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「1人当たり医療費格差」市町村国保で1.37倍、後期高齢者で1.50倍。ベッド数・在院日数の適正化が今後より強く求められるか -「医療費の地域差分析(2021年度)」厚労省-

「1人当たり医療費格差」市町村国保で1.37倍、後期高齢者で1.50倍。ベッド数・在院日数の適正化が今後より強く求められるか -「医療費の地域差分析(2021年度)」厚労省-

厚生労働省は6月30日に2021年度の「医療費の地域差分析」(電算処理分)を公表し、
2021年度の1人当たり医療費(電算処理分)を見る限り、市町村国保では最高の佐賀県と最低の茨城県との間に1.37倍の、後期高齢者医療では同じく最高の福岡県と最低の岩手県との間に1.50倍の格差がある。
このような状況を明らかにしました。

地域差の原因を探ると、医療費の高い地域では「高い頻度で、長期間入院している」ことが再確認できました。「ベッド数が過剰などために、不要な入院延伸がなされていないか」などを確認し、各地域で、医療費の地域差是正に努めることが重要と考えられます。

昨年度(2022年度)から、いわゆる団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上となることから、今後、急速に医療費が増加していきます。その後、2040年度にかけて高齢者「数」は大きく変わらないものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していきます。「少なくなる一方の支え手」で「増加し続ける高齢者」を支えなければならないことから、公的医療保険制度の基盤は極めて脆くなっていきます。

こうした状況の中では、「医療費の伸びを我々国民の負担できる水準に抑える」(医療費適正化)ことが必要不可欠であり、医療費適正化に向けては、「1人当たり医療費の地域格差を是正していく」ことが重要方策の1つとなります。

このためには、まず「医療費の地域差がどの程度あり、その要因はどこにあるのか」を明らかにする必要があります。ただし、医療費は「地域の人口構成に大きな影響を受け」ます。高齢者が多い地域では必然的に医療費が高くなり、人口数で除した1人当たり医療費も高くなりますが、これを「遺憾である」と考えることはできません。

そこで「1人当たり医療費の地域差」を分析するにあたっては、「地域ごとの年齢構成(高齢者割合など)の差」を補正・調整することが重要です(年齢構成を揃える形で補正する)。本稿では主に、補正・調整を行った「1人当たり年齢調整後医療費」を、市町村国保(74歳まで)と後期高齢者医療制度(75歳以上)に分けて見ていきます。なお、今回は「電算処理分」のみを集計対象としています。

まず市町村国保の「1人当たり年齢調整後医療費」を見てみると、2021年度は全国平均で38万300円。都道府県別に見ると、最高は佐賀県の46万1579円(全国平均の1.214倍)。次いで鹿児島県:45万6302円(同1.20倍)大分県:44万1912円(同1.162倍)と続きます。

逆に最も低いのは茨城県 33万5129円(全国平均の0.881倍)で、埼玉県:34万9452円(同0.919倍)愛知県:35万1001円(同0.923倍)と続きます。

最高の高知県と最低の新潟都の間には12万6450円・1.37倍の開きがあります。
医療費の地域差を、日本地図を色分けした医療費マップで見てみると、依然として「西日本で高く、東日本で低い」(西高東低)傾向が継続していることを確認できます。

「1人当たり医療費格差」市町村国保で1.37倍、後期高齢者で1.50倍。ベッド数・在院日数の適正化が今後より強く求められるか -「医療費の地域差分析(2021年度)」厚労省-

「過剰病床を埋めるための不適切な入院延伸」を解消し、入院医療費の地域差是正を
では、こうした1人当たり医療費の「地域差」はなぜ生じるのでしょう。この原因を探るには、医療費を次の3要素に分解することが有用です。

(要素1)1日当たり医療費
いわば「単価」
→単価の高低の評価は容易ではありませんが、例えば「不必要な検査をしていないか」「後発医薬品の使用は進んでいるか」などを考えるヒントになります

(要素2)1件当たり日数
一連の治療について、入院ではどれだけの日数がかかり、外来では何回(=日数)医療機関にかかるのか
→例えば、同じ疾病、同じ重症度の患者間で入院日数が大きく異なれば、「退院支援がうまく機能しているのか」などを考えるヒントになります

(要素3)受診率
どれだけの頻度で医療機関にかかるのか
→例えば「頻回受診、重複受診がないか」などを考えるヒントになります



市町村国保医療費の地域差において「入院」「入院外」「歯科」それぞれの影響度合いを見ると、「入院」の影響が大きいことが分かります。そこで入院医療を上述の3要素に分解して「地域差には、どの要素が影響しているのか」(寄与度)を見てみましょう。
入院医療費の高い地域(佐賀県、鹿児島県、大分県など)では、▼「受診率」と「1件当たり日数」が医療費を高める方向に寄与している▼「1日当たり医療費」は医療費を低くする方向に寄与している―傾向があることが分かります(従前と同じ傾向)。一方、入院医療費の小さな地域(愛知県、茨城県、埼玉県など)では、「『受診率』が医療費を低くする方向に寄与している」ことが分かります(やはり従前と同じ傾向)。
これらを総合すると、▼1人当たり医療費の高い地域では、高い頻度で入院し、かつ濃度の薄い医療を長期間受けている▼1人当たり医療費の低い地域では、入院の頻度が低く、かつ高濃度の医療を短期間受けている―ことが推定されます。

つまり医療費の地域差を解消するためには、▼不適切な入院(例えば入院の必要性がない患者を入院させる社会的入院など)が生じていないか▼不適切な在院日数の延伸(例えば病床稼働率を維持するために、退院可能な患者を退院させないなど)が生じていないか—を十分に確認する必要があります。とくに1人当たり医療費の高い地域では、この点の確認・是正が極めて重要です。

さらに、こうした「頻度の高い、期間の長い入院」の背景には「病床数」が大きく関係している点にも留意が必要です(関連記事はこちら、医療費の地域差と病床数との間には、極めて大きな相関がある)。端的に「空き病床を埋めるために、不適切に入院期間を延伸し、結果、医療費が増加してしまう」可能性が考えられるのです。さらに不適切な入院期間の延伸は「院内感染リスクの上昇」「ADL低下リスクの上昇(つまり寝たきりの誘発)」「患者のQOL低下」などの悪影響も招きます。まず「地域の医療ニーズにマッチする病床数になっているか、過剰な病床数整備がなされていないか」を地域ごとに確認し、適正な数に是正していくことが求められるでしょう。

後期高齢者、1人当たり医療費トップ福岡県、最も低い岩手県の1.50倍
次に後期高齢者医療の「1人当たり年齢調整後医療費」を見てみると、2021年度は全国平均で91万819円でした。都道府県別に見ると、最高は福岡県の109万6386円(全国平均の1.204倍)。次いで▼高知県:109万3139円(同1.20倍)▼鹿児島県:107万1324円(同1.176倍)―と続いています。

逆に最も低いのは岩手県の73万2048円(全国平均の0.804倍)で、▼新潟県:73万2787円(同0.805倍)▼青森県:76万2347円(同0.837倍)―と続きます。

