コラム
COLUMN

オンライン資格確認の導入、2023年4月から義務化検討

5月25日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、オンライン資格確認等システムについて議論がされました。資料によると5月15日時点における運用開始施設が全体で43,693施設と、全施設の19%となっており、2023年3月までにすべての保険医療機関・薬局での導入を目指すという目標が厳しくなっています。そのような中、今回の部会では、オンライン資格等システムの導入に向けた「更なる対策」として、「2023年4月から保険医療機関・薬局におけるシステム導入について原則として義務化する」必要があるのではないか等との議論がされています。

■オンライン資格確認とは
オンライン資格確認等システムは、2021年10月より稼働しており、受付で患者がマイナンバーカードを利用することにより、オンラインで資格を確認することができ、医療機関・薬局の窓口で、直ちに資格確認が出来るようになります。

導入することで、次のようなメリットがあります。
① 医療機関・薬局の窓口で、患者の方の直近の資格情報等(加入している医療保険や自己負担限度額等)が確認できるようになり、期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や手入力による手間等による事務コストが削減できます。

②また、マイナンバーカードを用いた本人確認を行うことにより、医療機関や薬局において特定健診等の情報や薬剤情報を閲覧できるようになり、より良い医療を受けられる環境となります(マイナポータルでの閲覧も可能)。

また導入に関する補助金も準備されており、国の目標としては、2023年3月までに概ねすべての保険医療機関・薬局での導入を目指すことを掲げています。


■導入・稼働状況
5月15日時点の同システムの導入・稼働状況をみると、全国で「顔認証付きカードリーダー申込施設数」は全体の57.9%で6割近くまで上がってきましたが、「運用開始施設数」は19%と全体の2割を満たない状況です。


図表:オンライン資格確認の導入状況(5月1 5日時点)
出典:第151回社会保障審議会医療保険部会 資料


この状況を踏まえると、当初の目標である2023年3月までにすべての保険医療機関・薬局への導入は、厳しいことが想定されます。

そこで対策として、今年度中に概ね全ての医療機関・薬局での導入を目指すとの目標の達成に向けては、遅くとも9月頃までに、カードリーダー未申込の施設による申込が必要となることから、令和4年度上半期に導入加速化が図られるよう、次のような集中的な取組を行うことが検討されました。

① 現時点で顔認証付きカードリーダーを未申込の施設
:個別施設への架電による働きかけや個別ダイレクトメール等による周知を行うとともに、地域単位説明会やシステム事業者を通じた働きかけを行う。

② カードリーダー申込済で改修工事が未了の施設
:導入状況を踏まえた個別メール送付等を行っていく。地域単位説明会やシステム事業者を通じた働きかけ等も含め、重層的な取組を行っていく。

③ 改修工事は終了しているが運用を開始していない施設
:個別メールにより運用開始日の入力を促していく。

また今後の導入目標として、当初の目標を達成するために必要な導入ペースを踏まえ、環境が整うことで累積的に増加していくことを念頭に、中間到達目標として、9月末時点で概ね5割(約11.5万施設程度、平均で約1.5万施設/月)の導入を目指すことが設定されました。


■導入促進に向けた「更なる対策」
そして、オンライン資格確認のもう一歩踏み込んだ「更なる対策」として、以下が検討されるべきではないかとの議論がなされました。

① 2023年4月から保険医療機関・薬局におけるシステム導入について原則義務化
② 医療機関・薬局でのシステム導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する財政措置を見直す(診療報酬上の加算の取扱については、中医協で検討)。
③ 令和2024年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指す。
さらに、上記以外で保険証を利用している機関(訪問看護、柔整あはき等)のオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止(加入者から申請があれば保険証は交付)を目指す。


2022年度の診療報酬改定で「電子的保健医療情報活用加算」が新設されました。これにより導入スピードが加速すると期待されていましたが、実態は期待どおりの効果が出ていないように思われます。医療機関側からすると、「マイナンバーカードが普及していない」「マイナンバーカードを持参する患者がいない」「加算がつき患者負担が多くなるのはいかがなものか」などといった意見が多く聞かれます。

オンライン資格確認等システムは様々な面で今後必要なシステムであることは想定されます。ただその導入を促進するためには患者である国民への説明、国民の理解をどのように進めていくかが重要といえるでしょう。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。