2020.04.17

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う診療報酬上の臨時的な取扱いの整理

新型コロナウイルス感染は衰えることなく拡大しており、安倍晋三内閣総理大臣は4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言を行いました。さまざまな対策が打ち出されていますが、診療報酬においても最前線で業務にあたっている医療機関を支援するための臨時的な特例が示されています。今回はその内容について整理していきたいと思います。


■診療報酬上の臨時的な取扱い項目と主な内容


(1)入院が医療法上の許可病床数を超過する場合
新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより、医療法上の許可病床を超過する場合には、通常適用される診療報酬の減額措置を行わないこととされています。

(2)施設基準等を満たすことができなくなる場合
新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより、入院患者が一時的に急増等した場合や、学校等の臨時休学に伴い、看護師が自宅での子育て等を理由として勤務することが困難になった場合等においては、当面、月平均夜勤時間数については、1割以上の一時的な変動があった場合においても、変更の届出は不要とされています。

また看護配置の変動やDPC対象病院の要件等も同様で、要件を満たさなくなった場合でも当面の間は変更の届出は不要で、これまで通りの診療報酬が算定できることとされています。

さらに新型コロナウイルス感染症患者を受け入れたこと等により、平均在院日数、重症度、医療・看護必要度、在宅復帰率、医療区分2又は3の患者割合等の要件を満たさなくなった場合については、当面の間は、直ちに施設基準の変更の届出は不要としています。

(3)本来の病棟でない病棟等に入院した場合
原則として、当該患者が実際に入院した病棟の入院基本料等を算定することとしています。ただし会議室等病棟以外の場所に入院させた場合には、必要とされる診療が行われている場合に限り、当該医療機関が届出を行っている入院基本料のうち、当該患者が本来入院すべき病棟の入院基本料を算定できるとしています。

また新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れたことにより、特定入院料の届出を行っている病棟に診療報酬上の要件を満たさない状態の患者が入院(例えば回復リハビリテーション病棟に当該病棟対象でない患者が入院)した場合には、当面の間、当該患者を除いて施設基準の要件を満たすか否かで判断することとしています。

(4)要件の研修等が受けられなかった場合
定期的な研修や医療機関の評価を要件としている項目の一部については、研修や評価を実施できるようになるまでの間、実施を延期することができるとしています。例えば、地域包括診療料の施設基準に規定する慢性疾患の指導に係る適切な研修は、2年毎に届出が必要となっていますが、新型コロナウイルスの影響で研修が受けられなかった場合や中止になった場合などには、届出を辞退する必要はなく算定が継続できることとしています。ただし、研修が受けられるようになった場合には、速やかに研修を受講し、遅滞なく届出を行うこととしています。

(5)電話や情報通信機器を用いた診療等について
今回の診療報酬上の臨時的な取扱いの中で、最も議論として挙げられているのが、電話や情報通信機器を用いた診療等に関してではないでしょうか。

2月28日の事務連絡で、慢性疾患等を有する定期受診患者等について、電話や情報通信機器を用いて診療し医薬品の処方を行い、ファクシミリ等で処方箋情報が送付される場合、電話等再診料等を算定できることとしました。これについては、外来診療料も同様の取扱いになります。

そして、3月19日には情報通信機器等を用いた診療の幅を臨時特例的に拡大する観点から、事前の診療計画記載がなくとも、慢性疾患患者における「予測される症状変化に対応する医薬品」の処方についても再診で可能とされました。同時に、新型コロナウイルス感染の軽症者等が宿泊施設や自宅での療養となった場合には、電話や情報通信機器で経過観察を行い、必要な医薬品等を処方することも可能としました。

さらに4月に入り、新型コロナウイルス感染を恐れて国民が医療機関への受診が困難になっている状況を鑑みて、一度も診察したことのない患者への電話等での初診に対しても、臨時特例的な措置として限定的ではありますが、電話や情報通信機器を用いた診療を認めることを明確化しました。その場合の初診料は、「対面による初診料(288点)」に比べると低くいですが、初診料の注2に規定する214点となっています。

これに関連した内容として、オンライン診療料の施設基準である「1割上限」規定(1か月当たりの再診料等(電話等再診は除く)・オンライン診療料の算定回数に占めるオンライン診療料の割合が1割以下)を、新型コロナウイルス感染が拡大している間に限り適用しないことが示されました。オンライン診療料に関しては、当事項以外に見直しはされていないのが現状です。
オンライン診療料では、対面診療とオンライン診療の組み合わせが求められますが、このうちの対面診療については、今回の臨時的な取扱いにより「電話・情報通信機器等を用いた診療」に読み替えることができるようになっています。

(6)外来における対応について
新型コロナウイルス感染症患者(感染疑い患者を含む)の外来診療を行った場合には、受診の時間帯によらず、院内トリアージ実施料(1回300点)を算定できることができます(再診の場合も可)。なお、その際は院内感染防止等に留意した対応を行うことが必要です。

また、新型コロナウイルス感染症患者に対してのみ院内トリアージ実施料を算定する医療機関では、施設基準に関する届出は不要としています。

(7)入院における対応について
新型コロナウイルス感染患者を入院させた場合、当該患者が重症でなくとも「緊急に入院を必要とする重症患者として入院した患者」とみなして、救急医療管理加算1(950点/日)の算定を最長14日間認められます。さらに感染予防策を十分に講じている場合には、第二種感染症指定医療機関の指定の有無に関わらず、二類感染症患者入院診療加算(250点/日)の算定可能としています。

また感染症病棟や一般病棟のみで新型コロナ感染患者を受け入れることが困難な場合を想定し、地域包括ケア病棟入院料を算定する病棟または療養病棟入院基本料を算定する病棟に新型コロナウイルス感染患者を受け入れる場合には、それぞれ「在宅患者支援病床初期加算」(300点/日)または「在宅患者支援療養病床初期加算」(350点/日)の算定が臨時的に認められています。

(8)緊急に開設する保険医療機関の基本診療料の取扱いについて
新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れるために、緊急に開設する必要がある医療機関について、新たに基本診療料の届出を行う場合においては、要件審査を終えた月の診療分についても当該基本診療料を算定できるとしています。

(9)DPC/PDPS における取扱い
令和2年3月31 日までの期間において、医療資源を最も投入した病名が新型コロナウイルス感染症であった症例については、包括評価の対象外としています。


これらのように、新型コロナウイルス感染拡大の最前線で業務にあたって頂いている医療機関を支援するため、臨時的な特例として、さまざまな診療報酬上の対応が打ち出されています。これらは、厚生労働省のホームページ「自治体・医療機関向けの情報一覧(新型コロナウイルス感染症)」で確認することができ、これまでの対応や事務連絡などがまとめて掲載されています。診療報酬に関していえば、その中の「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて」という資料を追っていくと、これまでの診療報酬上の特例対応を把握することができます。

診療報酬以外でも「サージカルマスク、長袖ガウン、ゴーグル及びフェイスシールドの例外的取扱い」や「自宅療養を行う患者等に対するフォローアップ業務の委託」など、医療機関向けの情報が日々更新されていっています。現時点ではまだコロナ収束の見通しは不明瞭ですが、こういった特例により医療現場の業務負担が少しでも緩和され、医療提供体制の維持に寄与することを願って止みません。


※当原稿は4月17日時点の情報に基づくものであり、診療情報上の臨時的な取扱いなどについては、日々更新されることがありますことを予めご了承ください。

出典:厚生労働省ホームページ、「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その1~11)」


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。