2020.10.29

初診からオンライン診療」の原則恒久化に向け検討開始!コロナ感染症をきっかけにオンライン診療の普及は進むのか?

新型コロナウイルス感染症の影響もあり、ここ数ヶ月注目が集まっている「オンライン診療」。臨時特例措置で初診患者の算定も可能となりましたが、今後は臨時特例措置でなく、恒久的な新たな診療体制の1つの形態とするといった方向性が政府より打ち出されました。これに対して医療側からは、安全性の観点から慎重に進めるべきとの意見も出ています。新型コロナウイルス感染症をきっかけに、今後オンライン診療は一気に広がりをみせるのでしょうか。今回はそのオンライン診療について取り上げたいと思います。


2020年度診療報酬改定でどう変わった?

最初に、2020年改定でオンライン診療がどのようなに改定されたのかを確認したいと思います。まずはオンライン診療料の事前対面診療に係る要件についてです。事前の対面診療の期間が「半年」から「3ヶ月」に緩和されました。

また算定要件と施設基準の部分について緊急時の対応に係る要件の見直しがありました。改定前は作成する診療計画の中に、「患者の急変時における対応等も記載する」との要件がありました。さらに施設基準において「緊急時の対応を行うにつき必要な体制が整備されていること」「緊急時に概ね30分以内に当該保険医療機関が対面による診察が可能な体制を有している」ということが求められていました。これがクリニックなどでオンライン診療料を届出るための高いハードルの1つとなっていました。

しかし改定により、施設基準から「緊急時に概ね30分以内」などが削除され、患者の急変時等の緊急時には、原則、当該医療機関が必要な対応を行うとし、「やむを得ず対応できない場合については、患者が速やかに受診できる医療機関において対面診療を行えるよう、事前に受診可能な医療機関を患者に説明した上で、当該計画の中に記載しておくこととして差し支えない」という文言に変わりました。

つまりは、夜間などの対応については病院などとの連携により対応できれば施設基準がクリアできることになります。これにより、これまでの超えるには高かったハードルが低くなったのです。さらには、対象疾患も拡大されました。このように改定前後で、オンライン診療料はより算定しやすくなったといえます。オンライン診療を普及させたい国のねらいが見て取れるのではないでしょうか。


新型コロナの時限的措置で初診から算定可能に

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、さまざまな項目で診療報酬の臨時的・特例的な取り扱いが通知されました。ご存知のとおりオンライン診療もその対象となりました。

オンライン診療に関しての1番のトピックスは、4月10日通知の「初診時も含めオンライン診療・電話診療の時限的容認」ではないでしょうか。これにより、これまで安全性などの観点からオンライン診療は「初診対面」を原則としていましたが、初診患者に対しても行えるようになりました。通常の初診料は「282点」に対して、オンライン診療の初診では「214点」が算定可能となりました。

また医薬品を処方した場合は「処方料」(42点)や「処方箋料」(68点)を算定でき、現在受診中の患者について別の症状で診療を実施した場合はこれまで通り「電話等再診」(73点)を算定することができます。

ここで注目したい点は、ビデオ通話機能などを有したいわゆるオンライン診療システムを使う必要はないということです。多くの医療機関や患者が活用できるように、電話やFAX、スカイプなどの通信手段による診療でも算定ができることとなりました。


「初診からオンライン診療」を原則恒久化に向け検討へ

こういった流れの中、10月9日の記者会見で田村厚生労働大臣は、初診患者からのオンライン診療を解禁とし、新型コロナウイルス感染症を踏まえた臨時特例措置でなく、恒久的な新たな診療体制の1つの形態とすることを明らかにしました(原則、映像伴うものを対象とする)。詳細な制度設計はこれからの検討事項としながらも、オンライン診療拡大の方向性は明確に打ち出されています。デジタル庁の創設など、菅新内閣では医療分野に限らず、いろいろな意味でデジタル化の流れが加速することが想定されます。


コロナ禍でオンライン診療は進んだのか?

国としては、オンライン診療を普及させたいねらいが見て取れるものの、実際の普及率はどうでしょうか。たとえば、板橋区医師会のアンケートによると、電話再診やオンライン診療を行っている施設は全体の51.5%で、残りの48.5%は電話再診もオンライン診療も行っていないとの調査結果があります。各団体でさまざまはアンケートや調査が実施されていますが、概ね同じような傾向を示しており、まだまだオンライン診療は定着していないことがうかがえます。

では、オンライン診療が定着しない要因は何でしょうか?定着するためには、いくつかのハードルを越えていく必要があると考えます。大きくわけて「診療面」と「経営面」に分類できるかと思います。

【診療面におけるハードル】
・「対面診療の補完的位置づけ」との認識が強い
・オンラインだけでは患者の状態を把握するのは困難(特に初診に関して)
・オンラインで診れる疾患が限定される など

【経営面におけるハードル】
・導入・運用コストがかかる
・診療報酬上の点数が対面より低く、費用対効果が不明確
・医療従事者や患者に対する操作方法の周知や浸透が難しい
・個人情報保護等の情報セキュリティが不安 など


まとめ

このようにオンライン診療を普及させるためには、いくつか超えなければならないハードルがあるように思います。今回は医療機関内での感染防止という観点から、オンライン診療の必要性が増しましたが、わが国ではまだまだ「医療は対面」という意識が医師側だけでなく患者側にも根強くあると思われます。オンライン診療の普及には患者の意識を変えていく必要もあるでしょう。

オンライン診療はあくまでも、医療サービスが必要な患者に適切に医療を届けられるようにするためのツールです。医療のフリーアクセスという観点からいえば、今回のような非常事態にも患者が速やかに受診できるように、平時から対面診療とオンライン診療をふつうに選択できるような状況が理想といえるのかもしれません。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。