「在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院」の流れを評価し、救急搬送や受け入れ負担の軽減を図るべき。―入院・外来医療分科会
「在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院」の流れを評価し、救急搬送や受け入れ負担の軽減を図るべき。―入院・外来医療分科会
8月10日に開催された診療報酬調査専門組織「
入院・外来医療等の調査・評価分科会」において、
「在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院という流れの患者」も、「救急搬送後に直接地域包括ケア病棟へ入院する患者」と同様に医療・看護の必要性が高く、医療資源投入量も多い。こうした患者の評価を高くして、救急搬送前の医療機関受診を促進することで、「救急搬送・救急受け入れ」の負担を減らすことが可能になる。
一部に短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟があり、在宅復帰率の向上、自宅等からの患者受け入れ割合の向上を容易に実現できている。地域包括ケア病棟の在宅復帰率計算などから短期滞在手術等基本料算定患者を除外するなどの工夫を行ってはどうか。
こういった議論が行われました。
在宅患者の状態悪化から外来受診、地域包括ケア病棟入院という流れの患者についてより高い評価を。
地域包括ケア病棟について、2024年度診療報酬改定に向けて「高齢の救急搬送患者受け入れをどう推進していくか」が重要事項となっています。
これまで、高齢の救急搬送患者について「急性期病棟で受ける際のインセンティブを縮小していく」「地域包括ケア病棟で受ける際のインセンティブを強化していく」といった議論が行われてきています。
8月10日の入院・外来医療分科会では「救急搬送患者」のみならず、「初診・再診後に入院する患者」についての分析も行われ、次のような状況が明らかにされました。
「在宅等で療養しているが具合が良くないが、救急搬送するほどではなく、医療機関の外来を受診する」→「診察の結果、入院加療が必要と判断される」といったケースで、このような患者について「救急搬送が必要となる手前において医療機関受診を促すことができれば、救急搬送・救急対応の負担を軽減することができるのではないか」と期待されています。
〇初診・再診後に入院する患者」でも、救急搬送患者と同じく誤嚥性肺炎や尿路感染症が多い
〇「初診や再診後に入院する患者」では、医療・看護などの必要性が「救急搬送後、直接、地域包括ケア病棟に入する患者」に近い(医療・看護などの必要性が高い)
外来受診後の地域包括ケア病棟入院患者は、救急搬送後の直入患者と同様の医療・看護状況にある
「初診や再診後に地域包括ケア病棟に直接入院する患者」の受け入れを適切に評価してはどうか、という意見も出されています。一方では「救急搬送後に直接入棟する患者や初診・再診後に入院する患者以外では、医療資源投入量が少ない。その点を勘案した評価を検討するべき」と逆の視点での意見も出た中で議論を行っています。
地域包括ケア病棟の在宅復帰率などから短期滞在手術等基本料算定患者を除外してはどうか
また、8月10日の入院・外来医療分科会には、地域包括ケア病棟における短期滞在手術等基本料3の算定状況も報告されました。
地域包括ケア病棟の多くでは「短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者」を受け入れていませんが、一部病棟では受け入れも行っており、中には「短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者割合が10%以上の病棟」もあります。
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟も一部にある
このような病棟(短期滞在手術等基本料3のみを算定する患者割合が10%以上の病棟)では、
・家庭から入院した患者割合が高い
・自宅等へ退院する患者割合が高い
・平均在院日数が短い
などという特徴があります。
短期滞在手術等基本料3は「一定の軽微な手術を2泊3日で治療する」ことを評価するものなので「在棟日数が短くなる」「自宅からの入院、自宅への退院が多くなる」ことは当然ですが、これは、短期滞在手術等基本料3を多く受け入れると、地域包括ケア病棟の施設基準を満たしやすくなります。(自宅等から入棟した患者割合要件、在宅復帰率要件等)
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟では、自宅等からの入院患者割合が高い
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟では、在宅復帰率が高い
短期滞在手術等基本料算定患者を多く受け入れる地域包括ケア病棟では、平均在院日数が短い
しかし、短期滞在手術等基本料3患者の受け入れが地域包括ケア病棟の本来の目的に合致しているのか改めて考えてみなければいけないかもしれません。。
急性期一般病棟においては「平均在院日数の計算に際して、短期滞在手術等基本料算定患者は除外する」「看護必要度の評価から短期滞在手術等基本料算定患者は除外する」などの対応が図られています。短期滞在手術等基本料算定患者では、本来の姿と異なる形で「在院日数の短縮」「看護必要度割合の上昇」が実現できているのが現実でしょうか。
地域包括ケア病棟の施設基準についても、こうした「短期滞在手術等基本料算定患者の除外」が検討されていく可能性もあります。
なお、ごく一部では、「短期滞在手術等基本料算定患者割合が50%以上」の地域包括ケア病棟もあるようです。
次回診療報酬改定のなかでは、
地域包括ケア病棟の要件や基準がより一層厳しくなることも想定しなければいけないのかもしれません。