最高の高知県と最低の新潟県の間には36万4338円・1.50倍の開きがあります。
後期高齢者の入院医療費について、市町村国保医療費と同様に▼1日当たり医療費▼1件当たり日数▼受診率—の3要素に分解した寄与度を見てみると、入院医療と同様に▼「1日当たり医療費」と「1件当たり日数」は、医療費の高い地域では「医療費を低くする」方向に、医療費の低い地域では「医療費を高める」方向に寄与している▼「受診率」は、医療費の高い地域では「医療費を高める」方向に、医療費の低い地域では「医療費を低くする」方向に寄与している―ことが分かります。
やはり、1人当たり医療費の高い地域では、高い頻度で入院し、かつ濃度の薄い医療を長期間受けていると推定され、「不適切な社会的入院」や「不適切な在院日数の延伸」がないかを見ていく必要があります。

高齢化がますます進行する中では、後期高齢者医療費の適正化(ここでは1人当たり医療費の地域差縮小)に努める必要性が極めて大きく、「病院の病床が介護施設代わりに使用されていないか」などをしっかりと確認し、必要な是正を行っていくことが重要であると考えられます。

骨太方針2023を閣議決定、医療提供体制改革・医療DX推進などの方向性を明示

骨太方針2023を閣議決定、医療提供体制改革・医療DX推進などの方向性を明示

岸田文雄内閣が6月16日に「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義—未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現—」(骨太方針2023)を閣議決定しました(内閣府のサイト)。

医療・介護制度を中心に重要事項を眺めてみますが、その他重要事項についての結論はいまだ先送りとなっています。

診療報酬・介護報酬改定で「医療・介護の課題に効率的・効果的に対応」する
医療・介護制度改革に関して、まず不断の改革によりワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することが極めて重要である。このため「全ての世代で能力に応じて負担し支え合い、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供される全世代型社会保障」の実現に向けて、改革の工程の具体化を進めていく。また、これらに基づいて最新の将来推計人口や働き方の変化等を踏まえた上で、給付・負担の新たな将来見通しを示す考えを改めて明確化しています。

また、今後の高齢者人口の更なる増加と人口減少に対応し、限りある資源を有効に活用しながら質の高い医療介護サービスを必要に応じて受けることのできる体制を確保する観点から、次のような医療提供体制改革を総合的に進める考えを示しました。非常に具体的な内容から、やや抽象的な項目まで幅があり、今後の詳細な内容検討に注目が集まります。

・「1人当たり医療費の地域差半減」に向けて、都道府県が地域の実情に応じて地域差のある医療へに対応するなどの医療費適正化に取り組むとともに、都道府県の責務明確化等に関し必要な法制上の措置を含た「地域医療構想」を推進する(関連記事はこちらとこちら)

・都道府県のガバナンスを強化する

・かかりつけ医機能が発揮される制度整備の実効性を伴う着実な推進を図る(関連記事はこちらとこちら)

・地域医療連携推進法人制度を有効活用する(関連記事はこちら)

・地域で安全に分娩できる周産期医療を確保する

・ドクターヘリを推進する

・救急医療体制の確保を図る(関連記事はこちら)

・訪問看護の推進、医療法人等の経営情報に関する全国的なデータベースの構築を図る(関連記事はこちら)

・実効性のある医師偏在対策、医療専門職のタスク・シフト/シェア、薬局薬剤師の対人業務の充実、対物業務の効率化、地域における他職種の連携等を推進する(関連記事はこちらとこちら)
 ・・・その中で、医師が不足する地域への大学病院からの医師の派遣の継続を推進する
 ・・・関係者・関係機関の更なる対応により「リフィル処方」の活用を進める



また、減少していく医療資源で増大する医療ニーズに効率的に対応するため、さらにより医療・介護サービスの質を高めていくために「医療DXの推進」が注目されています。

・医療DX推進本部において策定した工程表に基づき、医療DX推進に向けた取り組みについて必要な支援を行いつつ、政府を挙げて確実に実現する

・マイナンバーカードによるオンライン資格確認の用途拡大や正確なデータ登録の取り組、みを進め、2024年秋に健康保険証を廃止する

・レセプト・特定健診情報等に加え、介護保険、母子保健、予防接種、電子処方箋、電子カルテ等の医療介護全般にわたる情報を共有・交換できる「全国医療情報プラッ トフォーム」の創設、電子カルテ情報の標準化等を進める

・PHRとして本人が検査結果等を確認し、自らの健康づくりに活用できる仕組みを整備する

・その他、新しい医療技術の開発や創薬のための医療情報の二次利活用、「診療報酬改定DX」による医療機関等の間接コスト等の軽減を進める(関連記事はこちら)
 ・・・その際、医療DXに関連するシステム開発・運用主体の体制整備、電子処方箋の全国的な普及拡大に向けた環境整備、標準型電子カルテの整備、医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策等を着実に実施する



他方、健康寿命を延伸することが「高齢者自身のQOL向上」「医療費の縮減」「経済の活性化」「人手不足への対応」などに繋がっていきます。この点については次のような方向が示されています。

・健康づくり・予防・重症化予防を強化し、デジタル技術を活用したヘルスケアイノベーションの推進やデジタルヘルスを含めた医療分野のスタートアップへの伴走支援などの環境整備に取り組む

・第3期データヘルス計画を見据え、エビデンスに基づく保健事業を推進する

・第4期がん対策推進基本計画などに基づき、「がんの早期発見・早期治療のためのリスクに応じたがん検診の実施」「適切な時機でのがん遺伝子パネル検査の実施」「小児がん等に係る治療薬へのアクセス改善」などのがん対策・循環器病対策を推進する(関連記事はこちら)

・難聴対策、難病対策、移植医療対策、慢性腎臓病対策、アレルギー疾患対策、メンタルヘルス対策、栄養対策等を着実に推進する

・リハビリテーション・栄養管理・口腔管理の連携・推進を図る

・全身の健康と口腔の健康に関する科学的根拠の集積・活用と国民への適切な情報提供、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)に向けた取り組みの推進、オーラルフレイル対策・疾病の重症化予防につながる歯科専門職による口腔健康管理の充実、歯科医療機関・医科歯科連携を始めとする関係職種間・関係機関間の連携、歯科衛生士・歯科技工士等の人材確保の必要性を踏まえた対応、歯科技工を含む歯科領域におけるICTの活用を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む

・市場価格に左右されない歯科用材料の導入を推進する。



ところで、我が国においては「創薬力の低下などにより、画期的な医薬品へのアクセスが阻害されている」点などが問題視されています。この点については、次のような取り組みによって「創薬力を強化し、革新的な医薬品、医療機器、再生医療等製品の開発強化、研究開発型のビジネスモデルへの転換促進等を行う」ことを目指します。

・保険適用時を始めとするイノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置

・全ゲノム解析等に係る計画の推進を通じた 情報基盤の整備や患者への還元等の解析結果の利活用に係る体制整備、大学発を含むスタートアップへの伴走支援、臨床開発・薬事規制調和に向けたアジア拠点の強化、国際共 同治験に参加するための日本人データの要否の整理、小児用・希少疾病用等の未承認薬の解消に向けた薬事上の措置と承認審査体制の強化等を推進する
 ・・・ドラッグラグ・ドラッグロスの問題に対応する
 ・・・新規モダリティへの投資や国際展開を推進するため、「政府全体の司令塔機能」の下で総合的な戦略を作成する

