総合確保方針の改定案を大筋で了承、ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿もまとまる
■ポスト2025年に実現が期待される医療・介護提供体制の姿とは
厚生労働省の2月16日の医療介護総合確保促進会議は、次期医療計画や介護保険事業(支援)計画の策定のベースとなる「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(以下、総合確保方針とする)の改定案を大筋で了承しました。また「団塊の世代」が全て75歳以上となる2025年の後の医療・介護提供体制の構築に向けて、「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」が別添として新たに取りまとめられました。
総合確保方針は、各地域で医療や介護の提供体制を総合的に確保するための基本的な方向性を示すもので、都道府県による医療計画や、都道府県・市町村による介護保険事業(支援)計画の策定のベースとなる上位指針といえます。今回の取りまとめをもとに、年度内の告示改正となる見込みです。
総合確保方針の意義では、従来の「団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年に向け」に、「その後の生産年齢人口の減少加速等を見据え」との文言が付け加えられ、今後、医療・介護サービスの担い手や、社会保障費用を負担する人口が減少することを強調しています。
また基本的方向性として、①「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築②サービス提供人材の確保と働き方改革③限りある資源の効率的かつ効果的な活用④デジタル化・データヘルスの推進⑤地域共生社会の実現─の5つが挙げられました。
①「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築では、入院医療については、「2025年に向けて地域医療構想を推進し、その上で、その後の生産年齢人口の減少の加速等を見据え、更に医療機能の分化・連携を進めていくこと」、外来・在宅医療については、「外来機能報告制度を踏まえ、紹介受診重点医療機関の明確化を図るとともに、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うこと」が重要としています。
出典:第19回医療介護総合確保促進会議
「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」
②サービス提供人材の確保と働き方改革に関しては、医療・介護サービス提供人材確保と働き方改革を、地域医療構想と一体的に進めるべきとしています。医療従事者に関しては、働き方改革やタスク・シフト/シェア、チーム医療の推進、復職支援等を進めていくことが指摘しています。③限りある資源の効率的かつ効果的な活用では、医療・介護保険制度の持続可能性を高めるためにも、医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築、介護サービス事業者の経営の協働化・大規模化、ケアマネジメントの質の向上などを推進することが重要といった文言が盛り込まれました。④デジタル化・データヘルスの推進では、医療・介護DXを進め、患者・利用者自身の医療・介護情報の標準化、デジタル基盤を活用した情報の共有・活用など、⑤地域共生社会の実現では、医療・介護提供体制の整備において、地域の将来の姿を踏まえた「まちづくり」の一環として位置付ける視点を明確にしていくことも重要としました。
また別添の「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」では、「高齢者人口がピークを迎える中で、医療・介護の複合的ニーズを有する高齢者数が高止まりする一方、生産年齢人口の急減に直面する」という局面において、実現が期待される医療・介護提供体制の姿を描いています。具体的には、(1)医療・介護を提供する 主体の連携により、 必要なときに「治し、支える」医療や個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様な介護が地域で完結して受けられる こと、(2)地域に健康・医療・介護等に関して必要なときに相談できる専門職やその連携が確保され、さらにそれを自ら選ぶことができること、(3)健康・医療・介護情報に関する安全・安心の情報基盤が整備されることにより、自らの情報を基に、適切な医療・介護を効果的・効率的に受けることができること─の3つの柱の実現を掲げています。
ポスト2025年を展望すると、引き続き高齢化が進行する地域もあれば、高齢化がピークを越え、人口が急速に減少する地域もあり、医療・介護需要の動向は地域によって大きく異なります。これは東京のような大都市圏と中山間地域や離島の状況とを想起すれば明らかといえます。
このような点を踏まえ、医療・介護の確保については、地域を包括的にカバーする提供主体の活用や、オンライン診療などICT技術を活用して時間と場所を超えてサービスを提供することを可能にする形態の活用も図りつつ、必要な医療・介護サービスを確保することを前提に、戦略的に再編を図ることも意識しながら、地域ごとの取組を進めていく必要があるとしています。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。