2021.08.18

これから始まる外来機能報告制度はクリニック経営に活かせるか

2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が本格化してきています。入院に関してはこれまで同様に地域医療構想や働き方改革を推進するような内容が盛り込まれることが想定されます。また外来に関しては、「外来医療の機能分化」「かかりつけ医機能の推進」といった点が議論の中心になってくるだろうと思われます。その中で新たに始まる制度として、「外来機能報告制度」があります。今回はこの「外来機能報告制度」がクリニック経営にどのような関連があるか、一緒に考えていけたらと思います。


■外来機能報告制度とは
今年(2021年)5月に成立した改正医療法で「外来機能報告制度」が創設されました。この制度は、全国の病院が外来データを都道府県に報告し、そのデータを踏まえて、各地域で【『医療資源を重点的に活用する外来』を地域で基幹的に担う医療機関】(以下、紹介外来患者中心の医療機関)を明確にしていくものです

これにより、外来医療においても機能分化を進め、 『まずは「かかりつけ医」を受診し、そこから「高機能の病院外来」を紹介してもらう』という患者の流れを強化することにより、「病院勤務医の負担軽減」や「外来医療の質向上」などを目指す仕組みにすることが狙いです。




■クリニック経営への影響は
この制度はクリニック経営にとって、ひとつの機会(チャンス)と捉えることができます。この外来機能報告制度で「紹介外来患者中心の医療機関」に選定された病院は、今診療している比較的軽度の患者さんや治療後の患者さんなどの逆紹介(病院からクリニックへ紹介すること)を推進するはずです。つまり病院経営としては、そういった外来患者の受け皿となってくれるクリニックとの連携を積極的におこないたいはずです。ですので、そういった病院との連携を強化することで、外来患者の獲得につながる可能性は大いにあります。

■病院側の逆紹介が進まない理由
ただ実態として、病院からの逆紹介が進まないケースが往々にしてあります。その進まない要因としては、つぎの点が挙げられます。

①患者説明に時間と労力がかかる
②紹介先のクリニックの顔が見えない
③患者側の理解不足

①③については、クリニック側で対策を講じるのは難しいかもしれません。ただし①は、これから本格化する医師の働き方改革の推進などを理由に、病院側での対策も強化されることが想定されます。また③についても、今回の外来報告機能制度をはじめ、紹介状なし外来患者からの定額負担徴収義務の対象拡大や「上手な医療のかかり方」プロジェクトなど、国としてもさまざまな施策を講じてくるはずです。

一方で、②についてはクリニック側からのアプローチが可能です。自院で対応できる診療内容や患者層などを、病院側の医師や地域連携室に情報発信しておくことや、定期的に情報交換をする場を設けるなどさまざまな対策が考えられます。さらにホームページ上でも地域連携につながるような情報を充実させておくことも効果的かと思います。そのような形で顔がみえる連携を実践することが大切といえます。地域連携を重視しているクリニックでは、地域連携室を一部署として設けているところもあります。病院では地域連携室があるのはもはや当たり前ですが、これからはクリニックでも地域連携室があることが当たり前となる時代がくるかもしれません。これからのクリニック経営においては、地域連携はこれまで以上に重要性が増すキーワードになるといえるのではないでしょうか。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。