令和4年度診療報酬改定の基本方針、コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築へ

9月22日開催された社会保障審議会医療保険部会では、令和4年度診療報酬改定の基本方針の素案について厚労省から提示され、議論されました。同部会ではこの素案に対して概ねで了承する形となりました。今回はその「令和4年度診療報酬改定の基本方針(案)」についてお伝えしていきます。


■診療報酬改定の役割分担
診療報酬改定に向けた論議は、①改定の基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定、②その基本方針と改定率を受け、中央社会保険医療協議会で改定内容を議論するという役割分担のもと行われています。医療保険部会・医療部会では、7月末から基本方針策定に向けた論議が始まっており、9月22日の同部会では厚生労働省から【改定に当たっての基本認識】と【改定の基本的視点と具体的方向性】に関する素案が提示されました。


■前回改定の基本方針は?
ちなみ前回令和2年度診療報酬改定時における基本方針はつぎのようなものでした。

【改定に当たっての基本認識】
▶健康寿命の延伸、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」の実現
▶患者・国民に身近な医療の実現
▶どこに住んでいても適切な医療を安心して受けられる社会の実現、医師等の働き方改革の推進
▶社会保障制度の安定性・持続可能性の確保、経済・財政との調和

【改定の基本的視点と具体的方向性】
1.医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進【重点課題】
2.患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現
3.医療機能の分化・強化、連携と地域包括ケアシステムの推進
4.効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上

前回の特徴的なところは、重点課題として『医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進』が位置づけられたところかと思われます。それ以前の改定でも、チーム医療の促進や医療従事者の負担軽減などの文言として、医療従事者の働き方改革は基本方針に含まれてきましたが、これまでで最も注目されたのが前回の改定のように感じます。それだけ重要な取組み課題であることを示しているともいえます。


■令和4年度改定、コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築へ
そして令和4年度改定の素案として、以下のようが提示されました。

出典:社会保障審議会(医療保険部会)2021日9月22日資料


基本認識と基本的視点の両方に「新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築」が最も上位にくる形となっています。そして前回の改定で重点課題として位置づけられた「医療従事者の負担を軽減し、医師等の働き方改革の推進」が2番手にきています。2024年4月の医師の時間外労働の規制への対応など、医療機関にとって喫緊の課題といえます。


■おわりに
令和4年度も新型コロナウイルス対応と働き方改革、この2つが医療機関にとっては変わらず注目されるテーマとなりそうです。そこに対して診療報酬でどのような対応が図られていくのか、今後の改定の議論を見守っていく必要があるといえます。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。