2021.09.16

病院を選んだ理由、「交通の便」よりも「医師による紹介」が上位に

厚生労働省が9月13日に2020年の「受療行動調査(概数)の概況」を公表しました。「病院を選んだ理由」「ふだん医療機関にかかる時の情報の入手先」「満足度」などの調査がされており、医療経営の1つの参考になる資料になります。今回はその内容の一部について、ご紹介していきます。

■受療行動調査とは
全国の医療施設を利用する患者について、受療の状況や受けた医療に対する満足度等を調査することにより、患者の医療に対する認識や行動を明らかにし、今後の医療行政の基礎資料を得ることを目的としたもので、3年周期で実施されている調査になります。

調査対象としては、全国の一般病院を利用する患者(外来・入院)で、層化無作為抽出した一般病院を利用する患者となりますので、クリニックの患者は含まれていません。ただし、調査の区分としては、入院と外来分かれており、それぞれ以下の項目が調査されています。

・入院:病院を選んだ理由、入院までの期間、医師から受けた説明の程度、今後の治療・療養の希望、退院の許可が出た場合の自宅療養の見通し、満足度 等

・外来:診察等までの待ち時間、診察時間、来院の目的、初めて医師に診てもらったときの自覚症状、医師から受けた説明の程度、病院を選んだ理由、満足度 等

今回はこの中からいくつかご紹介していきます。

■病院を選んだ理由は「交通の便」よりも「医師による紹介」が上位に
外来、入院別に病院を選んだ理由を調査しています。その調査結果では外来、入院ともに「医師による紹介」が最も高く、外来で38.7%、入院で55.5%、次いで、外来では「交通の便がよい」が27.9%、入院では「専門性が高い医療を提供している」が26.5%となっています。特に入院に関しては、過半数が「医師による紹介」を選択しており、病院で新入院を獲得するためには、地域のかかりつけ医などとの連携が欠かせないことがわかります。
「ふだん医療機関にかかる時の情報の入手先」の項目では、ふだん医療機関にかかる時に「情報を入手している」者は、外来が80.0%、入院が83.0%、「特に情報は入手していない」者は、外来が17.2%、入院が14.7%となっています。これからほとんどの患者が医療機関からの情報を入手していることがわかります。

また「情報を入手している」者について、情報の入手先別にみると、外来、入院ともに「家族・知人・友人の口コミ」が最も高く、外来で71.1%、入院で69.4%、次いで、外来では「医療機関が発信するインターネットの情報」が23.5%、入院では「医療機関の相談窓口」が26.2%となっています。口コミは相変わらず高い割合となっています。さらに外来では「医療機関が発信するインターネットの情報」も高い割合を占めており、医療機関からの情報発信は非常に重要であることがわかります。


■3割は大病院に紹介状なしで受診
つぎに外来患者の最初の受診場所についてです。結果をみると、 「最初から今日来院した病院を受診」が 53.7%と最も多く、次いで 、「最初は他の病院を受診」が 26.6 、「最初は 診療所・クリニック・医院 を受診」が 17.7%となっています。

また病院の種類別にみると、特定機能病院では「最初は他の病院を受診」が 42.3%と最も多く、それ以外の病院では「最初から今日来院した病院を受診」が最も多くなっています。しかし依然として3割の患者は、特定機能病院などの大病院を、紹介状を持たずに受診しており、外来の機能分化の加速する中、患者側の意識改革も必要と考えられます。

■不満項目は入院では食事、外来では待ち時間
最後に満足度調査にも触れたいと思います。項目別の満足度をみると、「満足」していると回答した者の割合が高いのは、外来、入院ともに「医師による診療・治療内容」「医師との対話」「医師以外の病院スタッフの対応」となっており、外来で約6割、入院で約7 割となっています。例年よりも増加傾向にあり、医師やそれ以外の職員の患者への対応が年々よくなってきている傾向がみえます。

一方、「不満」であると回答した者の割合が最も高いのは、外来では「診察までの待ち時間」が23.9%、入院では「食事の内容」が13.6%となっています。



■おわりに
受療行動調査の中には、医療機関の経営に活かせるものがたくさん入っています。このデータは、自院の状況を確認するための1つの材料といえます。このデータをヒントに、自院の課題解決や患者満足度の向上にどのようにつなげていくか、組織内で意見出しやディスカッションしてみても面白いかもしれません。


---------------------------------------
◆筆者プロフィール
---------------------------------------
森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。