コラム
COLUMN

「医療DXにより実現される社会」の共有、オンライン資格確認がその基盤-医療DX推進本部の初会合-

■医療DX推進本部の初会合開催
世界に先駆けて少子化等が進んでいる我が国において、特に国民一人一人の健康寿命の延伸、医療現場における業務効率化の促進、医療等の各種サービスの効率的、効果的な提供を行っていく上で、医療分野のデジタルトランスフォーメーション、医療DXの取組を進めていくことは非常に重要といえます。その旗振り役ともいえる医療DX推進本部の第1回目が2022年10月12日に開催されました。

医療DX推進本部は、内閣に設置された岸田内閣総理大臣を本部長とする部であり、医療DX推進に関連する施策の進捗状況等を共有・検証すること等を目的とされています。


■医療DXの3つの柱
医療DXに関しては、骨太方針2022にも盛り込まれている内容であり、その推進の背景の1つには、今般の新型コロナウイルス感染症流行への対応が挙げられます。今回の対応を踏まえ、平時からのデータ収集の迅速化や収集範囲の拡充、医療のデジタル化による業務効率化やデータ共有を通じた医療の「見える化」の推進等により、次の感染症危機において迅速に対応可能な体制を構築することが急務であるという課題が認識されました。近年、さまざまな業種でDX化が進んでいますが、今回の対応により、医療分野におけるDX化が非常に遅れていることが浮き彫りになったといえます。

これらの状況を改善するために、当面つぎの3つの柱を中心に進めていく方向性が示されています。具体的には、「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化等」「診療報酬改定DX」になります。


■医療DXにより実現される社会
第1回目の医療DX推進本部では、医療DXにより実現される社会の共有が図られました。

出典:医療DX推進本部(第1回 令和4年10月12日(水)) 資料4:医療DXにより実現される社会(厚生労働大臣提出資料)
具体的には、

①誕生から現在までの生涯にわたる保健医療データが自分自身で一元的に把握可能となることにより、個人の 健康増進に寄与

②本人同意の下で、全国の医療機関等が必要な診療情報を共有することにより、切れ目なく質の高い医療の受療が可能

③デジタル化による医療現場における業務の効率化、人材の有効活用

④保健医療データの二次利用による創薬、治験等の医薬産業やヘルスケア産業の振興


の4つになります。

③について補足すると、デジタル化による医療現場における業務効率化により、次の感染症危機において、必要な情報を迅速かつ確実に取得できるとともに、医療現場における情報入力等の負担の軽減が可能となります。また診療報酬改定に関する作業の効率化により、医療従事者のみならず、医療情報システムに関与する人材の有効活用、費用の低減を実現することで、医療保険制度全体の運営コストの削減が期待されています。


■オンライン資格確認が基盤、閲覧可能な項目も拡大
図表をみてもわかるとおり、医療DXの基盤となるものが、オンライン資格確認となります。2023年4月より医療機関・保険薬局にその導入が原則、義務付けされたのも、その重要性の高さからと推察されます。

また直近では、2022年9月より、オンライン資格確認等システムを通じて閲覧できる情報が、放射線治療・画像診断・病理診断・医学管理等といった診療行為などにも拡大されました。さらには、2023年5月をめどに、手術(移植・輸血含む)や短期滞在手術等基本料の閲覧も予定されています。

まだまだハード・ソフト面も含め、乗り越える課題は多いですが、今後の日本の状況を踏まえると、医療DXへの取組みは不可避と考えます。医療DX推進本部を筆頭に、よりよい形で医療DXが進んでいくことが期待されます。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

医療・介護制度改革の主な論点が固まる-全世代型社会保障構築会議-

<Point>
全世代型社会保障構築会議(2022年9月28日第7回)で、「子ども・子育て支援の充実」「医療・介護制度の改革」についての主な論点が明示された。



■今後の医療・介護制度の改革の主な論点

2022年9月28日第7回全世代型社会保障構築会議が開催されました。全世代型社会保障構築会議とは、全世代対応型の持続的な社会保障制度を構築する観点から、有識者らが集まり、社会保障全般の総合的な検討を行うためのものであり、2021年11月から継続的に開催されています。

今回の会議では、「子ども・子育て支援の充実」や「医療・介護制度の改革」における当面の論点が提示されており、今後厚生労働省に対し、審議会などで具体的な検討を進めるよう要請していく考えです。本稿では「医療・介護制度の改革」の論点を中心にみていきます。
 
