コラム
COLUMN

2023年4月よりオンライン資格確認導入、原則義務化へ

8月10日の中央社会保険医療協議会・総会で答申が行われたものの1つにオンライン資格確認等システムの導入促進に向けたものがあります。

オンライン資格確認等システムの導入に関しては、政府の骨太方針2022でも言及されているとおり、来年度からすべての医療機関に対し、マイナンバーカードを用いた患者のオンライン資格確認ができる体制が求められています(例外規定あり)。そのために今回の議論では、「オンライン資格確認の導入の原則義務化」「電子的保健医療情報活用加算の廃止」「システム改修費の補助の見直し」が行われることになりました。

オンライン資格確認導入に関しては、マイナンバーカードを保険証として活用することにより、「医療機関・薬局の窓口で、患者の直近の資格情報等の確認ができ、期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や手入力による手間等による事務コストが削減」や、「マイナンバーカードを用いて本人確認を行うことで医療機関等において特定健診等の情報や薬剤情報を閲覧でき、より良い医療を受けられる(マイナポータルでの閲覧も可能)」といったことが期待されています。しかしその運用開始施設数は全体の26.1%と低く、特に医科・歯科診療所は20%を満たない状況となっています(図表)。

そこで今回、オンライン資格確認等システムの導入を促進するために、大きな見直しが行われることになりました。

まず1つ目に、2023年4月からオンライン資格確認導入の原則義務化があります。これに関しては、保険医療機関及び保険医療養担当規則に次の内容が盛り込まれることになりました。

① 保険医療機関等は、患者の受給資格を確認する際、患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認による確認を求めた場合は、オンライン資格確認によって受給資格の確認を行わなければならないこととする。
② 現在紙レセプトでの請求が認められている保険医療機関等については、オンライン資格確認導入の原則義務付けの例外とする。
③ 保険医療機関等(2.の保険医療機関等を除く。)は、患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認による確認を求めた場合に対応できるよう、あらかじめ必要な体制を整備しなければならないこととする。

これにより、原則、紙レセプトで運用している医療機関等以外は、2023年4月よりオンライン資格確認の義務化となります。

続いて2つ目に2022年10月より電子的保健医療情報活用加算が廃止されることが決定しました。この加算は、オンライン資格確認等システムを通じた患者情報等の活用した際に算定できる(初診の場合は7点)もので、2022年の診療報酬改定で新設されたものになります。しかし、この加算についてはオンライン資格確認を行わない場合も含めて患者負担が増えることがオンライン資格確認の普及にむしろ逆行するとの指摘がありました。
今回の見直しによる電子的保健医療情報活用加算が廃止され、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が新設されました(図表)。




具体的には、施設基準を満たした医療機関を患者が受診した場合、通常の保険証を利用した場合には加算1の「4点」が初診料に上乗せされるため、患者負担増は「12円」(3割の場合)となります。一方でマイナンバーカードを保険証利用とする場合には「加算2」の2点が上乗せされるため、患者負担増は「6円」にとどまることになります。これにより、マイナンバーカードの保険証利用の促進に寄与されることが期待されています。

最後にシステム改修費の補助に関しては、大型チェーン薬局以外の病院および診療所・薬局(大型チェーン薬局以外)に関して、つぎのような見直しが行われることになりました。
・病院は、補助率を「2分の1」を維持したまま、補助上限額を従前の「2倍」に引き上げ(1台の場合、事業額の2分の1(上限210.1万円)であったところ、事業額の2分の1(上限420.2万円)の補助)
・診療所や薬局(大型チェーン薬局以外)は、経営規模を踏まえ「実費補助」(これまでは4分の3の補助を全額補助へ)

今回の見直しにより、オンライン資格確認等システムの導入がどれだけ加速されるのか、今後の動向に注目されます。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。