2022年度診療報酬の改定項目が決定!看護必要度の見直し、紹介受診重点医療機関、看護職員の収入の引上げなど
1月14日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、これまでの議論の整理ということで、2022年度診療報酬改定に向けた改定項目がおおよそ固められました。今後、パブリックコメントなどを通じて国民の意見を聴取したうえで、具体的な改定内容である「個別改定項目」に基づく論議を1月末から集中的に行っていきます。そして2月上旬の答申を目指す流れとなります。今回はその改定項目の中で、いくつかピックアップしていきたいと思います。
■急性期病棟、看護必要度の見直しの行方は
2022年度改定では、(1)新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築【重点課題】(2)安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進【重点課題】(3)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現(4)効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上-の4つの柱が打ち立てられました。
その中で(1)の中には、「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」が挙げられており、そこで各入院基本料の評価や在り方などの見直しが記載されています。その中で、今回も注目度が高いものといえば、急性期入院医療の重症度、医療・看護必要度の判定に関わる評価項目の見直しではないでしょうか。
まだ議論の落としどころを探っている段階ではありますが、一般病棟用の必要度の評価項目の見直し案としては、次の4案によるシミュレーションが報告されています。
①案:A項目について点滴ライン同時3本以上管理を「点滴薬剤3種類」に定義見直しを行い、輸血・血液製剤管理の得点を現在の1点から2点に引き上げる
②案:B項目について「衣服着脱」を削除し、C項目について「骨の手術」を現在の11日間から「10日間」に短縮する
③案:A項目について点滴ライン同時3本以上管理を「点滴薬剤3種類」に定義見直しを行い、心電図モニター管理を削除、輸血・血液製剤管理の得点を現在の1点から2点に引き上げる
④案:A項目について点滴ライン同時3本以上管理を「点滴薬剤3種類」に定義見直しを行い、心電図モニター管理を削除、輸血・血液製剤管理の得点を現在の1点から2点に引き上げる。あわせてB項目について「衣服着脱」を削除し、C項目について「骨の手術」を現在の11日間から「10日間」に短縮する
どの案にせよ、今回のシミュレーションから中小病院が相当なダメージを受けることが明らかな結果となっており、このコロナへの対応が求められている中で、どこまで厳格化するのか、今後の展開が注目です。
■紹介受診重点医療機関で入院に新たな評価
今回新たに外来機能の分化という中で、紹介受診重点医療機関を地域で明確化していくことが決定しました。紹介受診重点医療機関はそれぞれの医療機関の意向が反映されるようですが、紹介受診重点医療機関となった場合は原則、紹介状ありの患者を受けることになり、紹介状なしに受診した場合には、初診時に5000円以上、再診時に2500円以上の特別負担を患者から徴収する義務が発生することになります。ただこの特別負担も、患者負担は増えるが病院収益は増えないということで、医療機関にとってはどちらの方向性に進むべきか、頭を悩ませている病院も多いかと思います。
今回改定項目の中で、『「紹介受診重点医療機関」において 、入院機能の強化や勤務医の外来負担の軽減等が推進され、入院医療の質が向上することを 踏まえ、 当該入院医療について 新たな評価を行う』というものがあります。つまり、「紹介受診重点医療機関」に手挙げすることで、入院の新たな加算のような診療報酬がつくことになることが見込まれます。この評価の点数にもよりますが、病院の外来機能の方向性を決めるうえで、1つの要素となるのではないでしょうか。このあたりも今後の議論の注目といえます。
■看護職員の収入の引上げ
最後にご紹介したいのが、昨年11月に閣議決定された経済対策にある看護の現場で働
く方々の収入の引上げです。これに関しては2022年2月から前倒しで実施される流れで、2022年2月~9月は補助金で、10月以降は診療報酬で対応されていく見込です。
具体的には、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入1%程度 (月額4,000円)引き上げるための経費が、2022年2月から前倒しで実施するために都道府県に交付されます。さらに最終的には10月以降、診療報酬で3%程度(月額12,000円)の引上げができるような仕組みを構築される予定となっています。
看護職員の収入を上げることに反対する意見はあまりありませんが、組織としては他の職種の収入引上げも対応せざるを得ないと想定されるため、そこへの対応も今後検討が必要といえます。用途としては、看護補助者、理学療法士・作業療法士等のコメディカルの処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認めるとありますが、現実問題として、病院の負担が増えることは容易に想像ができるかと思います。このあたりも今後の病院経営に何かしらの影響を与えるといえるでしょう。
具体的な改定内容である「個別改定項目」に基づく論議は1月末から、そして2月上旬が答申という流れになります。コロナ第6波が想定される中、どこまでの見直しが実施されるのか、落としどころをどこにするのか、今後の議論に注目です。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。