2040 年を見据えると、高齢化への対応とあわせて、人口減少に対応した全世代型の社会保障制度を構築していくことが必要となります。特に 2025 年までに全ての団塊の世代が後期高齢者となる中で、制度的な対応が急務といえます。そこで負担能力に応じて、全ての世代で、増加する医療費を公平に支え合う仕組みを強化し、社会経済の変化に対応した医療・介護の提供体制を構築するための改革を実現するために、つぎの論点を検討していく方向性が固められました。


<医療・介護制度の改革についての主な論点>

出典:全世代型社会保障構築会議(第7回)資料


例えば、医療分野における医療保険関係では、原則42万円が支給されている「出産育児一時金」をめぐって、来年度から大幅に増額する方針が示されていますが、その場合の新たな財源についてはまだまだ議論が必要となっています。また医療提供体制関係では、2024年4月からの医師の時間外労働の規制(医師の働き方改革)が始まりますが、医療機関だけでなく行政も含め十分な対応ができているとはいえません。さらに外来医療の在り方については、外来機能報告制度が2022年から開始され、医療機関については報告期限が2022年11月30日とされています。

介護分野においては、具体的には2割負担の対象拡大やケアプランの自己負担導入などの検討が挙げられています。介護現場の関係者からは反発の声があがっているという声もあり、年末の最終決着までに解決しなければ課題は多くあると想定されます。

いずれにしても、。2022年以降、団塊の世代が75歳以上となり始め、更なる医療費の増大が見込まれています。またそれを支える現役世代の減少と負担の増大が懸念されています。今回の医療・介護制度改革の方向性は、これから先、国民皆保険を維持していくためのものであり、進めていかなければならない論点といえるのではないでしょうか。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

後期高齢者医療における窓口負担割合の見直しに伴う配慮措置

2022年10月以降は、75歳以上の人でも自己負担割合が1割から2割に変更されます。それに伴い、厚生労働省から「後期高齢者医療における窓口負担割合の見直しに伴う配慮措置に係る事務処理等について」が通知されました。


後期高齢者医療制度については、現役世代の負担上昇をできるだけ抑え、全世代型社会保障を推進する観点から、2022年10 月1日より、一定以上の所得を有する方の医療費の窓口負担割合を2割とするとともに、2割負担への変更により影響が大きい外来療養(訪問看護を含む。)を受けた方について、施行後3年間、高額療養費の枠組みを利用して、1ヶ月分の負担増が最大でも3,000 円に収まるような配慮措置を導入することが決定しています。


通知にはこの配慮措置に関して、配慮措置が適用される場合の計算方法やQ&Aなどが示されています。


■1割から2割負担へ
自己負担額が一部引き上げられる理由として、「高齢者増加に伴う医療費の増加」や「世代によって異なる費用負担の差」などが挙げられます。

ご存知のとおり日本は高齢化社会に突入したことに伴い、高齢者の増加により医療費負担も大きくなりつつあります。負担を和らげるための対策をとして、収入がある高齢者に対しては医療費の自己負担を2割に増やすといった対策が盛り込まれたといえます。

また世代によって異なる費用負担の差を懸念する声もあります。高齢者医療制度の対象外である65歳未満の人の場合、医療費の自己負担は3割です。後期高齢者の1割に比べると、かなり負担が大きいことがわかるでしょう。医療費負担の世代間格差を少しでも是正する目的から、後期高齢者の自己負担割合が見直されたといえます。


■負担増への配慮措置の仕組み
この一部高齢者の負担増については、一定の配慮措置が適用されます。内容としては、2022年10月1日から2025年9月30日までの間は、75歳以上の方等(※1)で2割負担となる方について、外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う1か月の負担増加額を3,000円までに抑えるものとなります。

具体的には、医療機関・施設窓口における医療費の支払いについて、1か月の負担増を3,000円までに抑えるための差額は、加入の後期高齢者医療広域連合から、全額、後日高額療養費として払い戻されるという仕組みです(下図参照)。

※1  65~74歳で一定の障害の状態にあると広域連合から認定を受けた方を含む。


また払い戻しに当たっては、払い戻し先となる高額療養費の口座は自身での登録が必要です。今回2割負担となる方で、払い戻し先の高額療養費の口座が登録されていない方には、各都道府県の後期高齢者医療広域連合や市区町村から申請書が郵送され、手続きを行う必要があります。さらに、医療費の還付を装った詐欺などへの注意も必要ということで、それに関して注意を呼び掛けています。


