2021.02.03

医療機関に取り入れやすい?関係性マーケティングとは



関係性マーケティング(リレーションシップ・マーケティング)とは、改めて既存顧客との関係を深め、維持・深耕していこうとするマーケティングの考え方の1つです。既存顧客の満足度を上げ、いかに自社のファンになってもらい離反を減少させるかがポイントであり、現在のさまざまな業態のビジネスで重要視されています。

医療機関においてもこの考えはより重要性が増していると考えます。これまでは医療機関であれば少し傲慢な対応をしていても患者がきてくれていましたが、現代はそうではありません。医療機関もあらゆるステークホルダー(患者、職員、連携医療機関、介護施設、医療関連企業、地域住民など)から選ばれないといけません。

また今回のコロナ禍においても、柔軟に対応し健全な経営を実現できている医療機関は、前述のようなステークスホルダーとの関係性がうまくいっている施設が多いのではないでしょうか。

そういった点からも、医療機関が患者を代表とするステークホルダーとの関係性を深めていくことはますます重要といえるでしょう。そしてこの関係性マーケティングはビジネスとしての考え方ですが、医療機関にも取り入れやすい、受け入れやすい考え方ではないかと思うのです。

そこで今回は医療機関において、関係性マーケティングがなぜ必要なのか?その理由やメリットについて、あらためて考えてみたいと思います。

①口コミによる集患につながりやすい

あらゆるステークホルダーと、健全で友好な関係性を築いていると、良い口コミが拡がる可能性が高いです。これは患者だけでなく、取引業者や金融機関などへの対応も同じです。

よく患者への対応と取引業者への対応にかなり差がある医療機関がありますが、そういう光景をみかけるととても残念な気持ちになります。患者もそのようなところは感じるところがあると思いますし、取引業者の家族なども診察にかかる可能性もありますので、そのあたりは要注意です。

一般的に、サービスに対して平均的に満足している顧客は、「あそこのサービスは良かった」という経験を3人に話すとされています。実際の利用者からのお墨付きの口コミは効果が高く、集客に期待できるといえそうです。

②医療サービスの質の差異化を図れる

一般の方からすると、それぞれの医療機関が提供している診察や治療の質を見分けることは大変困難となります。そもそも病院とクリニックの役割の違い、病院であれば病床機能の違いなどを見分けて使い分けている人はどれだけいるでしょうか。

また質を価格で表現できればいいのですが、他の業種とは違って、医療サービスの中心は公定価格により決められています。有名なブランド病院やスーパー・ドクターがいる病院であれば質が高そうとイメージされやすいですが、多くの医療機関、特に中小病院はそれに当てはまらないと思われます。

そういった点を考えると、医療サービスの質の判断は、診察や治療内容というよりも、「医師が丁寧に診てくれる」「受付のスタッフの感じがいい」「定期的に役立つ情報を提供してくれる」といったものによる影響が大きいと考えられます。つまり、患者などとの関係性を深めることが、医療サービスの質の差異化につながるということになります。

③患者と良好な関係性を構築しやすい

そもそも論になりますが、医療機関は患者の個人情報(年齢、性別、住所、生年月日、疾病など)を扱います。そういった医療機関の特性から、患者は医療機関に対して最初から相当程度の信頼感をもっているといえます。さらに、疾病などに関する個人的な悩みを相談するわけですので、患者との関係性の構築は一般的な業態と比べると構築しやすいといえます。

いったん関係性が構築できれば、その患者はよっぽどの理由がない限り、その医療機関に継続して通院してくれます。その結果、医業経営という点からいうと、患者1人が最終的に医療機関にもたらす利益:LTV(Life Time Value:生涯顧客価値)が最大限に高められるという恩恵が享受できます。


このように医療機関において、関係性マーケティングという考え方は非常に重要ですし、取り入れやすい考え方だといえます。

たとえば近年、病院経営においては地域連携室の活動が重要視されていますが、地域連携室こそまさしく関係性マーケティングです。既存の連携先から更に紹介をもらうためにはどうするか?何を求められているか?という視点で連携先との関係性を深めていくわけですが、地域すべての医療機関と同じように連携できるわけではありません。過去の紹介件数や頻度、専門性、病床機能などを分析して、関係性を深める連携先を絞っていくことになります。まずは自院にあるデータを分析することから始まります。

クリニックの場合も同様です。関係性マーケティングを重要視するのであれば、まずは自院の来院患者の分析(通院回数、通院頻度、外来収入、疾病など)し、どの層の患者へアプローチするか、また通院をやめてしまっている患者がいればその理由は何か?などを把握することが大切になってきます。

コロナによる影響で、医療機関の経営は以前に増して厳しくなっているのは言うまでもありません。その中での新たな取組みという観点で、患者、職員、地域などあらゆるステークスホルダーとの関係性に着目してみてはいかがでしょうか。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。