・医療保険財政の中でこうしたイノベーションを推進するため、「長期収載品等の自己負担の在り方の見直し」に向けた検討を進める

・大麻に関する制度を見直し、大麻由来医薬品の利用等に向けた必要な環境整備を行う

・OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討等によるセルフメディケーションの推進、バイオシミラーの使用促進等、医療上の必要性を踏まえた後発医薬品をはじめとする医薬品の安定供給確保、後発医薬品の産業構造の見直し、プログラム医療機器の実用化促進に向けた承認審査体制の強化を図る

・総合的な認知症施策を進める中で、認知症治療の研究開発を推進する

・献血への理解を深め、血液製剤の国内自給、安定的な確保・適正な使用の推進を図る



また、少子高齢化が進展する中で「サービス提供体制の確保」が懸念される介護に関しては、次のような方針を示しています。ただし社会保障審議会・介護保険部会で「宿題」とされた事項については、期限を「年末」までとしましたが、「議論を先送りしているに過ぎない。主に国民の負担増、サービスの縮小が宿題事項となっており、政治の世界は及び腰になっている。これで改革が進むのだろうか」と厳しく指摘する識者も少なくありません。

・介護サービス事業者の介護ロボット・ICT機器導入や協働化・大規模化、保有資産の状況なども踏まえた経営状況の見える化を推進する

・賃上げや業務負担軽減が適切に図られるよう取り組む

・介護保険料の上昇を抑えるため、利用者負担の一定以上所得の範囲の取扱いなどについて検討を行い、「年末までに結論」を得る

・介護保険外サービスの利用促進に係る環境整備を図る

・医療介護分野における職業紹介について、関係機関が連携して、公的な職業紹介の機能 の強化に取り組むとともに、有料職業紹介事業の適正化に向けた指導監督や事例の周知を 行う



なお、注目される2024年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定においては次のような考えが示されるにとどまりました。やはり「少子化対策財源」とも深く関連する事項で、今後の議論に注目が集まります。

・物価高騰・賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、患者・利用者負担・保険料負担への影響を踏まえ、「必要なサービスが受けられるよう、必要な対応」を行う

・「令和6年度予算編成に向けた考え方」を踏まえつつ、持続可能な社会保障制度の構築に向けて、当面直面する地域包括ケアシステムの更なる推進のための医療・介護・障害サービスの連携等の課題とともに、上述の医療・介護分野の課題について効果的・効率的に対応する観点から検討を行う


ところで「少子化対策の財源をどう捻出するか」に注目が集まっていますが、この点については「歳出改革等によって得られる公費の節減等の効果、社会保険負担軽減の効果を活用することによって、国民に実質的な追加負担を求めることなく、『こども・子育て支援加速化プラン』を推進する。なお、その財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えない」旨の考えが示されました。「これから医療・介護費等の縮減内容を考えていく」ほどの考えであり、今後、どのような議論が進められるのか、「診療報酬・介護報酬改定」などとも絡み大きな注目を集めます。



このほか、医療・介護に関連する事項として次のような考え方が提示されています。

・新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、医療体制、公費支援など様々な政策・措置の段階的な移行を進める

・基本的な感染対策を推進しつつ、重層的な流行状況の把握体制を確保するなど、必要な対策等を講じていく

・罹患後症状(いわゆる後遺症)やワクチンの副反応についての実態把握に資する調査・研究等を進める

・次なる感染症危機への対応に万全を期すため、内閣感染症危機管理統括庁を今秋に設置 し、感染症危機管理の司令塔機能を強化する

・これまでのコロナ対応の検証を踏まえて政府行動計画を見直す

・国立健康危機管理研究機構を2025年度以降に創設し、質の高い科学的知見を迅速に提供する

・医療措置協定締結の推進、保健所や地方衛生研究所等の体制強化、臨床研究の基盤整備、人材育成や災害派遣医療チーム(DMAT)の対応力強化等に取り組む

・デジタル社会実現に不可欠なデータ基盤強化を図るため、デジタル庁が関係府省庁と連携し、データの取り扱いルールを含めたアーキテクチャを設計した上で、健康・医療・介護、教育、インフラ、防災、モビリティ分野等におけるデータ連携基盤の構築を進める

・マイナポータルの利便性向上に加えて、個人や法人の税務・社会保障を始めとする各種 手続きの負担軽減に向けた取組を進めるとともに、デジタル技術の導入により、社会保障給 付に要する事務コストを効率化し、行政機関間の情報連携を推進する

・科学技術・イノベーションへの投資を通じ、社会課題を経済成長のエンジンへと転換し、 持続的な成長を実現する。このためAI、量子技術、健康・医療、フュージョンエネルギー、バイオものづくり分野において、官民連携による科学技術投資の抜本拡充を図り「科学技術立国を再興」する

・医療ツーリズムを推進する

・女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討を進める

・認知症の人や家族に対する支援を継続・強化する

・グローバルヘルスの推進・課題解決に向け、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を目指す

・薬剤耐性対策において、市場インセンティブによる治療薬の確保等の国内対策や国際連携・産学官連携による研究開発を推進する

・船舶活用医療の推進、医療コンテナの活用等による医療の継続性確保等の「災害時における事業継続性確保をはじめとした官民連携強化」を進める

コロナ5類移行後、コロナ病床確保や感染対策設備整備、高齢者施設への医療従事者派遣などの補助

「令和5年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて」
コロナ感染症が5類感染症に移行後の補助内容を整理、「当面、9月末まで継続」

厚生労働省は5月8日に事務連絡「令和5年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて」などを示し、コロナ感染症が5類感染症に移行した後には、補助内容を整理(一部を継続、一部を終了、一部を拡充)したうえで「当面、9月末まで継続する」考えを明らかにしました。

資料
令和5年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)の交付について(5月8日付、通知)
「令和5年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施について」の一部改正について(5月8日付、通知)
令和5年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)の実施に当たっての取扱いについて(5月8日付、事務連絡)
令和5年度新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(医療分)に関するQ&A(第2版)について(5月8日付、事務連絡)


5月8日から9月末まで、補助内容を整理して継続
コロナ感染症は5月8日に「5類感染症」へ移行しました。段階的に「幅広い医療機関で対応」していくため、補助内容を一部変更しました(一部を継続、一部を終了、一部を拡充)。ただ、コロナ感染症の今後の動向を見通すことは困難なため、「当面、2023年9月末までの対応」とされています。

新型コロナウイルス感染症対策事業、新型コロナウイルス感染症重点医療機関体制整備事業
主に「入院病床の確保」等を支援するもので、新型コロナウイルス感染症患者の入院に当たって、病床確保、消毒、搬送、患者対応に伴い深夜勤務となる医療従事者の宿泊施設確保等、軽症・無症候の感染患者(以下、軽症者等)の宿泊施設確保や運営等―に関する経費について、次の額を上限として補助する(コロナ患者数が明らかに減少してきた場合には、即応病床を、通常医療病床にも活用できる準備病床に戻すなどの対応を適宜行う)

