医療機関における10%増税と軽減税率の影響
消費税率は、2014年4月8%に引き上げられた後、
2015年10月には10%に引き上げられる予定でした。
しかし、
増税が経済や生活などに与える影響を懸念し、
政府は2度にわたり増税を先送りしてきました。
現在のところ、2019年10月より10%に引き上げられ、
軽減税率が導入される予定となっています。
今回はその消費税の基本的な部分の振り返りと
医療機関における軽減税率の影響について
触れていきたいと思います。
■医療機関における消費税
消費税は間接税ですので、
本来は消費者が負担し、事業者が納める税金と
なっています。
つまり、病院やクリニックであれば
患者が負担し、医療機関が納めることに
なりますが、医療機関は基本、非課税のため
患者からは徴収できず、医療機関がその分を
負担することになります。
これを踏まえ、厚生労働省は消費税導入以来、
診療報酬で医療機関の負担分を補填してきました。
1997年の税率5%引上げ時は0.77%
2014年度には1.36%と、診療報酬に上乗せする
かたちで手当てしてきました。
しかし、2014年度の消費増税に対応するための
診療報酬プラス改定の補填状況調査(2016年度実施)
によると、クリニックでは補填率が100%超である
のに対し、病院は85%と損税になっていることが
明らかになりました。
また病院の中でも一般病院や精神科病院での
補填状況にも大きなバラつきがあることも
報告されています。
これは、急性期病院では、
高度な医療機器や様々な診療材料の
購入量が多いため、課税経費率が高くなります。
そうした点などが2014年度改定では十分に
把握しきれなかった可能性があるとされています。
2019年度の対応については、2014年度の対応を
1度リセットし、「5%→10%」分を考慮した
点数見直しが行われる予定です。
■軽減税率の概要と医療機関への影響
2019年10月1日からの消費税率引き上げと同時に、
8%の軽減税率が導入されます。
軽減税率の対象となる品目は以下の通りです。
(1)飲食料品
(食品表示法に基づく食品で酒類を除くもの)
(2)週2回以上発行される新聞
(定期購読契約に基づくもの)
※飲食料品については、外食・ケータリング等は
標準税率(10%)が適用となります。
医療機関においては、保険診療に該当するものは
消費税が非課税となります。
ただし、自由診療や窓口での物品販売などを
行っている医療機関においては、
課税対象となるものもありますので
対応が必要です。
課税対象となるものの例を税率別に区分すると
以下のようになります。
●標準税率(10%)の対象となるもの
・自由診療
・文書料(※)、
・マスクや歯ブラシ等飲食料品に該当しないもの
・院内売店での飲食料品以外の販売
・社会保険診療に該当しない医薬品、医薬部外品、
再生医療等製品等
※文書料には、傷病手当金意見書交付料、
労災保険の文書料等非課税となるものもあります。
●軽減税率(8%)の対象となるもの
・のど飴など飲食料品に該当するもの
・特定保健用食品、健康食品、栄養機能食品、
美容食品(食品表示法に基づく飲食料品に該当する為)
・院内売店での飲食料品の販売等
なお入院時の病院食の提供は、
社会保険診療に該当するものであれば
消費税は非課税です。
ただし、患者の自己選択により
特別メニューの食事の提供を受けている
場合に支払う特別の料金については
非課税とならず、標準税率(10%)
が適用されますので注意が必要です。
また、事務的な準備として、
請求書の記載事項に税率ごとの区分を
追加した請求書等(区分記載請求書等)の
交付が必要になってきます。
医療機関の場合は、非課税となるものが
多いため、税率区分だけでなく
「非課税」「10%」「8%」の3つの区分で
記載する必要があります。
会計などのシステムの改修なども
必要になると考えられます。
現時点では、2019年10月の増税が
決定となったわけではありませんが、
そうなったときに備え、準備しておく
ことは必要です。
特に、会計システム改修などにおける
補助金なども2019年9月までというものもあり、
早めの情報収集が大切といえるでしょう。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。
