではないことから、「高齢者などのハイリスク患者」への対応を充実することが引き続き極めて重要となります(若人などの活動が活発化するため、その重要性は増していくとも考えられる)。
このため、例えば、
・地域包括ケア病棟などでの高齢コロナ患者受け入れを促進する
・高齢者施設等における集中的検査を継続実施する
・高齢者施設等と医療機関との連携を強化する
・施設内療養を行う高齢者施設等への補助について、医療機関との連携を条件に継続する
などの方針が打ち出されています。

今般の事務連絡では、この点に関連して次のような考え方が明示されました。

〇施設内療養を行う高齢者施設等への補助要件として「医療機関との連携」が求められているが、嘱託医が、施設からの電話等による相談への対応、施設への往診(オンライン診療含む)、入院の要否の判断や入院調整(当該医療機関以外への入院調整も含む)を行っていれば、「当該嘱託医と連携している」と見做してよい。
〇連携医療機関には、施設からの電話等による相談への対応、施設への往診(オンライン診療含む)、入院の要否の判断や入院調整(当該医療機関以外への入院調整も含む)の3要件が求められているが、必ずしも「1つの医療機関ですべてを満たさなければならない」わけではなく、「別々の医療機関と連携して、3要件を全てが満たす」ことでもよい。
〇医療機関と高齢者施設等の連携に関し、「地域における新型コロナの流行により、当該医療機関が対応できない場合」には、自治体が他医療機関との連携調整を行うことになる。この「地域における新型コロナの流行により、当該医療機関が対応できない場合」とは、 「地域における感染拡大により、当該医療機関の医療提供体制が逼迫している」場合などが想定される

【医療費負担】
5類移行後には、
・コロナ治療薬の薬剤費は公費負担を継続する
・入院医療費について高額療養費の上限を2万円減額する(より低い患者負担で済むようにする)
という経過措置をおいたうえで「医療費の公費負担・補填を終了する」ことになります。

この点、今般の事務連絡では次のような考え方が明らかにされました。

〇外来、入院ともに「コロナ治療薬の薬剤費」については、保険適用後に残る自己負担額(年齢、所得に応じた1-3割負担部分)について全額が公費支援の対象となる。
〇コロナ治療薬の薬剤費についても、外来、入院ともに「高額療養費の適用対象」となる。
〇したがって、保険請求(レセプト請求)の方法が従来から変わるものではない。

今後も、医療現場等の疑問に答える形でQ&Aが更新されていくと考えられ、注視していくことが必要になってくるでしょう。