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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

看護師処遇改善の議論決着、10月から看護職員処遇改善評価料がスタート

政府の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の一環として看護職員の処遇改善についての議論が、これまで継続的に行われてきました。今回その議論の着地点として、「看護職員処遇改善評価料」が新設されました。

看護職員の処遇改善については、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、段階的に収入を3%程度引き上げることが示されていました。まずはその第1段階として、2022年2月から「看護職員等処遇改善事業」により、一定の役割を担う医療機関については2022年2月~ 9月の間で、国の補助金による収入の1%程度(月額4000円)の引上げが行われました。

今回はその第2段階として、診療報酬による2022年10月以降の看護職員の処遇改善ということで、「看護職員処遇改善評価料」が新設された形となります。また当該内容は、2022年度の診療報酬改定のプラス0.43%の改定率のうち、看護職員の処遇改善のための特例的な対応として盛り込まれていたプラス0.2%の部分になります。

基本的には、地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、施設基準に適合した届出を行った医療機関で、患者の入院基本料、特定入院料、短期滞在手術等基本料を算定している場合に、該当する点数が1日につき算定でき数区分および設定は図表1に示す通り、1~165まで細分化されており、評価料1の1点から評価料165の340点まで設定で、細分化した設定から各医療機関の看護職員の賃上げのための財源を、診療報酬により過不足なく配分する仕組みとなっています。厚生労働省で詳細を詰めた上で、10月からの施行となる予定です。



「令和4年度診療報酬改定の概要看護における処遇改善」(令和4年9月5日厚生労働省保険局医療課)より抜粋


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1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

2023年4月よりオンライン資格確認導入、原則義務化へ

8月10日の中央社会保険医療協議会・総会で答申が行われたものの1つにオンライン資格確認等システムの導入促進に向けたものがあります。

オンライン資格確認等システムの導入に関しては、政府の骨太方針2022でも言及されているとおり、来年度からすべての医療機関に対し、マイナンバーカードを用いた患者のオンライン資格確認ができる体制が求められています(例外規定あり)。そのために今回の議論では、「オンライン資格確認の導入の原則義務化」「電子的保健医療情報活用加算の廃止」「システム改修費の補助の見直し」が行われることになりました。

オンライン資格確認導入に関しては、マイナンバーカードを保険証として活用することにより、「医療機関・薬局の窓口で、患者の直近の資格情報等の確認ができ、期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や手入力による手間等による事務コストが削減」や、「マイナンバーカードを用いて本人確認を行うことで医療機関等において特定健診等の情報や薬剤情報を閲覧でき、より良い医療を受けられる(マイナポータルでの閲覧も可能)」といったことが期待されています。しかしその運用開始施設数は全体の26.1%と低く、特に医科・歯科診療所は20%を満たない状況となっています(図表)。

そこで今回、オンライン資格確認等システムの導入を促進するために、大きな見直しが行われることになりました。

まず1つ目に、2023年4月からオンライン資格確認導入の原則義務化があります。これに関しては、保険医療機関及び保険医療養担当規則に次の内容が盛り込まれることになりました。

① 保険医療機関等は、患者の受給資格を確認する際、患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認による確認を求めた場合は、オンライン資格確認によって受給資格の確認を行わなければならないこととする。
② 現在紙レセプトでの請求が認められている保険医療機関等については、オンライン資格確認導入の原則義務付けの例外とする。
③ 保険医療機関等(2.の保険医療機関等を除く。)は、患者がマイナンバーカードを健康保険証として利用するオンライン資格確認による確認を求めた場合に対応できるよう、あらかじめ必要な体制を整備しなければならないこととする。

これにより、原則、紙レセプトで運用している医療機関等以外は、2023年4月よりオンライン資格確認の義務化となります。

続いて2つ目に2022年10月より電子的保健医療情報活用加算が廃止されることが決定しました。この加算は、オンライン資格確認等システムを通じた患者情報等の活用した際に算定できる(初診の場合は7点)もので、2022年の診療報酬改定で新設されたものになります。しかし、この加算についてはオンライン資格確認を行わない場合も含めて患者負担が増えることがオンライン資格確認の普及にむしろ逆行するとの指摘がありました。
今回の見直しによる電子的保健医療情報活用加算が廃止され、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が新設されました(図表)。




