2020.12.23

後期高齢者の窓口負担、1割から2割へ引き上げ決定

「全世代型社会保障改革の方針」が12月15日に閣議決定されました。
これまで政府は、昨年9月に全世代型社会保障検討会議を設置し、人生100年時代の到来を見据えながら、お年寄りだけではなく、子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで広く安心を支えていくため、年金、労働、医療、介護、少子化対策など、社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討してきました。今回はその最終報告がまとめられました。社会保障審議会・医療保険部会ではこれを受けて意見取りまとめに向けた最終議論を開始しています。


全世代型社会保障検討会議(以下「検討会議」という。)とは、全世代型社会保障制度の実現に向けた政府の司令塔となる新たな会議で、初会合が9月20日に開かれました。さらなる高齢化社会を見据え、給付と負担の見直しを含めた抜本的な改革の議論に踏み込めるのかが焦点となっていました。今回、12回の検討会議を経て最終報告がされました。
その中で医療機関にかかわる主な項目として、「後期高齢者(75歳以上)の医療費窓口負担の見直し」「紹介状なしで大病院を受診した場合の特別負担徴収義務のある病院の対象拡大および徴収額の引上げ」および「不妊治療への保険適用と現行助成対象の拡大」の3つが挙げられます。

今回はそのうち、「後期高齢者(75歳以上)の医療費窓口負担の見直し」について取り上げてみます。

■後期高齢者の窓口負担、1割から2割へ引き上げ

少子高齢化が進み、2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度にはすべてが後期高齢者となります。それにより後期高齢者支援金の急増が見込まれています。一方で若い世代については、貯蓄も少なく住居費・教育費等の他の支出の負担も大きいという事情があります。

これらを鑑みて、負担能力のある方に可能な範囲で負担し合うことにより、後期高齢者支援金の負担を軽減し、若い世代の保険料負担の上昇を少しでも減らしていくことが、今、最も重要な課題とされています。しかしそれにより、有病率の高い高齢者の必要な受診が抑制されるといった事態は生じないようにしなければなりません。

ですので、「後期高齢者の医療機関等窓口負担の引き上げ」については、一定以上の所得がある後期高齢者には「2割負担をお願いする」方向そのものは固まったものの、「一定以上の所得」をどのあたりで着地させるかが難しい議論となっていました。最終的には政治決着で『課税所得が28万円以上(所得上位30%)かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)の方については、医療費の窓口負担割合を1割から2割に引き上げる』ことになりました。


出典:第137回社会保障審議会医療保険部会 資料


■最大負担増を月3000円に収まるような配慮措置

施行時期は2022年度後半で政令により定めるとしています。また負担割合の引上げによる影響が大きい外来患者(長期頻回受診患者など)に関しては、施行後3年間の1ヶ月分の負担増を最大3,000円に収まるような経過措置を導入するとしています。



出典:第137回社会保障審議会医療保険部会 資料

これらの改正により後期高齢者支援金の抑制効果額は、2022年度時点で▲740億円、2025年時点で▲840億円と算出されています。


■最後に

今回の改正内容については、少子高齢化が急速に進む中、現役世代の負担上昇を抑えながら、全ての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継いでいくことをねらいとした取組みとなっています。財源の確保が困難になることが想定される現在の制度において、引き続き、医療保険財政の持続可能性を確保する策を検討すべきといえます。


---------------------------------------
◆筆者プロフィール
---------------------------------------
森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。