2021年3月スタート!オンライン資格確認の導入で何が変わる?

2021年3月より、医療保険の「オンライン資格確認」が開始されます。

■オンライン資格確認とは?

医療機関や薬局では、受付の際に患者が加入している医療保険を確認する必要があります。この作業を「資格確認」と呼びます。オンライン資格確認とは、この資格確認作業を、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認ができることをいいます。

■導入によるメリットは?


これまでの資格確認作業は、患者の健康保険証を受け取り、記号・番号・⽒名・⽣年⽉⽇・住所などを医療機関システムに入力する、というものでした。この方法では「入力の手間がかかる」「患者を待たせてしまう」などの難点がありました。資格確認をオンライン化することにより、こういった医事業務の簡素化に繋がるなどといったメリットがあるといえます。では具体的にはどんなメリットが考えられるでしょうか。

①保険証の入力の手間削減
今までは受付で健康保険証を受け取り、保険証記号番号、氏名、生年月日、住所等をレセコンに手入力する必要がありました。オンライン資格確認を導入いただければ、マイナンバーカードでは最新の保険資格を自動的に医療機関システムで取り込むことが可能となります。
また保険証でも、最小限の入力は必要ですが、有効であれば同様に資格情報を取り込むことができます。

②資格過誤によるレセプト返戻の作業削減
オンライン資格確認を導入いただければ、患者の保険資格がその場で確認できるようになるため、資格過誤によるレセプト返戻が減り、窓口業務を削減することができます。また再申請できないことによる未収金の削減にもつながる可能性があります。

③来院・来局前に事前確認できる一括照会
一括照会では、事前に予約されている患者等の保険資格が有効か、保険情報が変わっていないかを把握することができます。なお、確認した保険資格が資格喪失等により無効である場合、
受付時に資格確認を行う必要があります。

④限度額適用認定証等の連携
これまで限度額適用認定証等は患者が保険者へ必要となった際に申請を行わなければ、発行されませんでした。オンライン資格確認を導入いただければ、患者から保険者への申請がなくても、患者の同意を得た場合は限度額情報を取得でき、患者は限度額以上の医療費を窓口で支払う必要がなくなります。

⑤薬剤情報・特定健診情報の閲覧
オンライン資格確認を導入いただければ、患者の薬剤情報・特定健診情報を閲覧することができます。患者の意思をマイナンバーカードで確認した上で、有資格者等(薬剤情報は医師、歯科医師、薬剤師等。特定健診情報は医師、歯科医師等)が閲覧します。
また薬剤情報・特定健診情報の閲覧は、通常時は本人がマイナンバーカードによる本人確認をした上で同意した場合に限られますが、災害時は特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができなくても、薬剤情報・特定健診情報の閲覧ができることになっています。
ちなみに特定健診情報は2021年3月から、薬剤情報は2021年10月から閲覧可能となります。

■導入するためには?


医療機関や薬局がオンライン資格確認をはじめるためには、主に「資格確認機器」「資格確認端末」「顔認証付きカードリーダーソフト」などが必要になってきます。そこで国では、オンライン資格確認の導入に向けて医療情報化支援基金を創設し、医療機関・薬局のシステム整備の支援することを公表しています。

その一部ご紹介をすると、顔認証付きカードリーダーについては、病院には3台まで、クリニックや薬局には1台まで無償提供されるようです。

★医療機関や薬局への支援はこちらをご確認ください。↓
https://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000619625.pdf

■最後に


医療事務における資格情報の確認は、毎回入力しなければならず、医事業務における大きな負担となっています。また医療機関のクレームで最も多い内容である「待ち時間の長さ」についても、オンライン資格確認を導入することにより、短縮される可能性があります。これは患者満足度に直結しますので、大きなメリットといえます。

さらに、職員にとっても入力する時間が減るだけでなく、入力間違いや返戻業務の負担が減少するため、残業時間も減り、働き方改革につながるとも考えられます。

こういった点からも、オンライン資格確認は導入するメリットは十分にあると思われます。

より詳しい内容は、医療機関・薬局向け専用ポータルサイトが開設されていますので、ぜひそちらを一度ご覧いただくことをおすすめします。

★医療機関・薬局向け専用ポータルサイト
https://www.iryohokenjyoho-portalsite.jp/


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。