具体的には、施設基準を満たした医療機関を患者が受診した場合、通常の保険証を利用した場合には加算1の「4点」が初診料に上乗せされるため、患者負担増は「12円」(3割の場合)となります。一方でマイナンバーカードを保険証利用とする場合には「加算2」の2点が上乗せされるため、患者負担増は「6円」にとどまることになります。これにより、マイナンバーカードの保険証利用の促進に寄与されることが期待されています。

最後にシステム改修費の補助に関しては、大型チェーン薬局以外の病院および診療所・薬局(大型チェーン薬局以外)に関して、つぎのような見直しが行われることになりました。
・病院は、補助率を「2分の1」を維持したまま、補助上限額を従前の「2倍」に引き上げ(1台の場合、事業額の2分の1(上限210.1万円)であったところ、事業額の2分の1(上限420.2万円)の補助)
・診療所や薬局(大型チェーン薬局以外)は、経営規模を踏まえ「実費補助」(これまでは4分の3の補助を全額補助へ)

今回の見直しにより、オンライン資格確認等システムの導入がどれだけ加速されるのか、今後の動向に注目されます。


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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

コロナ感染拡大における医療機関・保健所の負担軽減などに関する事務連絡

新型コロナウイルス感染症の感染拡大が急激に広がる中で、厚生労働省は7月22日に「オミクロン株のBA.5 系統への置き換わりを見据えた感染拡大に対応するための医療機関・保健所の負担軽減等について」の事務連絡を行いました。

項目としては、▼発生届出の簡略化▼健康視察の簡略化・迅速化▼濃厚接触者の特定・行動制限▼療養・待機期間終了時の取扱い▼療養証明書の発行▼自ら検査した結果の登録により療養を開始する仕組みの導入等――の6項目について記載されています。

今回はその中でも特に強調されている「濃厚接触者の特定・行動制限」と「自ら検査した結果の登録により療養を開始する仕組みの導入等」についてご紹介します。


■ハイリスク施設以外についても特定・行動制限を行うことは可

オミクロン株は感染・伝播性が高く、潜伏期間と発症間隔が短いため、感染が急拡大し、それに伴い濃厚接触者が急増することから、その全てに一律に対応を行うことは、保健所機能や社会経済活動への影響が非常に大きくなっています。このため、濃厚接触者の特定・行動制限はハイリスク施設に集中化することとし、同一世帯内以外の事業所等については、濃厚接触者の特定・行動制限は行う必要がないことを改めて徹底することを明示しました。

またその際には、濃厚接触者の特定に当たっては、一律に聴取り等を行う必要はなく、同一世帯内の全ての同居者が濃厚接触者となる旨を感染者に送付するメッセージにその旨を盛り込み周知する等の方法により感染者に伝達すること等をもって濃厚接触者として特定したこととすることは可能であるとしました。

なお、地域の感染状況等を勘案して、クラスターが確認された場合等自治体が濃厚接触者の特定・行動制限について、感染拡大の防止のために必要と判断する場合に、ハイリスク施設以外についても特定・行動制限を行うことは可能である旨を明示しました。


■外来の逼迫回避に向け自ら検査した結果による療養開始の導入など

発熱や呼吸症状のある患者等が診療・検査医療機関の外来に殺到している状況を回避するために、自らが検査した結果を都道府県等が設置し医師を配置する健康フォローアップセンター等に登録し、外来受診を経ることなく迅速に療養に繋げる仕組みを導入することも有効である旨を明示しました。

また既にこうした仕組みを導入している自治体においては、様々な取組が行われており、その実施事例などを列挙し、これらのうち都道府県等で必要な取組を組み合わせて導入する等の対応の検討を要請しました。




具体的な実施事例としては、つぎのとおりです。

【1】自ら検査した結果を既存の自治体のWEB 申請フォーム等オンラインを通じて提出・陽性者を把握
※ 自ら実施する抗原定性検査キットによる検査以外に無料検査センター等での検査結果を登録し、電話又はオンラインで診察する方法をとる事例もある。

【2】申請された基礎情報(氏名・生年月日等)や自ら検査した結果を医師以外の者が電話や画像等で確認

【3】あらかじめ聴き取った基礎情報等の情報をもとに、医師の管理下で発生届を作成

【4】健康フォローアップセンター等の医師は、自治体の医師(保健所長や健康フォローアップセンター等に配置されている医師)に加えて、地域の医師会と連携して、当番制で実施
※ 自治体の健康フォローアップセンター等の医師が薬の処方を行っている事例もある。