2015年10月には10%に引き上げられる予定でした。
しかし、
増税が経済や生活などに与える影響を懸念し、
政府は2度にわたり増税を先送りしてきました。
現在のところ、2019年10月より10%に引き上げられ、
軽減税率が導入される予定となっています。
今回はその消費税の基本的な部分の振り返りと
医療機関における軽減税率の影響について
触れていきたいと思います。
■医療機関における消費税
消費税は間接税ですので、
本来は消費者が負担し、事業者が納める税金と
なっています。
つまり、病院やクリニックであれば
患者が負担し、医療機関が納めることに
なりますが、医療機関は基本、非課税のため
患者からは徴収できず、医療機関がその分を
負担することになります。
これを踏まえ、厚生労働省は消費税導入以来、
診療報酬で医療機関の負担分を補填してきました。
1997年の税率5%引上げ時は0.77%
2014年度には1.36%と、診療報酬に上乗せする
かたちで手当てしてきました。
しかし、2014年度の消費増税に対応するための
診療報酬プラス改定の補填状況調査(2016年度実施)
によると、クリニックでは補填率が100%超である
のに対し、病院は85%と損税になっていることが
明らかになりました。
また病院の中でも一般病院や精神科病院での
補填状況にも大きなバラつきがあることも
報告されています。
これは、急性期病院では、
高度な医療機器や様々な診療材料の
購入量が多いため、課税経費率が高くなります。
そうした点などが2014年度改定では十分に
把握しきれなかった可能性があるとされています。
2019年度の対応については、2014年度の対応を
1度リセットし、「5%→10%」分を考慮した
点数見直しが行われる予定です。
■軽減税率の概要と医療機関への影響
2019年10月1日からの消費税率引き上げと同時に、
8%の軽減税率が導入されます。
軽減税率の対象となる品目は以下の通りです。
(1)飲食料品
(食品表示法に基づく食品で酒類を除くもの)
(2)週2回以上発行される新聞
(定期購読契約に基づくもの)
※飲食料品については、外食・ケータリング等は
標準税率(10%)が適用となります。
医療機関においては、保険診療に該当するものは
消費税が非課税となります。
ただし、自由診療や窓口での物品販売などを
行っている医療機関においては、
課税対象となるものもありますので
対応が必要です。
課税対象となるものの例を税率別に区分すると
以下のようになります。
●標準税率(10%)の対象となるもの
・自由診療
・文書料(※)、
・マスクや歯ブラシ等飲食料品に該当しないもの
・院内売店での飲食料品以外の販売
・社会保険診療に該当しない医薬品、医薬部外品、
再生医療等製品等
※文書料には、傷病手当金意見書交付料、
労災保険の文書料等非課税となるものもあります。
●軽減税率(8%)の対象となるもの
・のど飴など飲食料品に該当するもの
・特定保健用食品、健康食品、栄養機能食品、
美容食品(食品表示法に基づく飲食料品に該当する為)
・院内売店での飲食料品の販売等
なお入院時の病院食の提供は、
社会保険診療に該当するものであれば
消費税は非課税です。
ただし、患者の自己選択により
特別メニューの食事の提供を受けている
場合に支払う特別の料金については
非課税とならず、標準税率(10%)
が適用されますので注意が必要です。
また、事務的な準備として、
請求書の記載事項に税率ごとの区分を
追加した請求書等(区分記載請求書等)の
交付が必要になってきます。
医療機関の場合は、非課税となるものが
多いため、税率区分だけでなく
「非課税」「10%」「8%」の3つの区分で
記載する必要があります。
会計などのシステムの改修なども
必要になると考えられます。
現時点では、2019年10月の増税が
決定となったわけではありませんが、
そうなったときに備え、準備しておく
ことは必要です。
特に、会計システム改修などにおける
補助金なども2019年9月までというものもあり、
早めの情報収集が大切といえるでしょう。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。