2021.06.03

「オンライン診療等の実施登録した医療機関数」は全体の約15%と横ばい

5月31日に「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が開催されました。電話・オンライン診療は、2020年4月から「新型コロナウイルス感染症対応」として、臨時特例的に大幅に規制緩和されていますが、それらの実施状況については3ヶ月に1回の頻度で検証されてきました。今回の検討会では、その1~3月の検証結果が報告されました。今回はその内容について、一部ご紹介していきます。

■電話・オンライン診療に対応できる医療機関数は横ばいで推移

電話・オンライン診療は、2020年4月から「新型コロナウイルス感染症対応」として、臨時特例的に大幅に拡大されており、初診患者にも一定の制限はあるものの臨時的に認められています。

厚生労働省は、こうした電話・オンライン診療について、全症例を報告することを義務付けており、その報告内容を集計・分析し、「原則として3か月ごとに検証する」こととしています。今回、1~3月の状況が報告され、これで約1年間分の推移が追えることになります。

それによると、「電話や情報通信機器を用いた診療を実施できるとして登録した医療機関数」は、2020年6月に16,000施設を超えてからは横ばいで推移しており、2021年4月末時点では16,843施設と大きな変化はありません。同様に「初診から実施できるとして登録した医療機関数」についても、6月末が6761件に対して、4月末は7156件と大きな変化はなく、横ばいで推移していることがわかります。



また全医療機関に占める「初診から電話・オンライン診療を実施した医療機関」の割合については、5月に1.18%でピークとなり、6月以降は0.60~0.80%の間で推移しています。さらに「完全初診患者に電話・オンライン診療を実施した医療機関」の割合についても5月に0.61%でピークとなり、その後は0.30~0.40%の間を推移しており、こちらも横ばいで推移しています。



このような検証結果だけをみると、オンライン診療等についてはこれまでにないほど大幅に規制緩和されているにもかかわらず、実施件数がそれほど伸びない、横ばいということは、オンライン診療等への需要はそれほど高くないのではないかという見方もできます。また一方で、医療機関としても積極的に活用する段階まできていない、準備ができていないという要因もあるのかもしれません。いずれにせよ、オンライン診療等を根付かせていくためには、まだまだ時間を要すると思われます。

■オンライン診療等を利用している患者の背景は?

続いて、電話・オンライン診療を利用している患者側に目を向けてみましょう。

まずは利用している年齢層ですが、年齢階層別でみると「0~10歳」が電話診療で33%、オンライン診療で24%と1番多くなっています。次いで「31~40歳」が電話診療で16%、オンライン診療で22%と多くなっています。

また年齢階層別の疾患をみると、「0~14歳」では「上気道炎」「アレルギー性鼻炎」「気管支炎」などが多く、「15歳以上」では「発熱」「上気道炎」が多くなっています。

このような結果をみると、小児科や耳鼻咽喉科クリニックなどでは電話・オンライン診療のニーズは他の診療科よりも高いといえそうです。





■特例措置要件を一定数守らず、「基礎疾患の情報がない場合の8日以上の処方」が最も多い

今回の臨時特例では、過去に一度も受診歴がなく、他院からの診療情報提供などもない患者、いわゆる完全初診患者に対するオンライン診療等も認められています。ただし、そのような完全初初診患者については、誤診や重症化の見落としなどのリスクが極めて強くなることから、「麻薬・向精神薬の処方はできない」「処方日数は7日間を上限とする」などといった特例措置の要件が求められています。

検証では、「特例措置の要件を守らない処方の件数の推移」も追っており、その結果をみると、特例措置の要件を守らないケースは減少していますが、一定数は依然としてあるという状況がみてとれます。特に「基礎疾患の情報がない場合の8日以上の処方」の事例が最も多くなっています。



またオンライン診療等については、オンライン診療等に適していない症状や兆候がある場合には、速やかに対面での受診を勧めることとしています。

報告数に比して、受診勧奨が行われている件数が少なく、また慎重な対応が必要な症状であっても受診勧奨の件数は多くないことが明らかにされています。

オンライン診療等で懸念されている安全性と信頼性を検討するうえで、このような検証結果は非常に有用といえます。



■おわりに

国としては、国民が「かかりつけ医」をしっかり持つことを推奨しています。個人的にはこちらの状態を把握されている「かかりつけ医」とのオンライン診療等であれば、活用してみたいという想いはありますが、まだまだ医療機関側の対応準備などが整っていないように感じます。そういった医療機関を後押しするためにも、今後、オンライン診療を医療全体の中でどのような位置づけにしていくのかを示すことが、ひとつのポイントではないかと考えます。

資料出典:第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 資料


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。