コロナ感染拡大における医療機関・保健所の負担軽減などに関する事務連絡
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が急激に広がる中で、厚生労働省は7月22日に「オミクロン株のBA.5 系統への置き換わりを見据えた感染拡大に対応するための医療機関・保健所の負担軽減等について」の事務連絡を行いました。
項目としては、▼発生届出の簡略化▼健康視察の簡略化・迅速化▼濃厚接触者の特定・行動制限▼療養・待機期間終了時の取扱い▼療養証明書の発行▼自ら検査した結果の登録により療養を開始する仕組みの導入等――の6項目について記載されています。
今回はその中でも特に強調されている「濃厚接触者の特定・行動制限」と「自ら検査した結果の登録により療養を開始する仕組みの導入等」についてご紹介します。
■ハイリスク施設以外についても特定・行動制限を行うことは可
オミクロン株は感染・伝播性が高く、潜伏期間と発症間隔が短いため、感染が急拡大し、それに伴い濃厚接触者が急増することから、その全てに一律に対応を行うことは、保健所機能や社会経済活動への影響が非常に大きくなっています。このため、濃厚接触者の特定・行動制限はハイリスク施設に集中化することとし、同一世帯内以外の事業所等については、濃厚接触者の特定・行動制限は行う必要がないことを改めて徹底することを明示しました。
またその際には、濃厚接触者の特定に当たっては、一律に聴取り等を行う必要はなく、同一世帯内の全ての同居者が濃厚接触者となる旨を感染者に送付するメッセージにその旨を盛り込み周知する等の方法により感染者に伝達すること等をもって濃厚接触者として特定したこととすることは可能であるとしました。
なお、地域の感染状況等を勘案して、クラスターが確認された場合等自治体が濃厚接触者の特定・行動制限について、感染拡大の防止のために必要と判断する場合に、ハイリスク施設以外についても特定・行動制限を行うことは可能である旨を明示しました。
■外来の逼迫回避に向け自ら検査した結果による療養開始の導入など
発熱や呼吸症状のある患者等が診療・検査医療機関の外来に殺到している状況を回避するために、自らが検査した結果を都道府県等が設置し医師を配置する健康フォローアップセンター等に登録し、外来受診を経ることなく迅速に療養に繋げる仕組みを導入することも有効である旨を明示しました。
また既にこうした仕組みを導入している自治体においては、様々な取組が行われており、その実施事例などを列挙し、これらのうち都道府県等で必要な取組を組み合わせて導入する等の対応の検討を要請しました。
具体的な実施事例としては、つぎのとおりです。
【1】自ら検査した結果を既存の自治体のWEB 申請フォーム等オンラインを通じて提出・陽性者を把握
※ 自ら実施する抗原定性検査キットによる検査以外に無料検査センター等での検査結果を登録し、電話又はオンラインで診察する方法をとる事例もある。
【2】申請された基礎情報(氏名・生年月日等)や自ら検査した結果を医師以外の者が電話や画像等で確認
【3】あらかじめ聴き取った基礎情報等の情報をもとに、医師の管理下で発生届を作成
【4】健康フォローアップセンター等の医師は、自治体の医師(保健所長や健康フォローアップセンター等に配置されている医師)に加えて、地域の医師会と連携して、当番制で実施
※ 自治体の健康フォローアップセンター等の医師が薬の処方を行っている事例もある。
【5】検査結果を登録後、My HER-SYS を利用しない方も含めて、登録情報から自動的に作成される療養開始の証明をオンラインで交付
このような仕組みを導入することで、医療機関などの負担軽減にもつながります。こ通知を受けて自治体などでどのような対応が行われるか、今後の取り組みにも注目が集まります。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。