【病床確保】
→概ね「半減」するとともに、「コロナ患者を十分に受け入れていない場合」の補助を打ち切り

(A)通常(コロナ患者を積極的に受け入れている病院)の上限額

【重点医療機関である特定機能病院等】(特定機能病院、および2020年4月以降にECMO(体外式膜型人工肺)治療を行う患者が延べ3人以上の月・人工呼吸器治療を行う患者が延べ10人以上の月がある医療機関)
〇稼働病床の病床確保料の上限額
・ICU(1床・1日当たり):21万8000円
・HCU(同):10万6000円
・上記以外の病床(同):3万7000円

〇休止病床の病床確保料の上限額(即応病床1床当たり1床まで(ICU・HCU病床(重症者・中等症者病床)は2床まで))
・ICU(1床・1日当たり):21万8000円
・HCU(同):10万6000円
・療養病床(同):1万6000円
・上記以外の病床(同):3万7000円

【重点医療機関である一般病院】
〇稼働病床の病床確保料の上限額
・ICU(1床・1日当たり):15万1000円
・HCU(同):10万6000円
・上記以外の病床(同):3万6000円

〇休止病床の病床確保料の上限額(即応病床1床当たり1床まで(ICU・HCU病床(重症者・中等症者病床)は2床まで))
・ICU(1床・1日当たり):15万1000円
・HCU(同):10万6000円
・療養病床(同):1万6000円
・上記以外の病床(同):3万6000円

【その他医療機関】
〇稼働病床の病床確保料の上限額
・ICU(1床・1日当たり):9万7000円
・重症患者・中等症患者を受け入れ、酸素投与・呼吸モニタリングなどが可能な病床を確保する場合(同):4万1000円
・上記以外の病床(同):1万6000円

〇休止病床の病床確保料の上限額(即応病床1床当たり1床まで(ICU・HCU病床(重症者・中等症者病床)は2床まで))
・ICU(1床・1日当たり):9万7000円
・重症患者・中等症患者を受け入れ、酸素投与・呼吸モニタリングなどが可能な病床を確保する場合(同):4万1000円
・療養病床(同):1万6000円
・上記以外の病床(同):1万6000円



【宿泊施設借上げ費】
〇室料:1室・1日当たり1万3100円

【対象外】
〇食費も5月8日以降は補助対象外とする
〇軽症者等に対して電話や情報通信機器による診療等を行うためのソフトウェア導入・使用に係る費用は対象経費から除かれる



新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関等設備整備事業(旧新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関設備整備事業)
「新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関」において、病床・医療資器材等の確保を支援するもの(支援対象は、消耗品・人工呼吸器および付帯備品・個人防護具、簡易陰圧装置・簡易ベッド・体外式膜型人工肺(ECMO)および付帯備品・簡易病室など)の購入等費用を補助する
→従前から一部拡充している

次の額を上限として経費が補助されます。
〇初度設備費:1床当たり13万3000円
〇人工呼吸器・付帯備品:1台当たり500万円
〇個人防護具:1人当たり3600円
〇簡易陰圧装置:1床当たり432万円
〇簡易ベッド:1台当たり:5万1400円
〇体外式膜型人工肺(ECMO)・付帯備品:1台当たり2100万円
〇簡易病室・付帯備品(テントやプレハブなど):実費相当額
〇(新)HEPAフィルター付空気清浄機(陰圧対応可能なものに限る):1施設当たり90万5000円
〇(新)HEPAフィルター付パーテーション:1台当たり20万5000円



外来対応医療機関設備整備事業(帰国者・接触者外来等設備整備事業)
新型コロナウイルス感染症の疑い症例を診察する「帰国者・接触者外来」等の設置経費を補助し、感染拡大の防止・国民の不安軽減を目指すもの

補助対象は、「帰国者・接触者外来」等における、HEPAフィルター付き空気清浄機、HEPAフィルター付パーテーション、個人防護具(マスク、ゴーグル、ガウン、グローブ、キャップ、フェイスシールド)、簡易ベッド、簡易診療室(テントやプレハブなど簡易な構造をもち、緊急的かつ一時的に新型コロナウイルス感染症患者等に外来診療を行う診療室)および付帯備品―で、次の額を上限として経費が補助されます(従前と内容は変わらず)。
〇HEPAフィルター付空気清浄機(陰圧対応可能なものに限る):1施設当たり90万5000円
〇HEPAフィルター付パーテーション:1台当たり20万5000円
〇個人防護具:1人当たり3600円
〇簡易ベッド:1台当たり5万1400円
〇簡易診療室・付帯備品(テントやプレハブなど):実費相当額



DMAT・DPAT等医療チーム派遣事業
新型コロナウイルスの感染患者が急増する地域などにDMAT(災害派遣医療チーム)・DPAT(災害派遣精神医療チーム)などを派遣するにあたり、派遣費用や医療チームの活動費(個人防護具、医薬品、医療用消耗品、一般消耗品の購入などの必要)を補助するもの。派遣元医療機関に「派遣する医療従事者」の人件費相当を補助するなどを行い、それを財源に「当該スタッフの処遇改善」に充てることが期待される

【医療チーム派遣経費】
(一般医療機関に派遣する場合)
〇医師:1人1時間当たり7550円
〇医師以外の医療従事者:1人1時間当たり2760円
〇業務調整員:1人1時間当たり1560円

(臨時の医療施設、健康管理を強化した宿泊療養施設、入院待機ステーションに医療従事者を派遣する場合(関連記事はこちらとこちら)
〇医師:1人1時間当たり1万5100円
〇医師以外の医療従事者:1人1時間当たり5520円
〇(新)業務調整員:1人1時間当たり3120円

(重点医療機関に派遣する場合)
〇医師:1人1時間当たり1万5100円
〇医師以外の医療従事者:1人1時間当たり8280円
〇業務調整員:1人1時間当たり3120円

(新)(新型コロナウイルス感染症に感染した入所者に対して継続して療養を行う高齢者施設に派遣する場合)
〇医師:1人1時間当たり1万5100円
〇医師以外の医療従事者:1人1時間当たり8280円(本年(2023年)9月30日までの派遣に限った特例)
〇業務調整員:1人1時間当たり3120円

【医療チーム活動費】:実費相当額(個人防護具、医薬品、医療用消耗品、一般消耗品の購入など、医療チームが新型コロナウイルス感染症患者に対応するために必要な費用)



新型コロナウイルス感染症により休業等となった医療機関等に対する継続・再開支援事業
「患者が新型コロナウイルスに感染していた」などの理由から医療機関が診療縮小・休業等を迫られた際、再開等のためには「施設の消毒等が必要になる」ことを踏まえ、HEPAフィルター付空気清浄機(陰圧対応可能なものに限る)の購入費(1台当たり購入額90万5000円を上限、医療機関では2台まで、薬局では1台まで)、消毒費用等(1施設60万円まで)—に加え、新たに「HEPAフィルター付パーテーション」(1台当たり購入額20万5000円を上限)に、購入額の2分の1が補助されます。



