診療報酬改定、先取した対策を

オリンピック・パラリンピックイヤーである
2020年がついにスタートしました。


医療業界でも次回診療報酬改定に向けて
年明けから具体的な点数設計の議論に
入っていきます。


当社がクライアントである病院に
お伺いする中で、特に現場の皆さんが
気になっていることが地域包括ケア病棟の動向です。


次回改定での地域包括ケア病棟の
要件の見直し方向が固まりつつあります。


■自院の一般病棟からの転棟割合に制限


皆さんご存知のとおり
地域包括ケア病棟には次の3つの役割・機能が
期待されています。


①急性期病床からの患者受入れ(ポスト・アキュート)
②在宅等の患者の緊急時の受入れ(サブ・アキュート)
③在宅復帰への支援


しかし実際はどうかというと
「平成30年度入院医療等の調査」によると、
①のポスト・アキュート、
特に自院の一般病床からの転棟による
患者受入れの割合が多く、
上記の3つの機能をバランスよく
果たしているとはいえません。


特に400床以上の病院では
自院の一般病床からの転棟が
60%を超える状況になっています。


この状況を踏まえ次回の改定では、

『許可病床数200床以上病院の
地域包括ケア病棟において、
「自院の一般病棟からの転棟割合」
に制限(上限値)を定める』

といったことや、

『許可病床数400床以上病院の
地域包括ケア病棟の新設について、
現行の「1病棟」のみ制限を継続、
新たな設置について地域医療構想
調整会議の意見を求めることとする』

といった見直しが検討されています。


■早め早めの対策を


このような見直しの議論を受けて
当社のクライアントの中には
地域からの受入れ、サブ・アキュート機能を
強化すべく既に動き出しています。


まずは地域の開業医からの受入れを
促進するために、昨年度末の挨拶訪問で
当院の地域包括ケア病棟で受け入れられる
患者層や担当医などを再度PR。


さらには、
地域の開業医を当院に招く地域交流会の
開催準備など、改定前から着々と
動き出しています。


その他、効果が出やすいと思われる
地域のケアマネや介護事業所をピックアップし
順次それらの施設へ訪問する準備も
しています。


少子高齢化や人口減少の中、
病院の経営はますます厳しさを増しています。


そんな中で
地域の中で1歩でも前に出るためには
医療制度改革の流れを把握し
先取して対策をうつことは大切です。


診療報酬改定の議論や内容を把握する
だけでなく、それを受け、
自院ではどのようなアクション(対策)を
すべきか考え、実行する力が
今後さらに必要といえるでしょう。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。