厚生労働省が4月14日に公表した2023年1月分の病院報告によると、
2023年1月末と新型コロナウイルス感染症流行前の2020年1月末とで病院の患者数を比較すると、入院では9.3%減、外来では7.4%減となっていました。
また、一般病床の稼働率についても、空床確保、一部病床の休止等のコロナ患者受け入れのための対応により、依然として低い水準で推移していることがわかりました。
2023年1月末における「1日平均患者数」は、
病院全体で、入院は110万9785人、外来は115万6374人となりました。
前年同期(2022年1月末)と比べると、入院では3.8%の減少、外来では0.9%の減少となりました。
また、コロナ感染症第1波の中にあった 2021年1月末と比べると、入院では3.9%の減少、外来では5.5%の増加となりました。
さらに、コロナ感染症の影響がない2020年1月末と比較してみると、入院では9.3%減、外来では7.4%減となっています。
外来患者数は「コロナ感染の動向」に左右されていることが伺えます。コロナ禍前に比べて、軽微な症状での医療機関受診が減少している(受療行動が変化している)可能性があり、今後の動向においても注視すべきでしょう。
また、入院については、「コロナ重症患者等を即時受け入れられるよう病床の確保」、「コロナ重症患者に対応するための、一部病棟・病床閉鎖(コロナ病床に医療専門職を集約化する)」などが現場では続いていることが、「患者数が戻らない」ことの背景にあると考えられます。
入院については、当面「患者減」傾向が継続すると考えられます。もっとも、5月8日の5類移行後には「すべての病院でコロナ入院患者を受け入れる」方針が示されておりので今後も状況が変化していくものと伺えます。
病床種別に入院患者数と前年同月からの変化を見てみると次のような状況が明らかになりました。
・一般病床:60万4236人
(前年同月比4.6%減、2021年1月比3.5%減、2020年1月比11.0%減)
・療養病床:22万7386人
(前年同月比6.5%減、2021年1月比8.1%減、2020年1月比14.1%減)
・精神病床:25万8509人
(前年同月比3.7%減、2021年1月比4.7%減、2020年1月比7.1%減)
・結核病床:1025人
(前年同月比8.6%減、2021年1月比14.8%減、2020年1月比23.3%減)
〇病院の平均在院日数については、「短縮」と「延伸」を繰り返す混乱が依然続いているようです。
病院全体の平均在院日数では29.1日となり、前月比で2.6日延伸してしまいました。
病床種別に見ると、
・一般病床:17.5日(前月から1.6日延伸)
・療養病床:122.6日(同8.6日延伸)
・精神病床:300.5日(同26.0日延伸)
・結核病床:47.3日(同6.6日延伸)
・感染症病床:13.8日(同1.3日延伸)
となりました。依然としてコロナ感染症の影響で「ある月に短縮すれば、翌月に延伸し、さらにその翌月には再び短縮する」などの状況が繰り返されており、医療現場の混乱が続いていることが伺えます。
〇一般病床の利用率は、コロナ感染症の影響で2023年1月末は71.1%と低い水準のままとなっています。
月末病床利用率を見ると、病院全体では76.0%で、前年同期(2022年1月末)と比べて1.1ポイント低下、コロナ感染症が本格化していた2021年1月末と比べて0.8ポイント上昇、さらにコロナ禍前の2020年1月末と比べて4.9ポイント低下となりました。
急性期・高度急性期病床では、「コロナ感染患者受け入れのために空床を確保しておく」「コロナ感染症対応のために、一部病棟・病室を閉鎖し医療資源を集約化する」ことなどが必要なことも要因となり、病床利用率が下がっていると考えられます。これらの数字からも「コロナ感染症流行前の状況には未だ戻っていない」ことを改めて確認できます。
病床種別に見ると、
・一般病床:71.1%
(前年同月比0.1ポイント低下、2021年1月比4.1ポイント低下、2020年1月比6.5ポイント低下)
・療養病床:82.8%
(前年同月比3.1ポイント低下、2021年1月比2.4ポイント低下、2020年1月比4.3ポイント低下)
・精神病床:80.5%
(前年同月比2.1ポイント低下、2021年1月比2.6ポイント低下、2020年1月比4.6ポイント低下)
・結核病床:25.5%
(前年同月比3.6ポイント低下、2021年1月比2.2ポイント低下、2020年1月比6.4ポイント低下)
・感染症病床:683.2%
(前年同月比54.0ポイント低下、2021年1月比204.9ポイント低下)
上述のように、一般病床(とくに急性期病床)の一部については「コロナ感染症の重症患者が発生した場合に、すぐさま受け入れられる」ように事実上の空床にしておく(即応病床)ことも求められており、病床利用率は低い水準で推移していることが伺えます。