新型コロナウイルス感染症を疑う患者受入れのための救急・周産期・小児医療体制確保事業
新型コロナウイルス感染症が疑われる救急搬送患者等を受け入れた場合、新型コロナウイルスに感染しているかどうかの検査実施、他の「新型コロナウイルス感染症以外の救急搬送患者」等への感染防止(隔離など)など特別の配慮が必要とることから、当該医療機関に次の額を上限として、必要な経費を補助するもの。(従前と内容は変わらず)。

〇初度設備費:1床当たり13万3000円
〇個人防護具:1人当たり3600円
〇簡易陰圧装置:1床当たり432万円
〇簡易ベッド:1台当たり5万1400円
〇簡易診療室および付帯する備品(テントやプレハブなど):実費相当額
〇HEPAフィルター付空気清浄機(陰圧対応可能なものに限る):1施設当たり90万5000円
〇HEPAフィルター付パーテーション:1台当たり20万5000円
〇消毒経費:実費相当額
〇救急医療を担う医療機関において、新型コロナウイルス感染症を疑う患者の診療に要する備品:1施設当たり30万円
〇周産期医療・小児医療を担う医療機関において、新型コロナウイルス感染症を疑う患者に使用する保育器:1台当たり150万円



新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関における外国人患者の受入れ 体制確保事業(旧新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関等における外国人患者の受入れ体制確保事業
新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関で、かつ、都道府県が選出する「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関(選出予定含む)」である医療機関や宿泊療養施設に対して、外国人患者の受入れにあたり必要な、外国人特有の課題に対応した入院治療・療養が可能な体制の整備、感染拡大防止対策、診療体制確保などに要する費用を補助するもの(次の額を上限とする)

〇入院医療機関:1施設当たり1000万円
※宿泊療養施設(1施設当たり200万円)の補助は打ち切り



新型コロナウイルス感染症重症患者に対応する医療従事者養成研修事業
新型コロナウイルス感染症の重症患者等には人工呼吸器やECMOによる管理が必要となるケースが少なくないが、これらの高度機器を操作するためには知識・技術が必要となり、そうしたスキルを持つ人材の育成を急ぎ進める必要がある。このため当該機器の操作に当たって必要な知識・技術を習得するための研修経費(開催費)を、次を上限に補助するもの(従前と内容は変わらず)

〇新型コロナ患者対応 ECMO 研修(基礎編および応用編):1開催当たり450万円
〇新型コロナ患者対応人工呼吸器研修(基礎編および応用編):1開催当たり200万円

(新)外来対応医療機関確保事業
本年(2023年)3月10日以降に新たに外来対応医療機関(いわゆる発熱外来、旧「診療・検査医療機関」)の対応を行い、「少なくとも2023年度中は外来対応医療機関の対応を行う」医療機関に対し、新たに1施設当たり50万円を補助する



一方、

新型コロナウイルス重症患者を診療する医療従事者派遣体制の確保事業
新型コロナウイルスに感染した医師等にかわり診療等を行う医師等派遣体制の確保事業
医療搬送体制等確保事業
ヘリコプター患者搬送体制整備事業
新型コロナウイルス感染症の影響に対応した医療機関の地域医療支援体制構築事業
医療機関における新型コロナウイルス感染症の外国人患者受入れのための設備整備事業
新型コロナウイルス感染症重点医療機関等設備整備事業

の補助メニューは「5月7日まで」となります。



また、 Q&A(第2版)では、次のような考えを明らかにしています。

〇コロナ感染症の終息後や感染症法上の位置づけ変更後においても、今後コロナ感染症が再拡大することも考えられるため、本交付金で整備した設備は、厚生労働大臣が別に定める期間を経過するまでは財産処分を行うことなく維持されることを想定している

〇5月7日で終了する分について、リース契約により1か月分のリース料となる場合には、日割り等による対応を行ってほしい

〇パルスオキシメーターは、本年(2023年)5月8日以降は補助対象「外」となる

〇緊急包括支援交付金を用いて購入しているパルスオキシメーターなどについては、やむを得ず生じた余剰在庫については、自治体において処分に代えて「売却が適当」と判断した場合には、処分に代えて売却することは差し支えない

〇本年(2023年)5月8日以降の病床確保料については、次のように取り扱う
病床確保計画に位置付けた上で行政が病床確保を要請した即応病床の空床・当該病床を確保するために休止した病床が病床確保料の交付対象となる
都道府県や医療機関などコロナ患者の入院調整を行う機関から入院受け入れ要請があった場合は、正当な理由なくコロナ患者入院受け入れ要請を断らないことが病床確保料の補助要件となる
その他国からの補助金等の申請を行う場合は、その基準額や対象経費等を算出するにあたり「病床確保料の交付対象となる病床数や費用と重複が起こらない」よう配慮してほしい

〇移送・搬送に係る費用は、以下の場合に補助対象となる
コロナ患者が医療機関に入院するため自宅・宿泊療養施設などから医療機関へ搬送する場合
コロナ患者が後方支援医療機関等に転院するための搬送を行う場合
コロナ患者のうち高齢者や妊婦を入院医療機関から宿泊療養施設へ移送を行う場合
コロナ患者のうち高齢者や妊婦が療養のために宿泊療養施設に入所するために移送する場合
診療のためのコロナ患者の移送を行う場合(本人が公共交通機関を含めて他の移動手段が確保できない場合に限る)
宿泊療養中の高齢者や妊婦が診療のため医療機関に移送し、診療後医師が引き続き療養が必要との判断された場合に宿泊療養施設に再移送する場合

〇5月8日以降、入院調整は「医療機関間で行うことが原則」となるため、医療機関間で入院調整が行える体制へ速やかに移行させる取り組むことを前提に、都道府県(保健所設置市含む)が入院調整を行う場合、もしくは、医療機関間と都道府県(保健所設置市含む)が連携した入院調整を行う場合には、入院調整は補助対象となる

〇医師等の医療従事者を「都道府県が実施するコロナ重症患者に対応する医療従事者養成研修」に派遣した場合、本年(2023年)5月8日以降、DMAT・DPAT等医療チーム派遣事業の対象となる

〇5類移行後に新たにコロナ患者を受け入れたことなどにより、院内感染が発生し、一時的に患者を受け入れられなくなった医療機関について、従前の「みなし重点医療機関への補助」に相当するため、施設要件や看護体制は重点医療機関のものを適用する。

2024年度診療報酬改定に向けて、医療DX令和ビジョン2030の進捗等を確認(厚生労働省-中医協総会)

電子カルテ標準化、医療機関のサイバーセキュリティ対策等の医療DXについて、診療報酬でどのようにサポートするか

厚労省は4月26日、中医協総会を開催し、2024年度診療報酬改定に向けて、改定審議のシリーズその1として、医療DX令和ビジョン2030の進捗を確認しました。

資料(医療DXについて)

全国の医療機関で過去の診療情報を活かした「質の高い医療提供」を実現、医療機関等の診療報酬改定対応の負担の軽減、サイバーセキュリティ対策を強化するなどの「医療DX」を強力に推進していく必要があるが、それらを診療報酬でどのようにサポートしていくべきなのか。
4月26日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こうした議論が行われ、2024年度診療報酬改定に向けた「総論」論議が本格的に始まりました。