【5】検査結果を登録後、My HER-SYS を利用しない方も含めて、登録情報から自動的に作成される療養開始の証明をオンラインで交付

このような仕組みを導入することで、医療機関などの負担軽減にもつながります。こ通知を受けて自治体などでどのような対応が行われるか、今後の取り組みにも注目が集まります。


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第8次医療計画、「外来医療の提供体制」についての議論スタート

外来医療計画とは、医療法に規定する、医療計画における「外来医療に係る医療提供体制の確保に関する事項」を定めたもので、

①外来医師偏在指数を踏まえた外来医療に係る医療提供体制の状況
②外来機能報告を踏まえた紹介受診重点医療機関
③外来医療に係る病院及び診療所の機能の分化及び連携の推進
④複数の医師が連携して行う診療の推進
⑤医療提供施設の建物の全部又は一部、設備、器械および器具の効率的な活用

等の事項について規定しています。


このうち、外来医療に係る地域の医療資源についてとして、「人材配置(上記①④関連)」、「医療機器の効率的な活用(上記⑤関連)」について、6月15日に開催された第9回第8次医療計画等に関する検討会で議論されました。


外来医療需要、約65%の二次医療圏で既に減少傾向


外来医療については、「無床診療所の開設状況が都市部に偏っている」「診療所における診療科の専門分化が進んでいる」「救急医療提供体制の構築等の医療機関間の連携の取組が個々の医療機関の自主的な取組に委ねられている」等の状況にあり、そこへの対応が課題となっています。

外来医療需要については、福島県の二次医療圏を除く329二次医療圏の中のうち、214二次医療圏(約65%)が2020年までに外来患者数のピークを迎えており、既に減少局面にある医療圏が多くなっています。一方で、在宅患者数は多くの地域で今後増加し2040年以降に203の二次医療圏でピークを迎えることが見込まれます。同様に救急搬送件数も、多くの地域で今後増加し、2030 年以降に202の二次医療圏において救急搬送件数のピークを迎え、全体では2035年にピークを迎える見込みです。

このような状況から、診療所においては、在宅患者数や救急搬送件数等の増加への対応や、新型コロナウイルス感染症への対応の経験から、発熱外来、自宅療養者への診療等に係る体制の強化が求められており、今後は訪問診療、初期救急医療、公衆衛生対応等の地域が必要とする医療機能を担うことが重要としています。その一方で、新規開業希望者への情報提供や不足する医療機能を担うことの要請が、外来医師多数区域が存在する都道府県においても、必ずしも十分になされていないことが報告されています。

今後の外来医療提供体制を考えるうえで、

〇外来患者数の減少が想定されている中、次期外来医療計画における二次医療圏毎の人口推計や外来患者数推計等を踏まえた計画の策定

〇地域が必要とする医療機能を担う等の外来医師偏在対策の取組が必ずしも十分になされていない中、外来医師偏在指標を含む対策の在り方や実効性の確保


について、どのように考えるかが論点となっています。



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1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

外来医療の機能の明確化・連携に向けて
~「紹介受診重点医療機関」が2023年4月から、「外来機能報告制度」は今年度からスタート~

地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため、「外来機能報告制度」が今年度からスタートします。「外来機能報告制度」による報告を踏まえて「地域の協議の場」で必要な協議を行い、2023年4月から「紹介受診重点医療機関」を明確化していきます。「外来機能報告制度」、「紹介受診重点医療機関」のあらましをみていきましょう。


紹介受診重点医療機関の概要

地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため、医療法に規定された「外来機能報告制度」が2022 年4月1日に施行されました 。

具体的には 、

①対象医療機関が都道府県に対して、外来医療の実施状況を報告(外来機能報告)する
②当該報告を踏まえて、「地域の協議の場」において、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行う
③この中で、「医療資源を重点的に活用する外来」を地域で基幹的に担う医療機関として、「紹介受診重点医療機関」を明確化する

という流れです。

 この背景には、患者が医療機関を選択するにあたり、外来機能の情報が十分得られず、また、患者にいわゆる大病院志向がある中で、一部の医療機関に外来患者が集中し、患者の待ち時間や勤務医の外来負担等の課題が生じていることなどがあります。「紹介受診重点医療機関」の明確化については手挙げ方式で、地域医療構想調整会議などを活用して地域の協議の場を設け、

