2021.04.28

2021年医療法等改正のチェックポイント-医師の働き方、タスクシフト/シェアの推進、外来医療の機能の明確化・連携など-

「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」が2021年3月18日から衆議院本会議で審議入りし、4月8日に可決されました。今回の改正項目は、「Ⅰ.医師の働き方改革」「Ⅱ. 各医療関係職種の専門性の活用」「Ⅲ. 地域の実情に応じた医療提供体制の確保」「Ⅳ. 持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長」の4つとなっています(図表)。ここでは、その法案から、「医師の時間外労働上限規制」「タスクシフト/シェアの推進」「医師養成課程の見直し」「外来機能報告制度の創設」にフォーカスして、改正のチェックポイントをご紹介します。

図表:「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」の概要

出典:第78回社会保障審議会医療部会 資料


■チェック①医師の時間外労働上限規制

これまでの我が国の医療は医師の長時間労働により支えられており、今後、医療ニーズの変化や医療の高度化、少子化に伴う医療の担い手の減少が進む中で、医師個人に対する負担がさらに増加することが予想されています。こうした中、医師が健康に働き続けることのできる環境を整備することは、医師本人にとってはもとより、患者・国民に対して提供される医療の質・安全を確保すると同時に、持続可能な医療提供体制を維持していく上で重要となります。

そこで、医師の働き方改革に関連して、長時間労働の医師を対象に、労働時間短縮と健康を確保するための対策が盛り込まれました。医療法の改正事案で、2024年4月より適用開始となる医師に対する時間外労働の上限規制に向けた対応として、次の3つの対策が講じられます。

(1)勤務する医師が長時間労働となる医療機関に対して「医師労働時間短縮計画書」の作成を求める。
(2)やむを得ず高い上限時間を適用する医療機関を都道府県知事が指定する制度を創設する。
(3)高い上限時間を適用する医療機関においては、面談指導、連続勤務時間の制限、勤務間インターバル規制などの健康確保措置を実施する。

■チェック②タスクシフト/シェアの推進

「Ⅱ. 各医療関係職種の専門性の活用」では、1つにタスクシフト/シェアの推進のための「医療関係職種の業務範囲の見直し」が挙げられています。これは医師の働き方改革に関連したもので、医師の負担を軽減しつつ、医療関係職種がより専門性を活かせるよう、各職種の業務範囲の拡大等を行うものです。関連する法律は、診療放射線技師法、臨床検査技師等に関する法律、臨床工学技士法、救急救命士法の4つであり、改正案により、それぞれの職種に新たな業務が認められることになります(図表)。それぞれタスクシフト/シェア案は、2021年10月1日の施行を目指しています。

図表 医療関係職種の業務範囲の見直し

出典:第78回社会保障審議会医療部会 資料


■チェック③医師養成課程の見直し

「Ⅱ. 各医療関係職種の専門性の活用」のもう1つが、「医師の養成課程の見直し」になります。
改正案では、(1)共用試験合格を医師国家試験の受験資格要件とすることを医師法に位置付ける、(2)共用試験に合格した医学生が臨床実習として医業を行うことができると明確化する─が盛り込まれました。これにより、共用試験に合格した医学生について、医師法第17条の規定にかかわらず、大学が行う臨床実習において、医師の指導監督のもとで医業を行うことができるようになります。(1)は2025年4月1日、(2)は2023年4月1日の施行を目指しており、歯科医師についても同様の対応となります。

■チェック④外来機能報告制度の創設

「Ⅲ. 地域の実情に応じた医療提供体制の確保」の柱の1つに、外来機能報告制度の創設が2022年4月1日施行を目指し、盛り込まれました。

外来医療の機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるために、
(1)医療機関が都道府県に外来医療の実施状況を報告する
(2)(1)の外来機能報告を踏まえて「地域の協議の場」において、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行う
(3)そして「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関(紹介患者への外来を基本とする医療機関)を明確化する
ことが盛り込まれました。

「医療資源を重点的に活用する外来」のイメージとしては、「医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(悪性腫瘍手術の前後の外来など)」「高額等の医療機器・設備を必要とする外来(外来化学療法、外来放射線治療など)」「特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来など)」が提示されています。

外来機能の集約化が狙いとなりますが、これにより病院の外来患者の待ち時間の短縮や勤務医の外来負担の軽減ができれば、医師働き方改革にも寄与することが期待されます。

■おわりに

上記のほか、今回の改正案では、「新型コロナウイルス感染症対策を意識した項目」や「認定医療法人制度の延長(2023年9月末まで)」などについても盛り込まれていますが、全体としては「医師の働き方改革」に関連するものが大部分を占めています。それだけ、医師を含めた医療機関の働き方改革は、優先順位の高いタスクに位置付けられているといえます。

働き方改革は、これから想定される医療の担い手不足といった人口動態の変化に対応するための対応策です。ただの法規制への対応というだけでなく、これからの病院経営にとって非常に重要な改革であり、1つの大きな経営課題として進めていく必要があるといえるでしょう。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。