医療DX令和ビジョン2030では、医療DXを進めていく上で「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」を重点施策に掲げ、政府の「医療DX推進本部」、厚労省の「医療DX令和ビジョン2030 厚生労働省推進チーム」および「各種ワーキンググループ」で審議が進められています。

医療DXの推進に欠かせない医療・介護・健康情報を集積していく基盤は、オンライン資格確認システムのネットワークを拡充した「全国医療情報プラットフォーム」が担います。クラウド間連携を実現し、医療機関間のみならず自治体や介護事業者等間も、必要なときに必要な情報を共有・交換できる構想となっています。
これにより、医療機関等では患者の必要な情報の閲覧・共有ができ、より良い医療につながるとともに、患者自らの予防・健康づくりを促進できることが期待されています。

国の目指す「電子カルテ情報の標準化」は、電子カルテ自体の機能やデータベースの標準化ではなく、出入力データの標準規格化を目指しています。電子カルテ情報の標準化の仕組みは「電子カルテ情報交換サービス(自民党案では電子カルテ情報共有サービス)」として、2025年頃までの構築を目指しています。
標準化する電子カルテ情報は「2文書(診療情報提供書・退院時サマリー、マイナポータルで連結された健診結果報告書を含めると3文書)と6情報(傷病名・アレルギー・感染症・薬剤禁忌・検査・処方)」からスタートし、順次、対象情報の範囲を拡大していきます。異なるベンダー間のデータ連結を可能とするインターフェイスの統一化として「HL7 FHIR規格(Web通信に対応した柔軟にデータ形式変換可能なフォーマット)」を標準規格とすることが決定されています。

「診療報酬改定DX」の目指す最終ゴールとして、進化するデジタル技術を最大限に活用し、医療機関等における負担の極小化が掲げられ、具体的には「プラットフォームとの連携」、中小病院・診療所が導入しやすい「電子カルテとの一体化も視野に入れた標準型レセコン」の開発・リリースが目標となります。
最終ゴールに向けたスケジュールは、アジャイル開発で共通算定モジュールの試行運用を重ねて、共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善を行い、2024年度から段階的に実現し、2028年度から提供を拡大していくことを目指しています。長年の課題であった異なるベンダー間のデータ連結は、「電子カルテ情報の標準化」と「診療報酬改定DX」により、医事マスタの大改修にも波及される形となります。

2024年度診療報酬改定に向けて、制度改革等に関わる医療DX、第8次医療計画および働き方改革は、改定審議のシリーズその1として9月まで審議し、10月からはシリーズ2として個別の改定項目について審議が行われる予定となっています。

病院の入院患者9.3%減、外来患者7.4%減に。2023年1月、コロナ禍前2020年1月との比較で―厚生労働省 病院報告

厚生労働省4月14日公表2023年1月分の病院報告から見えること

厚生労働省が4月14日に公表した2023年1月分の病院報告によると、
2023年1月末と新型コロナウイルス感染症流行前の2020年1月末とで病院の患者数を比較すると、入院では9.3%減、外来では7.4%減となっていました。
また、一般病床の稼働率についても、空床確保、一部病床の休止等のコロナ患者受け入れのための対応により、依然として低い水準で推移していることがわかりました。

2023年1月末における「1日平均患者数」は、
病院全体で、入院は110万9785人、外来は115万6374人となりました。
前年同期(2022年1月末)と比べると、入院では3.8%の減少、外来では0.9%の減少となりました。
また、コロナ感染症第1波の中にあった 2021年1月末と比べると、入院では3.9%の減少、外来では5.5%の増加となりました。
さらに、コロナ感染症の影響がない2020年1月末と比較してみると、入院では9.3%減、外来では7.4%減となっています。

外来患者数は「コロナ感染の動向」に左右されていることが伺えます。コロナ禍前に比べて、軽微な症状での医療機関受診が減少している(受療行動が変化している)可能性があり、今後の動向においても注視すべきでしょう。

また、入院については、「コロナ重症患者等を即時受け入れられるよう病床の確保」、「コロナ重症患者に対応するための、一部病棟・病床閉鎖(コロナ病床に医療専門職を集約化する)」などが現場では続いていることが、「患者数が戻らない」ことの背景にあると考えられます。    
入院については、当面「患者減」傾向が継続すると考えられます。もっとも、5月8日の5類移行後には「すべての病院でコロナ入院患者を受け入れる」方針が示されておりので今後も状況が変化していくものと伺えます。

病床種別に入院患者数と前年同月からの変化を見てみると次のような状況が明らかになりました。
・一般病床:60万4236人
(前年同月比4.6%減、2021年1月比3.5%減、2020年1月比11.0%減)
・療養病床:22万7386人
(前年同月比6.5%減、2021年1月比8.1%減、2020年1月比14.1%減)
・精神病床:25万8509人
(前年同月比3.7%減、2021年1月比4.7%減、2020年1月比7.1%減)
・結核病床:1025人
(前年同月比8.6%減、2021年1月比14.8%減、2020年1月比23.3%減)

〇病院の平均在院日数については、「短縮」と「延伸」を繰り返す混乱が依然続いているようです。
病院全体の平均在院日数では29.1日となり、前月比で2.6日延伸してしまいました。

病床種別に見ると、
・一般病床:17.5日(前月から1.6日延伸)
・療養病床:122.6日(同8.6日延伸)
・精神病床:300.5日(同26.0日延伸)
・結核病床:47.3日(同6.6日延伸)
・感染症病床:13.8日(同1.3日延伸)
となりました。依然としてコロナ感染症の影響で「ある月に短縮すれば、翌月に延伸し、さらにその翌月には再び短縮する」などの状況が繰り返されており、医療現場の混乱が続いていることが伺えます。

〇一般病床の利用率は、コロナ感染症の影響で2023年1月末は71.1%と低い水準のままとなっています。
月末病床利用率を見ると、病院全体では76.0%で、前年同期(2022年1月末)と比べて1.1ポイント低下、コロナ感染症が本格化していた2021年1月末と比べて0.8ポイント上昇、さらにコロナ禍前の2020年1月末と比べて4.9ポイント低下となりました。

急性期・高度急性期病床では、「コロナ感染患者受け入れのために空床を確保しておく」「コロナ感染症対応のために、一部病棟・病室を閉鎖し医療資源を集約化する」ことなどが必要なことも要因となり、病床利用率が下がっていると考えられます。これらの数字からも「コロナ感染症流行前の状況には未だ戻っていない」ことを改めて確認できます。

病床種別に見ると、
・一般病床:71.1%
(前年同月比0.1ポイント低下、2021年1月比4.1ポイント低下、2020年1月比6.5ポイント低下)
・療養病床:82.8%
(前年同月比3.1ポイント低下、2021年1月比2.4ポイント低下、2020年1月比4.3ポイント低下)
・精神病床:80.5%
(前年同月比2.1ポイント低下、2021年1月比2.6ポイント低下、2020年1月比4.6ポイント低下)
・結核病床:25.5%
(前年同月比3.6ポイント低下、2021年1月比2.2ポイント低下、2020年1月比6.4ポイント低下)
・感染症病床:683.2%
(前年同月比54.0ポイント低下、2021年1月比204.9ポイント低下)

