2020.12.01

逆紹介は進むのか!?外来機能分化の議論で方向性が固まる

ここ最近、「紹介状なし患者の特別負担徴収義務の拡大」や「徴収額の引き上げ」など、外来機能分化に関する議論で、仕組みの大枠が固まりつつあります。今回はその内容についてまとめてみたいと思います。

コロナによる影響で外来などの受診控えが進んではいますが、中長期的には、地域の医療提供体制は、人口減少や高齢化等により、地域差を伴いながら「担い手の減少」と「需要の質・量の変化」という課題に直面しています。

都市部では外来需要が増加する一方、多くの地域では外来需要が減少していくことが見込まれています。また、これまで入院で提供され てい た医療が外来でも提供されるようになっており、外来医療の高度化も進展し ています。 このような地域の外来を取り巻く状況の変化に対応して、地域で限られた医療資源をより効果的・効率的に活用し、不足する医療機能の確保など、質の高い外来医療の提供体制を確保・調整していく ことが課題となっています。


■これまでの外来医療に関する議論の流れ


我が国日本の医療は、フリーアクセス制が保障されていて、諸外国に誇れる医療提供体システムとなっています。その一方で、「大病院への患者集中」がかねてより問題視されていました。

それは大病院の勤務医などが軽症の外来患者に忙殺されて、大病院ならではの専門的な医療が必要な患者への医療提供が阻害されてしまうためです。外来診察の医師が、お昼も摂れずに15時16時まで外来診察をやっているというのはよく聞くことです。

そこで診療報酬などを用いて、外来患者の逆紹介などを推進するような動きがとれられています。

たとえば、「紹介状を持たずに一般病床200床以上の病院を受診する患者からは特別負担を徴収してよい(任意徴収)」という仕組みだったものが、2016年度の改定では「特定機能病院や大規模な地域医療支援病院では、紹介状を持たない外来患者等から初診時5000円以上・再診時2500円以上の特別負担を徴収しなければならない(徴収義務)」という仕組みに変わっています。

さらに、2018年、2020年度改定では対象病院の枠がどんどん広げられ、今では200床以上の特定機能病院と地域医療支援病院への受診負担が義務化されています。

しかし依然として「紹介状を持たずに大規模な病院の外来を受診する患者」が減らないことから、令和元年12月の政府の全世代型社会保障検討会議で、今後の方針として①患者負担額の増額②公的医療保険の軽減③対象病院を200床以上の一般病院へ拡大といった方向性が打ち出されました。さらに遅くとも2022年度初までに改革を実施できるように取りまとめるよう明文化されています。


■固まりつつある仕組みの大枠


ここまでの議論の中で、つぎの3つの大枠が固まりつつあります。

①定額負担の対象病院拡大
新たに検討している「外来機能報告制度」に基づき、各地域で「紹介患者への外来を基本とする医療機関(仮称)※」を明確化する。そのうち一般病床200床以上の病院に「紹介状なし患者への特別負担徴収義務」を拡大する。
※「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関

出典:社会保障審議会医療保険部会 資料 「大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大について」

②定額負担の増額と公的医療保険の負担軽減
あえて紹介状なしで大病院を受診する患者に係る初・再診については、保険給付(選定療養費の患者への給付)を⾏う必要性が低いと考えられ、一定額をその範囲から控除する。控除に当たっては、受診の際に少なくとも生じる初・再診料相当額を目安に控除し、それと同額以上に定額負担を増額する。(例えば、初診料について2,000円控除した場合、増額幅は2,000円以上とするなど)

出典:社会保障審議会医療保険部会 資料 「大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大について」

③定額負担を徴収しない場合の要件(除外要件)の見直しなど
患者の医療機関へのアクセスを過度に制限しないよう配慮したうえで、直接受診する必要性の高い患者に限定するといった観点や、再診を続ける患者への定額負担については、初診時よりも徴収率が低いことから、除外要件の⾒直しと合わせてより実効性を⾼めるため必要な対応を検討することとしている。

①③については特段の大きな異論・反論は出ていないようですが、②における「公的医療保険の控除」については、医療サイドからは強い反対意見が出ているようです。

まとめ


この外来機能分化に繋がる定額負担に関する議論は、当社のクライアントでも多くの頻度で登場してきます。

実際に外来患者を分析してみると、再診で患者単価5,000円未満の患者数の割合が全体の60%にも関わらず、それにあたる外来収入は全体の10%未満であるケースが往々にしてあります。

つまり医師が外来で何百人も診て時間と労力を費やしているにもかかわらず、経営面の売上という点では寄与がかなり小さいということです。

医業経営という観点においては、費用対効果という点では見直す必要があるといえます。

また近年では医師の働き方改革も始まっています。これまで多くの時間を費やしてきた外来を見直し、入院患者を診るのことに時間を配分することで、勤務時間が短縮しパフォーマンスが向上するといったことも考えられます。

とはいっても、定額負担に付随する患者の逆紹介は一筋縄ではいかないのも事実です。経営状況によっては、そういった患者を手放すリスクもありますし、何より患者の理解もまだまだ十分でないといえます。そういった点では、国から明確な方針に基づき、地域全体で足並みをそろえて実施することが必要と考えます。

我が国の医療提供体制を維持していくうえ欠かせない外来機能の分化。今後さらにどのような議論がなされるのか注視していく必要があるといえます。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。