2021.10.29

「医療資源を重点的に活用する外来」の絞り込みに向けた議論が本格化

外来医療の課題として、患者の医療機関の選択に当たり、外来機能の情報が十分得られず、また、患者にいわゆる大病院志向がある中、一部の医療機関に外来患者が集中し、患者の待ち時間や勤務医の外来負担等の課題が生じているとされています。さらに、これから迎える(地域によっては既に迎えている)人口減少や高齢化、外来医療の高度化等が進む中、かかりつけ医機能の強化とともに、外来機能の明確化・連携を進めていく必要とされています。その取り組みの1つとして議論されているのが、地域における「医療資源を重点的に活用する外来(仮称)」の明確化です。本稿では、その内容について一部ご紹介していきます。


■「医療資源を重点的に活用する外来(仮称)」とは
患者にいわゆる大病院志向がある中で、①日常行う診療はかかりつけ医機能を担う身近な医療機関で受ける、②必要に応じて紹介を受けて、患者自身の状態に合った他の医療機関を受診する、③さらに逆紹介によって身近な医療機関に戻る―このような流れをより円滑にすることが求められています。この流れを促進することで、病院での外来患者の待ち時間の短縮や勤務医の外来負担の軽減、医師働き方改革にも資することが期待されています。

しかし「患者が外来機能の情報を十分得られない」「患者のいわゆる大病院志向」などという課題があり、なかなか思うように進んでいないのが現状です。そこで今回、外来機能の明確化に向けた取組みとして掲げられた「医療資源を重点的に活用する外来(仮称)」に注目が集まっています。

「医療資源を重点的に活用する外来(仮称)」とは、かかりつけ医等からの紹介受診を原則とする外来であり、紹介状を持たずに受診した場合には特別負担徴収が義務化となります。

この外来を地域で担う医療機関を明確化することで、患者が最初にかかるべき医療機関の選択を分かりやすくし、かつ患者やその家族である国民の医療のかかり方に関する理解を促すきっかけになることが想定されます。







■外来報告機能制度の創設
そこで前回の医療法改正でつくられた仕組みが「外来報告機能制度」で、次のような内容が盛り込まれています。

○病床機能報告の対象となる病院又は診療所は、外来機能報告により、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」となる意向の有無などを報告しなければならない。
○無床診療所は、外来機能報告により、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」となる意向の有無などを報告することができる。
○都道府県は、地域の協議の場を設け、外来機能報告を踏まえ「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」などについて協議を行い、その結果を取りまとめ、公表する。

抜粋:「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」に関する改正医療法(令和3年5月改正)の規定

外来機能報告制度は、2022年度開始に向けて2021年内に意見取りまとめを行うスケジュールになっています。最初の外来機能報告に向けた国から各病院等へのデータ提出は2022年の秋ごろになると予想されており、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」が2023年3月までには全国で明確化される見通しです。

■具体的な基準の設定に向け議論へ
外来機能報告制度の2022年度開始に向けて議論が進められています。その中で、「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」の基準については、他の病院又は診療所から紹介された患者に対し医療を提供することとされている地域医療支援病院の状況を踏まえ、次の案が検討されています。

<基準案>
・初診の外来件数のうち「医療資源を重点的に活用する外来」の件数の占める割合: 初診●%以上
かつ
・再診の外来件数のうち「医療資源を重点的に活用する外来」の件数の占める割合: 再診●%以上


またここで言う「医療資源を重点的に活用する外来」とは、これまでの議論では

①医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来
②高額等の医療機器・設備を必要とする外来
③診療情報提供料Ⅰを算定した30日以内に別の医療機関を受診した場合、当該「別の医療機関」の外来


などが検討されていますが、まだ結論は出されていません(詳細は図表)。




また「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」や「医療資源を重点的に活用する外来」の呼称についても議論中であり、後者の呼称案に関しては「紹介患者を基本とする外来」「紹介による受診を基本とする外来」「紹介基本外来」などが挙げられています。いずれにせよ、国民が誤解や混乱をしないような分かりやすいネーミングが期待されます。

■地域性を踏まえた検討が不可欠という意見も
このように「医療資源を重点的に活用する外来」については、基準設定や呼称などについて議論がなされていますが、このような基準だけで一様に決めることは難しいとの意見も出ています。やはり医療提供体制や医療機能は、地域ごとに異なるため、地域ごとの議論を進める必要があるとの声や、地域によっては患者が行き場を失う可能性もあるなど慎重な声も聞かれます。

「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」の明確化に当たっての考え方としては、国の示す基準を参考にして、医療機関の意向に基づき、地域の協議の場で確認することにより、地域の実情を踏まえる仕組みとすることとしており、当該医療機関の意向に反して、強制的に「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」となることはないと示しており、今後どのように集約されていくのか注目が集まるところです。

対象となり得る医療機関としては、外来機能報告制度の開始にあたり、自院がどのような意向を表明するのか、今の段階から議論を重ねておく必要あるといえます。そのためには現在の外来機能をあらためて見直すことも大切です。外来の患者の多さは医師の業務負担増にもつながることになりますので、働き方改革の一環として自院の外来機能を見直してみてはいかがでしょうか。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。