上述のように、一般病床(とくに急性期病床)の一部については「コロナ感染症の重症患者が発生した場合に、すぐさま受け入れられる」ように事実上の空床にしておく(即応病床)ことも求められており、病床利用率は低い水準で推移していることが伺えます。

コロナ5類移行後の医療提供体制等について、厚労省よりQ&Aにて内容が示される

5月8日以降、コロナ感染症は5類に移行し「幅広い医療機関で対応」を

厚生労働省は3月29日に、事務連絡「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」を示しました。

新型コロナウイルス感染症が5月8日に5類感染症に移行することとなり、
「幅広い医療機関での対応」などが段階的に進められていくなかで「高齢者などのハイリスク者対応」が極めて重要となる。
このため、高齢者施設等と医療機関との連携が強く求められ、1医療機関ですべてに対応することまでは求められず、別々の医療機関がそれぞれの機能に応じて連携し、全体として満たすことが求められる。
また、コロナ患者未対応の病院にも「コロナ患者の入院受け入れ」が求められるが、まずは「自院の受診患者・入院患者についてコロナ陽性が判明した後も、引き続き自院で入院対応を行う」ことから始めてもらう。
このような考えを明らかにしました。
(厚労省 (事務連絡本文)と(Q&A))

政府は「現下のオミクロン株の毒性などに鑑みて、私権制限に見合う生命・健康への重大な影響はない」と判断し「5月8日から5類感染症に移行する」ことを決定。
また3月10日には「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等」を決定し、段階的な医療提供体制の見直しなどを進める方針を固めました。
そして今般、厚労省は、「幅広い医療機関での対応、病床確保料の半減、公費負担の一部終了など」を事務連絡で解説するとともに、今般、医療現場の数々の疑問に答えるQ&Aを示しました。

【入院医療】
現在「重点医療機関」を中心にコロナ感染患者の入院受け入れを行っていますが、5月8日の5類移行以降は「病院の機能に応じて、すべての病院で対応する」ことが求められ、
具体的には、
・重点医療機関等は重症患者対応を行う
・「自院で発生したコロナ患者を継続入院させている」病院では、外部のコロナ患者を受け入れる
・コロナ未対応病院でもコロナ患者受け入れを行う
こととされました。

この点について今般のQ&Aでは次のような考え方が示されています。

〇「重点医療機関等以外でコロナ入院患者の受け入れ経験がある医療機関」 に対する「積極的な外部のコロナ患者受け入れ推進」について、
「あらかじめ書面で確認を行う」ことまでは求めないが、自治体から丁寧に説明してほしい※今後、厚労省で啓発用の資材などが提示される
〇地域包括ケア病棟・地域一般病棟(旧13対1・15対1)では、「高齢者施設等からのコロナ患者受け入れ」などを念頭に置き、各都道府県で病床確保の見込み数などを設定してほしい
〇「コロナ入院患者の受け入れ経験がない医療機関」への受け入れ促進については、例えば「コロナ以外の疾患が原因で受診・入院している患者がコロナ陽性と判明した場合、当該受診の原因となった当該疾患の治療を継続する観点からも、引き続き当該病院で可能な限り継続して治療を続けることを徹底する」などの取り組みから始めてほしい
〇国は「病棟全体のゾーニングは基本的に必要なくなる」が、すでにゾーニング等により「既存の1病棟を2病棟に分けて対応する」こと、専任の看護体制については、例えば、夜勤帯など特に人材の確保が困難な場合には「感染対策を徹底した上で、病棟間の支援」など柔軟な対応をすること。なお、重点医療機関については「病棟単位(看護体制の1単位)でコロナ患者専用病床(酸素投与・呼吸モニタリングが可能な病床)の確保」を要件としていることから、5月8日以降の病床確保料の補助上限額も「その他医療機関」と比べて高く設定している

【外来医療】
また、外来に関しては
・都道府県は対応医療機関数の維持、拡大を促す
・都道府県は地域医師会等と連携し「かかりつけ患者への対応」に限定している医療機関へ、「患者を限定しない」よう促す
・新たに対応する医療機関における感染対策設備整備・個人防護具確保について必要な支援を行う
・国は都道府県を通じて医療機関数拡大などの進捗管理を行う
などの方針が打ち出されています。

今般のQ&Aでは、次のような点が確認されました。

〇外来対応医療機関の公表や公表内容については、これまでの「診療・検査医療機関」と同じ仕組みとすることを想定。「診療・ 検査医療機関の一律公表」と同様に、「患者の選択」に資するよう適切に対応してほしい
〇「かかりつけの患者に限定しているか否か」は、これまでの診療・検査医療機関における対応と同様に対応してほしい
〇小児科医療機関が「大人の診療を行わない」ことは、「患者を限定している」ことにはならない

【入院調整】
外来対応医療機関で「患者の症状が重い」「これから症状が重くなる可能性が高い」などで「入院が必要」と判断した場合には、当該医療機関自らが「入院先を探し、入院調整を行う」ことになります。
これまで都道府県等が行ってきた入院調整機能を、現場医療機関に委ねるものですが、混乱を避け、円滑な医療提供を可能とするために、例えば「まず軽症等の患者について医療機関が入院調整を行う」➡「秋以降、重症者等についても医療機関が入院調整を行う」などの段階対応が考えられます。

この入院調整については、次のような考え方が示されています。

〇入院調整にあたっては、5類移行後、受診医療機関だけでなく、国・都道府県・保健所等でも患者情報を共有することについて「医療機関で『患者の同意』を取得する」ことが求められる」と示されているが、この同意取得は「入院調整のために必要となる情報を国や都道府県等の行政機関に共有する旨を説明し、口頭で同意を取得し、その日付とともに診療録に明記する」形とすることを予定している

【高齢者施設等対応】
5類移行後にも、コロナウイルスについて「感染力が弱まる」「毒性が弱まる」わけではないことから、「高齢者などのハイリスク患者」への対応を充実することが引き続き極めて重要となります(若人などの活動が活発化するため、その重要性は増していくとも考えられる)。
このため、例えば、
・地域包括ケア病棟などでの高齢コロナ患者受け入れを促進する
・高齢者施設等における集中的検査を継続実施する
・高齢者施設等と医療機関との連携を強化する
・施設内療養を行う高齢者施設等への補助について、医療機関との連携を条件に継続する
などの方針が打ち出されています。

今般の事務連絡では、この点に関連して次のような考え方が明示されました。

〇施設内療養を行う高齢者施設等への補助要件として「医療機関との連携」が求められているが、嘱託医が、施設からの電話等による相談への対応、施設への往診(オンライン診療含む)、入院の要否の判断や入院調整(当該医療機関以外への入院調整も含む)を行っていれば、「当該嘱託医と連携している」と見做してよい。
〇連携医療機関には、施設からの電話等による相談への対応、施設への往診(オンライン診療含む)、入院の要否の判断や入院調整(当該医療機関以外への入院調整も含む)の3要件が求められているが、必ずしも「1つの医療機関ですべてを満たさなければならない」わけではなく、「別々の医療機関と連携して、3要件を全てが満たす」ことでもよい。
〇医療機関と高齢者施設等の連携に関し、「地域における新型コロナの流行により、当該医療機関が対応できない場合」には、自治体が他医療機関との連携調整を行うことになる。この「地域における新型コロナの流行により、当該医療機関が対応できない場合」とは、 「地域における感染拡大により、当該医療機関の医療提供体制が逼迫している」場合などが想定される