① 医療機関の意向
② 医療資源を重点的に活用する外来の実施割合【初診基準:40%以上、かつ、再診基準:25%以上】(国の基準)
③ 紹介率及び逆紹介率【紹介率:50%以上、かつ、逆紹介率:40%以上】(参考指標)

をもとに地域で協議し、協議が整った医療機関を都道府県が公表します。2022年度の診療報酬改定では外来機能の明確化及び医療機関間の連携を推進する観点から、紹介状なしで受診した患者等から定額負担を徴収する責務がある医療機関の対象範囲が見直され、「紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る)」が対象に追加されました。また、定額負担の額も医科初診では7,000 円、医科再診では3,000円と増額されました。

さらに「紹介受診重点医療機関」においては、勤務医の外来負担の軽減等が推進され、入院医療の質が向上することを踏まえ、入院医療における新たな評価として、紹介受診重点医療機関入院診療加算:800点(入 図表2 外来機能報告の年間スケジュール(2022年度)院初日)が新設されました。

その他にも、外来医療の機能分化及び医療機関間の連携を推進する観点から、算定上限回数や名称が見直された連携強化診療情報提供料(改定前は診療情報提供料(Ⅲ))では、対象患者として「紹介受診重点医療機関において、 200 床未満の病院又は診療所から紹介された患者」が追加されました。これにより、紹介受診重点医療機関が、地域の診療所等から紹介された患者について診療情報を提供した場合に、月1回150点が算定できます。


NDBデータを活用した「外来機能報告制度」も今年度から開始に

「外来機能報告の対象は、 病床機能報告対象病院等であって外来医療を提供するものとされています。具体的には、病院又は診療所であって療養病床又は一般病床を有するものになります。また無床診療所についても、任意で外来機能報告を行えるとしています。

外来機能報告の2022年度におけるスケジュールを以下に示します。



外来機能報告における報告項目は大きく以下の3項目に分かれています。

① 医療資源を重点的に活用する外来の実施状況の概況
② 「医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関」となる意向の有無
③ 地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要なその他の事項

外来機能報告は、病床機能報告と一体的に報告を行なうとしており、2022 年度以降の具体的なスケジュールとしては、4月から昨年度のNDB データの抽出と集計を行い、10 ~ 11月に対象医療機関からの報告を受け、2023 年1 ~ 3 月にかけ地域の協議の場(地域医療構想調整会議など)で話し合われる予定です。なお、2022年度については、原則として、都道府県において、2023年3月までに紹介受診重点医療機関を公表するとしています。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

骨太方針2022、新型コロナウイルス感染症対策・社会保障制度基盤の強化・医療介護DXの推進など

2023年度予算に向けた「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太方針2022)」が、6月7日に閣議決定されました。医療制度に関連する内容としては、【1】新型コロナウイルス感染症対策に対する医療提供体制の強化、【2】医療・介護提供体制などの社会保障制度基盤の強化、【3】医療・介護分野におけるDXなどの推進-などについて触れられています。今回はその内容について一部ご紹介します。


【1】新型コロナウイルス感染症対策については、必要な財政支援や見える化等により医療提供体制の強化を進めることで、一日も早い経済社会活動の正常化を目指すとしています。医療提供体制の強化については、具体的には以下の方向性が示されています。

① 法律に基づく要求・要請による公立公的病院に対するコロナ専用病床の整備、個別病院名を公開した病床の確保により入院体制の整備
② 感染拡大時に臨時医療施設等が円滑に稼働できるよう、都道府県ごとに医療人材派遣の協力可能な医療機関数や派遣者数を具体化
③ 医療DXを推進し、病床確保や使用率、オンライン診療実績など医療体制の稼働状況の徹底的な「見える化」の推進
④ ワクチン、検査、経口治療薬の普及 など


【2】医療・介護提供体制などの強化については、今後の医療ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題を踏まえ、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築すべく、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めるとしています。

具体的には、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」「地域医療連携推進法人の有効活用」「都道府県の責務の明確化等に関し必要な法制上の措置を含め地域医療構想の推進」「医師の働き方改革」などを挙げています。


