2020.08.24

病院・クリニックが軒並み経営悪化!医業経営に与えたコロナの影響を考える

緊急事態宣言が解除されて3ヶ月が経過しようしています。しかし新型コロナウイルスによる影響はおさまることはなく、むしろ拡大していっているように感じられます。その影響は医療機関の経営にも顕著に表れており、経営困難による地域医療の崩壊といった最悪のケースも想定される事態といえます。

病院は軒並み経営悪化、賞与も約3割が減額・不支給

8月6日に公表された、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)」結果によると、賞与支給状況について、調査回答病院1,459病院のうち、71.3%が「満額支給」、27.2%が「減額支給」、0.8%が「支給なし」と回答しています。これはご承知のとおり、新型コロナウイルスによる経営収支の悪化によるものと考えられます。

賞与の減額や不支給は、職員のモチベーションの低下や退職につながりかねません。特に病院は人ありきの組織ですので、職員の退職などが病院運営に与える影響は大きいといえます。

また有効回答全病院、コロナ患者入院未受入病院、コロナ患者入院受入・受入準備病院の3区分での経営指標を比較では、コロナ患者受入れの有無にかかわらず、昨年よりも経営が悪化していることがわかります。特にコロナ患者入院受入・受入準備病院の経営悪化は著しく、医業利益率がマイナス10%以上となっています。

参照資料:「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調査(2020年度第1四半期)」

このような状況を鑑みて、各団体などからは政府に対する緊急的な経営支援が必要であると強く要望しています。では続いてクリニックの状況はどうでしょうか?

耳鼻・小児科クリニックは突出して経営悪化

クリニックについては、東京保険医協会の「第3回新型コロナウイルス感染症による医業経営への影響【緊急アンケート】 速報まとめ 無床診療所(一般診療所)調査結果概要」をもとにみていきたいと思います。

調査結果によると、有効回答930施設のうち、6月上旬の外来患者数が、前年同期と比べて「減った」と回答した施設は90.0%であり、4月の94.1%よりは低いものの、まだまだ患者数は戻っていない状況がうかがえます。また減少割合も「3割減24.8%」「4割減15.8%」「5割以上減27.2%」となっており、その割合も4月上旬とはそれほど大きく変わっていません。保険診療収入についても同様の傾向があり、状況が良化しているとはいえません。

次に保険診療収入が著しい診療科別にみてみましょう。特に耳鼻咽喉科や小児科の患者減少が大きく、「5割以上減」がそれぞれ77.3%・65.9%と突出しています。これらは受診による感染リスクを避けるために、親が子どもの受診を控えさせているといった見方ができます。特に小児科については、一部負担が無料のためこれまで気軽に受診していた患者が受診を控えるようになったことや、学校の休校などの影響も大きいと考えられます。

資料:「第3回新型コロナウイルス感染症による医業経営への影響【緊急アンケート】 速報まとめ 無床診療所(一般診療所)調査結果概要」をもとに筆者作成
コロナ後の経営環境はどう変化するか

これまでのとおり、コロナ禍における病院やクリニックの経営は非常に厳しくなっています。ではコロナ後はいったいどうなっていくのでしょうか?コロナ患者の受入や受入準備の影響により収支が圧迫されている病院であれば、コロナ収束後、経営は改善されるかもしれません。しかしそうではない医療機関、たとえば地域において比較的軽度な急性期医療を担っている病院やクリニックなどでは、受診控えなどといった患者の受診行動の変化の影響を大きく受けているといえます

この患者の受診行動の変化は、一時的なもので元にすぐ戻るという見方もありますが、そうでない見方もあります。それは、これまでが過剰の医療提供だったという見方です。この見方も一理あり、当社のクライアントのいくつかの病院では、急性期病棟の稼働率は低いが患者単価は高まっており、入院収入としては維持している施設があります。1つの見方として、これは本当に急性期治療が必要な患者しか入院してきていないという風に考えることもできます。ある意味、医療機関にかかる敷居が、入院外来問わず、高くなっていると捉えることもできます。

またさらに今回の感染予防意識が、今後も国民の意識に根強く残るとすれば、インフルエンザなどの感染症の病気にかかる頻度も少なくなるといったことは想定できます。

この答え合わせはある程度の長い年月が必要になりますが、いずれにせよ、国民の受診に対する意識や行動がコロナ後どのように変化するのか、医療機関の経営者は注視していく必要があるといえるのではないでしょうか。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。