2020年診療報酬改定も徐々に全容が
見え始めてきました。
医療機関の中には、早めの対策をということで
すでに対応の準備をしている施設もあるかと
思います。
改定などの変化に迅速に対応するためにも
組織力を高めていくことは大切です。
今日はそんな組織づくりをテーマにして
書いてみたいと思います。
■経営のトレンドは、「戦略論」から「組織論」へ
現代社会は、「VUCA(ブーカ)時代」と呼ばれています。
VUCAとは、
「あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、
将来の予測が困難な状態」を指す言葉です。
特に人口減少や少子高齢化による働き手不足など
といった「人」の問題は、社会に大きな影響を
及ぼすことが予測されています。
特に、医療業界は「人」がいないと成立しない
業態ということもあり、「人」の問題は深刻です。
医療機関の経営を維持・継続するためにも
組織づくりに力を入れていている施設は
多くなっています。
ただ組織づくりと言っても
何から始めたらよいか、何が最適な手法なのか
わからないのが正直なところかと思います。
そこで今回は、
チェスターバーナードが提唱している
組織の3要素をベースに、組織について
一緒に考えていけたらと思います。
バーナードの定義では、
①共通目的
②貢献意欲
③意思疎通
の3つの要素がバランスよく存在すれば
組織はうまく機能するとしています。
では1つずつ見ていきます。
■共通目的の必要性
何事にも目的は大切です。
医療機関の存在意義になります。
経営理念などに近いものといっても
いいかもしれません。
どの病院やクリニックも理念は
あることが多いです。
ただそれを職員と
どれだけ共有できているかというと
どうでしょうか?
そこまで徹底している医療機関は
少ないのではないでしょうか。
ただそこまで徹底しなくても
医療機関の場合は問題ないケースも
往々にしてあります。
それは医療従事者の方々は
「患者のため」という
大前提があるからです。
その大前提があるために、
理念や目的が曖昧でも
組織はなんとなく機能します。
そのため医療機関ならば
理念や目的も大切ですが、それよりも
ビジョン(=将来のありたい姿)の
共有の方が必要という風に感じます。
そのビジョンにどれだけ職員が
共感してくれるかが、組織づくりには
大切だと感じます。
■貢献意欲を引き出すためには
貢献意欲とは、個人の努力を
組織が持っている共通の目的の
達成に寄与させようとする意欲の事です。
医療従事者の方は、患者さんに対する
貢献意欲は高いですよね。
ただそれが強すぎて、部分最適化し過ぎて
組織の共通目的の達成の弊害になることが
往々にしてありますので、バランスが大切です。
また職員の貢献意欲を高めるためには
「誘因≧貢献」が成立していることが
重要といわれています。
誘因とは、給与や評価、職場環境といった
組織から得られる価値になります。
給与や賞与などが1番わかりやすいですよね。
ただ金銭的や物質的だけに限らず、
心理的や社会的な側面も
魅力的な誘因になり得ます。
社会性の高いビジョンを掲げ
職員と共有したり、
職員の業務の過程をしっかり
把握してフィードバックしてあげる
など「誘因≧貢献」の状態を保つことが大切です。
■コミュニケーションが要
どんなに共通目的をかかげ
貢献意欲をもった職員が集まったとしても
お互いがバラバラの行動をしていたら
組織としては成立しません。
バラバラに分散しているものを統合し、
「有機的」に組織を動かし、共通目的と
貢献意欲をつなぎ合わせるために
必要となるのが「コミュニケーション」になります。
コミュニケーションが取れていない組織では
そもそも共通目的も機能しないですし
貢献意欲も長続きしません。
またコミュニケーションも
ただ取ればいいわけでなく
その質も重要になります。
■組織の3要素から見直す
組織を見直すうえで、
何から手を付けたらいいか分からない
といったことがあると思います。
そんな時、
バーナードの組織の3要素は
シンプルですし、1つの視点としては
有効ですので、ぜひ活用することを
おすすめします。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。