延期された外来機能報告、紹介受診重点医療機関は2023年8月以降に明確化<コラムNo.96>
2021年5月に「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第49号)が成立・公布されました。これにより、外来機能報告制度が創設され、地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、地域においてデータに基づく議論を進めることとしています。外来機能報告制度は、病院及び有床診療所を対象(無床診療所は任意)として、2022年4月から施行されました。
報告様式としては、「紹介受診重点医療機関になる意向の有無」などを報告する様式1と、「医療資源を重点的に活用する外来の実施状況」などを報告する様式2の2種類あります。この報告について、一部レセプト情報の補正作業後に再度集計を行う必要が生じたため、報告期間の延期が行われていました。
今回2月3日に、厚生労働省は「外来機能報告の報告様式2のスケジュール等について」を事務連絡し、以下のような外来機能報告のスケジュールを新たに示しました。
(1)報告期間
様式1:2022年10月1日~2023年4月30日(予定)
様式2:2023年3月6日~2023年3月29日(予定)
(2)報告後のスケジュール
① 都道府県による確認期間
:2023年4月1日~2023年4月30日(予定)
② 紹介受診重点医療機関のとりまとめ等に向けた協議の場で活用するデータの国からの提供日(報告期間内に報告された電子データ)
:2023年5月中(予定)
③ 紹介受診重点医療機関のとりまとめ等に向けた協議の場で活用するデータの国からの提供日(報告された電子データ
:2023年6月中(予定)
④ 2022年度外来機能報告に係る協議の場の開催期間
:2023年5月~2023年7月(予定)
出典:厚生労働省 事務連絡「外来機能報告の報告様式2のスケジュール等について」より抜粋
紹介受診重点医療機関は、外来機能報告に基づき、地域の協議の場で都道府県が明確化することとなっています。当初のスケジュールでは、2022年度内に都道府県による紹介受診重点医療機関の公表が予定されていましたが、報告期間の延長を踏まえ、紹介受診重点医療機関が明確化されるのは、2023年8月以降になると想定されます。
また外来機能報告においては、毎年度、都道府県に「医療資源を重点的に活用する外来の実施状況」「紹介受診重点医療機関となる意向の有無」「地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要なその他の事項」を報告することが必要になってきます。
このうち「医療資源を重点的に活用する外来」には、①医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(手術前後30日間の外来)、②高額等の医療機器・設備を必要とする外来、③特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)—が該当することになります。
今回、2月13日に「『令和4年度外来機能報告制度に関するQ&A』について(その1)」が事務連絡され、上述の②の「高額等の医療機器・設備を必要とする外来」の中に「新型コロナウイルス感染症のPCR検査や抗原検査(抗原定量検査・抗原定性検査)」は含まれない-という考えを明らかにしました。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。