外来医療の機能の明確化・連携に向けて
~「紹介受診重点医療機関」が2023年4月から、「外来機能報告制度」は今年度からスタート~
地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため、「外来機能報告制度」が今年度からスタートします。「外来機能報告制度」による報告を踏まえて「地域の協議の場」で必要な協議を行い、2023年4月から「紹介受診重点医療機関」を明確化していきます。「外来機能報告制度」、「紹介受診重点医療機関」のあらましをみていきましょう。
紹介受診重点医療機関の概要
地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため、医療法に規定された「外来機能報告制度」が2022 年4月1日に施行されました 。
具体的には 、
①対象医療機関が都道府県に対して、外来医療の実施状況を報告(外来機能報告)する
②当該報告を踏まえて、「地域の協議の場」において、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行う
③この中で、「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関として、「紹介受診重点医療機関」を明確化する
という流れです。
この背景には、患者が医療機関を選択するにあたり、外来機能の情報が十分得られず、また、患者にいわゆる大病院志向がある中で、一部の医療機関に外来患者が集中し、患者の待ち時間や勤務医の外来負担等の課題が生じていることなどがあります。「紹介受診重点医療機関」の明確化については手挙げ方式で、地域医療構想調整会議などを活用して地域の協議の場を設け、
① 医療機関の意向
② 医療資源を重点的に活用する外来の実施割合【初診基準:40%以上、かつ、再診基準:25%以上】(国の基準)
③ 紹介率及び逆紹介率【紹介率:50%以上、かつ、逆紹介率:40%以上】(参考指標)
をもとに地域で協議し、協議が整った医療機関を都道府県が公表します。2022年度の診療報酬改定では外来機能の明確化及び医療機関間の連携を推進する観点から、紹介状なしで受診した患者等から定額負担を徴収する責務がある医療機関の対象範囲が見直され、「紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る)」が対象に追加されました。また、定額負担の額も医科初診では7,000 円、医科再診では3,000円と増額されました。
さらに「紹介受診重点医療機関」においては、勤務医の外来負担の軽減等が推進され、入院医療の質が向上することを踏まえ、入院医療における新たな評価として、紹介受診重点医療機関入院診療加算:800点(入 図表2 外来機能報告の年間スケジュール(2022年度)院初日)が新設されました。
その他にも、外来医療の機能分化及び医療機関間の連携を推進する観点から、算定上限回数や名称が見直された連携強化診療情報提供料(改定前は診療情報提供料(Ⅲ))では、対象患者として「紹介受診重点医療機関において、 200 床未満の病院又は診療所から紹介された患者」が追加されました。これにより、紹介受診重点医療機関が、地域の診療所等から紹介された患者について診療情報を提供した場合に、月1回150点が算定できます。
NDBデータを活用した「外来機能報告制度」も今年度から開始に
「外来機能報告の対象は、 病床機能報告対象病院等であって外来医療を提供するものとされています。具体的には、病院又は診療所であって療養病床又は一般病床を有するものになります。また無床診療所についても、任意で外来機能報告を行えるとしています。
外来機能報告の2022年度におけるスケジュールを以下に示します。
外来機能報告における報告項目は大きく以下の3項目に分かれています。
① 医療資源を重点的に活用する外来の実施状況の概況
② 「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」となる意向の有無
③ 地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要なその他の事項
外来機能報告は、病床機能報告と一体的に報告を行なうとしており、2022 年度以降の具体的なスケジュールとしては、4月から昨年度のNDB データの抽出と集計を行い、10 ~ 11月に対象医療機関からの報告を受け、2023 年1 ~ 3 月にかけ地域の協議の場(地域医療構想調整会議など)で話し合われる予定です。なお、2022年度については、原則として、都道府県において、2023年3月までに紹介受診重点医療機関を公表するとしています。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。