【3】医療・介護分野におけるDXなどの推進についても強く言及されており、具体的には以下の項目が挙げられています。
・オンライン資格確認については2023年4月から導入を原則義務化
・2024年度中に保険証発行の選択制の導入、その後保険証の原則廃止を目指す
・「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化等」「診療報酬改定DX」を推進するため「医療DX推進本部(仮称)」を設置
・オンライン診療の活用促進とともにAIホスピタルの推進および実装に向けて取り組む
など

上記のほかにも、「がん専門医療人材の養成、がん対策推進基本計画の見直し、新たな治療法を患者に届ける取り組みの推進」「OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討等によるセルフメディケーションの推進」「2022年度診療報酬改定により導入されたリフィル処方箋の普及・定着のための仕組みの整備を実現」などの方向性が打ち出されています。


驚くような新たな項目は見受けられませんが、これまで議論されてきた内容がおおよそ盛り込まれた内容となっているといえるでしょう。





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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

医師の働き方改革、時間外960時間超の病院で宿日直許可済みは約3割

医師の働き方改革について、2024年4月からの医師の時間外労働時間の上限規制等の適用開始に向け、都道府県及び医療機関における準備状況の調査が行われました。2022年6月3日の社会保障審議会医療部会では、その結果報告が行われました。2024年4月以降の時間外・休日労働時間が年960時間超の医師が存在すると回答した529病院のうち、宿日直許可を得ているのは168病院(32%)、「申請する予定もない」は87病院(16%)存在する状況が明らかになりました。この結果から、医師の働き方改革が思った以上に進んでいない現状がうかがえます。今回はその調査結果について、一部をご紹介します。


■働き方改革による医療提供体制への影響把握は6都道府県
今回の調査は、地域内の医療機関の、施行に向けた準備状況を把握する体制(都道府県における医師の充足状況の把握方法や医師確保のための検討の場の設置状況等)と、地域内の各医療機関の対応方針が地域医療提供体制に与える影響をどのように評価しているかを調査するため、都道府県に対しても行われました。調査項目としては、つぎの4点です。

・地域内の医療機関の施行に向けた準備状況を把握する体制
・医療機関に対する支援の体制
・管内で想定される医師派遣の中止による地域医療提供体制への影響の有無(診療科・地域ごと)
・影響がある場合、生じうる影響の詳細(医療圏、診療領域ごと)

調査結果としては、医師の働き方改革による医療提供体制への影響の把握に関する取組を行っていると回答した都道府県は6都道府県(13%)で、今後行う予定の都道府県を含めると28都道府県(60%)となりました。また小児・周産期・救急医療提供体制への医師の働き方改革の影響が把握できていないと回答した都道府県は40都道府県(85%)と、対応が追い付いていない状況がうかがえます。


■約40%の病院が時間外・休日労働時間の把握済み
また病院に対しては、全ての病院を対象に「院内の医師の労働時間の状況」「宿日直許可の申請・取得状況」「特例水準の指定取得の意向の有無」の調査が行われ、特に、医師派遣を行う病院に対しては、「医師派遣の中止の意向の有無」「医師派遣を中止する場合の診療科」「派遣する医師派遣の詳細(人数等)」の調査が行われました。

時間外・休日労働時間の把握状況に関しては、回答のあった3,613病院のうち、副業・兼業先も含めた時間外・休日労働時間を概ね把握していると回答した病院は1,399病院(39%)と、まだまだ進んでいないことがわかります。また大学病院の本院82病院のうちでは20病院(24%)にとどまっています。



■時間外960時間超の病院で宿日直許可済みは約30%
続いて、宿日直許可の申請・許可状況については、2024年4月以降の時間外・休日労働時間が960時間を超える医師がいる見込みがあると回答した529病院(うち大学病院の本院は69病院)のうち、

• 宿日直許可を得ている病院は168病院(32%)で、そのうち大学病院の本院は46病院(67%)
• 宿日直許可を申請予定だが申請していない病院は234病院(44%)で、そのうち大学病院の本院は12病院(17%)
• 宿日直許可を申請したが許可が得られなかった病院は40病院(8%)で、そのうち大学病院の本院は3病院(4%)

という結果となりました。



2024年4月の医師の働き方改革がスタートまで、残すところあと2年をきりました。今回の調査結果を踏まえて、コロナ対応や診療報酬改定などに追われる各病院における医師の働き方改革の進捗をどのように評価すべきか、今後の議論に注目があつまります。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。