2021.06.16

クリニック経営に欠かせない情報発信の効果とは

新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年以上が経過しました。医療業界も他の業界と同様に大きな影響を受けており、その影響はコロナ感染症患者を受け入れている病院だけでなく、クリニックも例外ではありません。 1年以上経過しても患者数が回復せず、残念ながら閉院されたクリニックや、閉院を検討しているクリニックもあるようです。

■将来の医療・介護ニーズ需要減を顕在化

新型コロナウイルス感染症による今の医療機関の状況は、将来の高齢者の人口減少による医療・介護ニーズ需要の減少を、前倒しで顕在化させたという見方があります。つまり、将来的には現在のような医療・介護ニーズ需要の中で、クリニック経営を成立させていく必要が出てくるということになります。

実際に、このような厳しい環境下においても、コロナ前と同等、あるいはそれ以上の患者さんを診ているクリニックも数多くあります。ある意味、クリニックの二極化が進んだとも考えられます。その差はいったい何でしょうか?

その差のひとつに「情報発信」の差があると考えています。

今回はそのクリニックにおける「情報発信」について、医療機関におけるマーケティングの基本概念に立ち戻って考えてみたいと思います。

■情報発信の効果とは

これからのクリニック経営において、情報発信の差は、これまで以上に大きな要素になると考えられます。情報発信というと、今の時代はホームページやSNSがパッと思い浮かびますが、それ以外にも看板や電柱広告、紙媒体での院内報など、さまざまなツールがあります。

では、これらの情報発信はどんな効果があるのか、マーケティング的な視点から深掘りしていきたいと思います。

消費者の行動モデルを表している「AISAS(アイサス)」というマーケティング用語があります。Attention(認知・注意)・Interest(興味・関心)・Search(検索)・Action(行動)・Share(共有)の頭文字を組み合わせた造語で、AISASの順番で消費者は意思決定プロセスを踏むと考えられています。

これをクリニックに当てはめてみた場合、つぎのようになります。



では、情報発信が上記のどのプロセスに影響するかというと、主には「①存在の認知」「②動機づけ」「③検索」になります。

①存在の認知
開業して最初の関門は、地域の患者さんなどにクリニックを知ってもらうことです。これはクリニックだけでなく、他の小売店も同様です。AISASの順番でわかるとおり、存在を知ってもらわなければつぎのプロセスには進んでいきません。ですので、開業最初は広告・宣伝の強化が必要となってきます。

看板や電柱広告などはまさしく存在の認知に役立ちます。その他にも、内覧会や患者さん向け勉強会などもクリニックの存在を知ってもらうにはとても有効的です。

②動機づけ
続いて動機づけです。クリニックの場合は「熱が出た」「怪我をした」など、クリニック側で仕掛けるというよりも、患者側で自然に発生し必要に迫られるケースがほとんどかと思います。

しかし、クリニックの中には患者さんに対して情報発信することで、潜在的な来院動機を掘り起こしているところもあります。その方法とは、メルマガやLineなどのプッシュ型による情報発信になります。

例えば、花粉症の時期であれば、花粉対策やアレルギー検査開始の情報を発信することで、来院する動機をさりげなく与える工夫をしているクリニックもあります。またコロナ禍であれば、受診控えを少しでも和らげるために、感染症対策をしっかりやっていることを適宜情報発信しているところもあります。

このようなプッシュ型の情報発信は、医療機関ではあまり必要とされていなかったかもしれません。しかしこれからの時代、クリニック側からのプッシュ型の情報発信が、集患に欠かせなくなってくるかもしれません。

③検索
検索というと最近ではインターネット内で行われることがほとんどです。ほとんどの患者さんがクリニックを探す場合には、ホームページや口コミサイト、ブログ、さらにはSNSなど、インターネット上で情報を集めます。

そういった患者さんの意思決定プロセスを考えると、ホームページをもつことは当然ですが、合わせて内容の充実も大切になってきます。さらにスマートフォンやタブレットの画面表示にも最適な作り方をすることが必要といえます。

■どの情報発信を強化していくか

仮に、自院の患者さんの来院状況を、このAISASモデルに照らし合わせて考えた場合に、どこのプロセスで患者さんが離脱している可能性があるでしょうか。もしくはさらに患者さんに来院してもらうためには、どのような情報発信が必要でしょうか。一度、AISASモデルに照らし合わせて考えてみてはいかがでしょうか。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。