コラム
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診療報酬改定、自院ポストアキュート60%以上の減算対象を400床から200床以上に拡大

2022年2月9日に、中央社会保険医療協議会から厚生労働大臣に令和4年度診療報酬改定内容が答申されました。改定率は、診療報酬が+0.43%(各科では医科+0.26%、歯科+0.29%、調剤+0.08%)、薬価・材料価格で▲1.37%となっています。

 新型コロナ感染症によるパンデミックも3年目となり、我が国も第6波の感染拡大によって社会全体が大きな影響を受ける中、診療報酬の改定にあたっても、『新型コロナ感染症への対応』や『医師等の働き方改革』等を含めた改定内容となっています。

 その中でも今回は要件が厳格化された【地域包括ケア病棟入院料】についてみていきましょう。
 
 
今回の診療報酬改定のなかで最も大きく見直しされた入院料を挙げると、「地域包括ケア病棟入院料・地域包括ケア入院医療管理料」(以下、地域包括ケア病棟入院料等)といえるのではないでしょうか。

 前回の改定から、地域包括ケア病棟入院料等の3 つの機能である「急性期治療後の患者の受け入れ(ポストアキュート)」「自宅や介護施設等からの緊急時受け入れ(サブアキュート)」「在宅・生活復帰支援」を、バランスよく行うことが求められるようになりました。今回の改定では、それがさらに厳格化されて求められるようになった形です。具体的な改定項目としては、つぎのとおりです。



 特にインパクトの大きい内容として、自院の一般病棟から転棟した患者割合が60%以上の場合に減算される対象が、400床以上から200 床以上に拡大され、かつ、その減算割合が▲10%から▲15%に引き上げられました。これまで急性期一般入院料1などを持するために、自院ポストアキュート中心で地域包括ケア病棟等を運用していた400床未満の病院については、今までの地域包括ケア病棟の運用の見直しや、自院の急性期病棟の在り方などを再考する必要があるといえます。
 
 また、急性期病棟からの患者受け入れを評価する【急性期患者支援病床初期加算】や増悪した在宅患者の受け入れを評価する【在宅患者支援病床初期加算】についても、細分化され、評価もつぎのように見直されました。
 


急性期患者支援病床初期加算については、400床以上の病院で自院の急性期病棟から患者を受け入れた場合の初期加算が50点(現行より▲100点)となる一方、400床未満の病院で他院の急性期病棟から患者を受け入れた場合の初期加算は250点(現行より+100点)とメリハリのつけた見直しがされました。

 在宅患者支援病床初期加算については、老健から患者を受け入れた場合の初期加算が500 点(現行より+ 200 点)、自宅・その他施設から患者を受け入れた場合の初期加算が400点(現行より+100点)と、サブアキュート機能を評価する改定内容となっています。

 前述のとおり、今回の改定では地域包括ケア病棟入院料等の3つの機能をバランスよく行うことを200床以上の病院に求めるものとなっています。特に大規模病院についてはサブアキュート機能をどこまで行っていくのか(減算を受け入れるのか)、今回の改定を機に検討する必要があるといえるでしょう。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。