かかりつけ医機能等の在り方について

中央社会保険医療協議会(以下、中医協)は、
7月24日に総会を開き、2020年度の診療報酬改定に
向けた「第1ラウンド」の議論を取りまとめました。


中医協は今秋から、外来・入院・在宅・歯科・
調剤といった個別テーマごとの「第2ラウンド」
の議論に入ります。


第1ラウンドでは、

①患者の疾病構造や受療行動等を意識しつつ、
 年代別の課題の整理

②昨今の医療と関連性の高いテーマについての
 課題の整理

の2つの観点から議論が行われました。


②の観点については、
さらに8つのテーマに分けて議論されています。


そのの1つである
「患者・国民に身近な医療のあり方について」
の中で、『かかりつけ医機能等の在り方』が
議論されています。


今回はその『かかりつけ医機能等の在り方』
について取り上げたいと思います。


■そもそも「かかりつけ医」とは


日本医師会では、

「健康に関することを何でも相談でき、
必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる
身近にいて頼りになる医師のこと」

を「かかりつけ医」と定義しています。


昨今の診療報酬改定では、
「地域包括診療料・加算」など間口を広く
総合的に診療できる「かかりつけ医」に対して
診療報酬上、高く評価する流れが続いています。


にもかかわらず、
「地域包括診療料・加算」などを
算定している医療機関数は伸びておらず、
「かかりつけ医機能」の浸透度合いは
まだまだという印象です。


そもそも、かかりつけ医機能というのは
なぜ注目されているのでしょうか?


■医療機関の機能分化促進


その背景には、
医療機関の機能分化が挙げられます。


少子高齢化に伴い増加する医療需要に、
限りある医療資源で対応するため
国は医療機能の分化を推進しています。


大枠としては、
大病院は専門性・緊急性の高い医療を、
中小病院やクリニックは一般的・総合的な
医療をそれぞれ提供していくことが
求められています。


それを受けて、紹介状なしの大病院受診時の
定額負担などが開始されました。


選定療養の徴収が可能となっている200床から
399床の地域医療支援病院については、
既に90%強が選定療養の徴収を行っています。


今回の議論では、患者に特別な事情がない限り、
まずはかかりつけ医に行くという意識を持って
もらうために、定額負担の対象病院をさらに
拡大することについて検討する必要があるとの
意見もあがっており、次回の改定でその対象は
拡大すると推測されます。


■クリニックでも強化されるべき連携機能


かかりつけ医機能については、
主に中小病院やクリニックに
求められています。


かかりつけ医機能を果たすためには
患者の健康状態を総合的に判断し
専門の医療機関へ繋がなけれなりませんので
地域の医療機関との連携が欠かせません。


近年、病院においては当たり前となった
連携ですが、今後はクリニックでも
欠かせないものとなってくると想定されます。


また「患者を増やす」という観点からも
病院との連携は大切です。


ある程度の規模の病院では、
外来は地域のクリニックに紹介したい
というのが実情です。


とはいっても、
大切な患者さんを預けるわけですので
見ず知らずの先生に紹介するという訳には
いかないものです。


当社の支援先の病院でも、紹介先が
どんな先生か、専門は何なのかなど、
分からない状態では紹介したくても
紹介しづらいとの声もあります。


医師同士の顔が見える連携が
必要となってきます。


かかりつけ医機能を果たすためには
これまで以上に地域の病院や専門医との
連携を強化していく必要がある
といえるでしょう。



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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。