コラム
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2022年度診療報酬改定議論も大詰め、外来医療の動向を整理

2022年度診療報酬改定に向けて、中央社会保険医療協議会・総会の議論もいよいよ大詰めを迎えようとしています。先月末に開かれた中医協総会において、診療報酬改定案の個別改定項目(短冊:点数なし)が公開されました。今回は外来医療に関する診療報酬改定の方向性と改定内容の一部をご紹介していきます。

■外来医療の役割を明確化
今回の改定では、外来医療の機能分化を推進するための内容が多く盛り込まれています。代表的な項目でいうと、まずは【紹介受診重点医療機関】の創設です。これにより紹介状なし患者からの特別負担の徴収義務の対象となる病院を、これまでの「特定機能病院」「一般病床200床以上の地域医療支援病院」に加えて、「一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関」も追加されることになりました。

紹介受診重点医療機関になるためには、国が示す一定の基準を満たす必要はありますが、基本は各病院による手上げ方式になります。これにより、地域の拠点となるような規模の病院は専門外来機能、小規模病院やクリニックはかかりつけ医機能を中心に役割分担していくことが加速されると思われます。紹介受診重点医療機関となった病院では、患者の逆紹介を推進していくことになりますので、患者を受けてくれるクリニックを求めています。クリニックからすると連携のチャンスといえるでしょう。


■外来在宅共同指導料の新設、外来から在宅へ移行を後押し
また連携という点における改定項目としては、【外来在宅共同指導料】の新設や【診療情報提供料(Ⅲ)】の見直しなどが挙げられます。

【外来在宅共同指導料】は、外来から在宅へ移行する患者にスムーズな医療提供が行われるよう、外来担当医と在宅担当医が共同して指導等を実施した場合の評価が新設されました。

また【診療情報提供料(Ⅲ)】も医療機関同士の連携促進を狙った項目となりますが、今回の改定で名称が「連携強化診療情報提供料」に変更されます。これまでは3月に1回の算定上限でしたが、改定による1人につき●●回と変更になります。おそらく医療機関同士の連携促進につながる方向に改定される見通しです。


■かかりつけ医機能の評価の見直し
今回の改定では、「かかりつけ医機能の評価」も重要論点となりました。具体的には、【地域包括診療料】等 の対象疾患に、慢性心不全及び慢性腎臓病が追加されました。その他にも、耳鼻咽喉科処置については、6歳未満小児に対する診療及び様々な処置の組合せを適切に評価する観点から【耳鼻咽喉科乳幼児処置加算】などの新設、さらに【機能強化加算】においては実績要件の追加などの見直しが行われる見込みです。


■オンライン初診料、「対面診療」と「時限的・特例的な対応」の中間程度が妥当
さらにもう1つ、外来医療に関する議論としてオンライン診療があります。オンライン診療に関しては、コロナ禍の時限的・特例的な対応により利用する件数が大幅に増加すると見込まれましたが、実態としてはそこまで伸びなかった感があります。その理由として、オンライン診療料の点数が対面診療よりも低いという点があります。

この点に関して、今回の議論では結論が出ず公益裁定となりました。1月26日の公益裁定では、【オンライン初診について「対面診療の点数水準」(288点)と「時限的・特例的な対応の点数水準」(214点)の中間程度の水準とする】ことや【オンライン診療に係る医学管理料の点数水準(現在は一律100点)についても、オンライン初診の対面診療に対する割合と整合的に設定】することが適当であるとされました。国としてはオンライン診療をこれまで以上に普及させたい意図がみてとれます。


このように今回の診療報酬改定では、【外来医療の機能分化】【連携促進】【かかりつけ医機能】【オンライン診療】など、外来医療に関する内容も豊富に盛り込まれています。特に外来医療の機能分化の流れは、2025年目前の2024年のダブル改定に向け、加速することが想定されます。医療制度改革において、これまである意味枠外であったクリニックにおいても今後はメスが入る可能性も大いに考えられます。

クリニック経営においては、医療制度改革だけに縛られる必要はありませんが、今どのような改革が行われていて、今後わが国はどのような絵を描いているのかを押さえておくことは必要なことといえるでしょう。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。