第8次医療計画の外来医療ガイドライン、外来医師多数区域や新規開業者以外でも地域で不足する医療機能を担うよう求める
第8次医療計画に関する議論が大詰めを迎えています。これまで検討会や下部組織のワーキンググループでは、都道府県が医療計画を作成する(2023年度中に作成)際の拠り所となる基本指針を、2022年度中に都道府県に提示できるように論議を進めてきました。検討会で年内まで意見を整理し、それをもとに厚労省で年度末(2023年3月頃)に指針を示すスケジュールとなっています。
11月24日の第19回第8次医療計画等に関する検討会では、第8次医療計画に関する検討会・ワーキングでのこれまでの論議を踏まえた「意見のとりまとめ(たたき台)」が提示されました。とりまとめ資料では、2024年度開始の第8次医療計画に向けて見直しが必要とする事項として、▼医療計画全体▼5疾病・6事業および在宅医療のそれぞれの医療提供体制等▼外来医療にかかる医療提供体制の確保に関するガイドライン▼医師確保計画策定ガイドライン―の4項目を挙げています。
本稿では、「外来医療にかかる医療提供体制の確保に関するガイドライン」の項目について、一部ご紹介していきます。
当項目には、
①外来医師偏在指標を活用した取組み
②医療機器の効率的な活用
③地域における外来医療の機能分化及び連携
に関して記載されています。
①に関しては、策定した外来医療計画は、住民に対しわかりやすく周知するほか、取組の実効性を確保する観点からは、金融機関等へ情報提供を行うことが重要であるとし、また外来医師多数区域以外や新規開業者以外においても、地域の実情に応じて、地域で不足する医療機能を担うように求めることができることとするとしています。
さらに、地域に必要な外来医療提供体制の構築を進める観点から、都道府県は、地域で不足する医療機能(夜間・休日の診療、在宅医療、公衆衛生等)について、具体的な目標を定め、達成に向けた取組の進捗評価が求められることになります。
②に関しては、医療機器の配置や稼働状況等の可視化を行い、共同利用を促進する方向性となります。また地域の医療資源を可視化する観点から、 新たに医療機器を購入する医療機関に対しては、購入後の当該医療機器の稼働状況について、都道府県へ報告を求めることが明記されています。
③に関しては、地域の医療機関の外来機能の明確化や連携状況を可視化し、患者による医療機関の適切な選択を支援することを目的に、紹介受診重点医療機関となる医療機関の名称に加え、外来機能報告で把握可能な紹介受診重点外来の実施状況等情報を、外来医療計画の記載事項として、新たに盛り込むとしています。
まだ「意見のとりまとめ(たたき台)」、いわゆる案の段階ですが、上記のような方向性が示されています。また年内までに最終的な意見のとりまとめが行われる予定ですので、議論も大詰めを迎えているといえます。今後の動向に注目したいところです。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。