病院と診療所の経営状況の差が明らかに
2020年度診療報酬改定にあたって
11月13日の中医協総会では
第22回医療経済実態調査の結果が
報告されました。
医療経済実態調査は、
病院、一般診療所、歯科診療所
および保険薬局における医業経営等の
実態を明らかにし、社会保険診療報酬
に関する基礎資料を整備することを
目的として実施されているものです。
調査対象時期は、17年度と18年度の
2事業年度になります。
■一般病院全体は赤字基調続くここでは一般病院の経営状況に
ついて、みていきます。
介護収益2%未満の一般病院全体では
17年度の損益差額はマイナス3.0%、
そして18年度はマイナス2.7%と
なりました。
0.3ポイント改善してはいますが
それでも赤字基調は継続しています。
しかし損益差額率を開設主体別にみると、
次のようなバラつきがあります。
医療法人:
2.6%→2.8%(0.2ポイント改善)
国立:
▲2.1%→▲2.3%(0.2ポイント悪化)
公立:
▲13.0%→▲13.2%(0.2ポイント悪化)
公的(日赤や済生会):
▲1.4%→▲0.3%(1.1ポイント改善)
社会保険関係法人(KKRなど):
▲1.2%→1.0%(2.2ポイント改善)
その他:
▲0.9%→▲0.4%(0.5ポイント改善)
これをみると、赤字基調ではありますが
国立・公立以外では経営状況は改善して
いるとみることができます。
■無床診療所の損益差額率、
プラスを維持 続いて、医科の一般診療所について
みていきましょう。
無床診療所全体では、
損益差額率は17年度が8.9%、
18年度が8.9%でプラスを
維持しています。
開設主体別でみると、
個人では17年度、18年度ともに
30.4%で横ばいです。
また医療法人は、17年度6.2%、
18年度は6.3%で0.1ポイント
改善されています。
また診療科別では、
医療法人が内科、外科、眼科、
皮膚科で改善し、
精神科や耳鼻咽喉科などでは
悪化しています。
総じて、
病院と診療所を比較すると
経営状況の差が明らかです。
この差を是正するために
病院と診療所の間で改定率に
差を設けるといった議論もあります。
こうした医療機関の経営状況は、
「診療報酬改定の改定率」にも
関係してきますので、
この調査結果が、どのような
見方がされるか注目したいところです。
詳細はこちらからどうぞ。
■第22回医療経済実態調査 報告https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/dl/22_houkoku_iryoukikan.pdf---------------------------------------
◆筆者プロフィール
---------------------------------------森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。