2022 年 6 月 21 日公開
骨太方針2022、新型コロナウイルス感染症対策・社会保障制度基盤の強化・医療介護DXの推進など
2023年度予算に向けた「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」が、6月7日に閣議決定されました。医療制度に関連する内容としては、【1】新型コロナウイルス感染症対策に対する医療提供体制の強化、【2】医療・介護提供体制などの社会保障制度基盤の強化、【3】医療・介護分野におけるDXなどの推進 -などについて触れられています。今回はその内容について一部ご紹介します。
【1】新型コロナウイルス感染症対策 については、必要な財政支援や見える化等により医療提供体制の強化を進めることで、一日も早い経済社会活動の正常化を目指すとしています。医療提供体制の強化については、具体的には以下の方向性が示されています。
① 法律に基づく要求・要請による公立公的病院に対するコロナ専用病床の整備、個別病院名を公開した病床の確保により入院体制の整備
② 感染拡大時に臨時医療施設等が円滑に稼働できるよう、都道府県ごとに医療人材派遣の協力可能な医療機関数や派遣者数を具体化
③ 医療DXを推進し、病床確保や使用率、オンライン診療実績など医療体制の稼働状況の徹底的な「見える化」の推進
④ ワクチン、検査、経口治療薬の普及 など
【2】医療・介護提供体制などの強化 については、今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築すべく、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めるとしています。
具体的には、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」「地域医療連携推進法人の有効活用」「都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想の推進」「医師の働き方改革」などを挙げています。
【3】医療・介護分野におけるDXなどの推進 についても強く言及されており、具体的には以下の項目が挙げられています。
・オンライン資格確認については2023年4月から導入を原則義務化
・2024年度中に保険証発行の選択制の導入、その後保険証の原則廃止を目指す
・「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化等」「診療報酬改定DX」を推進するため「医療DX推進本部(仮称)」を設置
・オンライン診療の活用促進とともにAIホスピタルの推進および実装に向けて取り組む
など
上記のほかにも、「がん専門医療人材の養成、がん対策推進基本計画の見直し、新たな治療法を患者に届ける取り組みの推進」「OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討等によるセルフメディケーションの推進」「2022年度診療報酬改定により導入されたリフィル処方箋の普及・定着のための仕組みの整備を実現」などの方向性が打ち出されています。
驚くような新たな項目は見受けられませんが、これまで議論されてきた内容がおおよそ盛り込まれた内容となっているといえるでしょう。
---------------------------------------
◆筆者プロフィール
---------------------------------------
森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。