【医療費負担】
5類移行後には、
・コロナ治療薬の薬剤費は公費負担を継続する
・入院医療費について高額療養費の上限を2万円減額する(より低い患者負担で済むようにする)
という経過措置をおいたうえで「医療費の公費負担・補填を終了する」ことになります。

この点、今般の事務連絡では次のような考え方が明らかにされました。

〇外来、入院ともに「コロナ治療薬の薬剤費」については、保険適用後に残る自己負担額(年齢、所得に応じた1-3割負担部分)について全額が公費支援の対象となる。
〇コロナ治療薬の薬剤費についても、外来、入院ともに「高額療養費の適用対象」となる。
〇したがって、保険請求(レセプト請求)の方法が従来から変わるものではない。

今後も、医療現場等の疑問に答える形でQ&Aが更新されていくと考えられ、注視していくことが必要になってくるでしょう。

次期トリプル改定に向けて意見交換会での議論がはじまる

■2024年は今後を見据えた医療・介護提供体制の構築に向けての重要な年

次回の2024年度の診療報酬改定は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬が同時に改定される、いわゆるトリプル改定が行われます。さらに2024年度は、

● 2025年に向けて地域医療構想を推進するとともに、医療介護総合確保促進会議による「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」がとりまとめられる
● 新興感染症対応を含め第8次医療計画が2024年度から始まる
● 2024年度から医師の働き方改革が実施される
● 医療DXの取組みが進んでいる
● 革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市や医薬品の安定的な供給を図る観点から、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」で、薬価制度などの議論が行われている
● プログラム医療機器(SaMD)の検討が求められている

など、多岐にわたる事項が控えています。このように2024年は、2040年を見据えた医療・介護提供体制の構築に向けて、インパクトの大きい重要な年になることが想定されています。

トリプル改定に向けては、各報酬がより有機的に連携したものとなるように設計される必要があります。そのために、2018年度同時改定時と同様に、それぞれが具体的な検討に入る前に、同時改定に関する議論を行えるよう、関係する委員等が参加する意見交換会が設定されました。


■9つのテーマで意見交換会が開催される

意見交換会のテーマとしては、①地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携、②リハビリテーション・口腔・栄養、③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療、④高齢者施設・障害者施設等における医療、⑤認知症、⑥人生の最終段階における医療・介護、⑦訪問看護、⑧薬剤管理、⑨その他-の9つが設定されました。

2023年3月15日の意見交換会では上記①②③を、2回目の4月は同様に④⑤を、3回目の5月で⑥⑦を検討し、⑧については各テーマ内で議論する予定となっています。


■要介護者等の高齢者の入院は地域包括ケア病棟での受入れを促進か

3月15日の意見交換会では、前述のとおり①地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携、②リハビリテーション・口腔・栄養、③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療の3つのテーマについて議論されました。

たとえば③要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療では、「高齢者にとって一般的な 疾患である誤嚥性肺炎や尿路感染症等に対する入院医療を急性期一般病棟が担っている実態があり、このような医療機関が提供しうる医療の内容と、要介護者等の高齢者が求める医療の内容に乖離がある可能性がある」という意見が挙がっています。具体的には、要介護高齢者等に求める医療内容には、治療に加えて介護・リハビリ提供も必要となりますが、急性期病棟ではそれらの提供が十分でないことが指摘されています。

一方で地域包括ケア病棟における介護施設・福祉施設からの入院患者の受入は急性期一般病棟と比べると少ない実態があります。リハビリテーション専門職等の多職種が一定程度配置されており、また入退院支援部門の設置が要件化されている地域包括ケア病棟や医師が配置されている介護保険施設等が要介護者等の高齢者の急変対応を担うことを推進する必要があるとの意見が挙がっています。

前回の診療報酬改定においても、地域包括ケア病棟の3つの機能をバランスよく提供することが求められましたが、次回の改定においても同様にサブアキュート機能の強化が強調される可能性がありそうです。

このように意見交換会では、次回の改定に向けたさまざまな要素が検討されています。今後の議論の動向にも注視が必要といえるでしょう。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

総合確保方針の改定案を大筋で了承、ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿もまとまる

■ポスト2025年に実現が期待される医療・介護提供体制の姿とは

厚生労働省の2月16日の医療介護総合確保促進会議は、次期医療計画や介護保険事業(支援)計画の策定のベースとなる「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(以下、総合確保方針とする)の改定案を大筋で了承しました。また「団塊の世代」が全て75歳以上となる2025年の後の医療・介護提供体制の構築に向けて、「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」が別添として新たに取りまとめられました。

総合確保方針は、各地域で医療や介護の提供体制を総合的に確保するための基本的な方向性を示すもので、都道府県による医療計画や、都道府県・市町村による介護保険事業(支援)計画の策定のベースとなる上位指針といえます。今回の取りまとめをもとに、年度内の告示改正となる見込みです。

総合確保方針の意義では、従来の「団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年に向け」に、「その後の生産年齢人口の減少加速等を見据え」との文言が付け加えられ、今後、医療・介護サービスの担い手や、社会保障費用を負担する人口が減少することを強調しています。

また基本的方向性として、①「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築②サービス提供人材の確保と働き方改革③限りある資源の効率的かつ効果的な活用④デジタル化・データヘルスの推進⑤地域共生社会の実現─の5つが挙げられました。



出典:第19回医療介護総合確保促進会議 資料


①「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築では、入院医療については、「2025年に向けて地域医療構想を推進し、その上で、その後の生産年齢人口の減少の加速等を見据え、更に医療機能の分化・連携を進めていくこと」、外来・在宅医療については、「外来機能報告制度を踏まえ、紹介受診重点医療機関の明確化を図るとともに、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うこと」が重要としています。


出典:第19回医療介護総合確保促進会議
「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」


②サービス提供人材の確保と働き方改革に関しては、医療・介護サービス提供人材確保と働き方改革を、地域医療構想と一体的に進めるべきとしています。医療従事者に関しては、働き方改革やタスク・シフト/シェア、チーム医療の推進、復職支援等を進めていくことが指摘しています。③限りある資源の効率的かつ効果的な活用では、医療・介護保険制度の持続可能性を高めるためにも、医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築、介護サービス事業者の経営の協働化・大規模化、ケアマネジメントの質の向上などを推進することが重要といった文言が盛り込まれました。④デジタル化・データヘルスの推進では、医療・介護DXを進め、患者・利用者自身の医療・介護情報の標準化、デジタル基盤を活用した情報の共有・活用など、⑤地域共生社会の実現では、医療・介護提供体制の整備において、地域の将来の姿を踏まえた「まちづくり」の一環として位置付ける視点を明確にしていくことも重要としました。

また別添の「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」では、「高齢者人口がピークを迎える中で、医療・介護の複合的ニーズを有する高齢者数が高止まりする一方、生産年齢人口の急減に直面する」という局面において、実現が期待される医療・介護提供体制の姿を描いています。具体的には、(1)医療・介護を提供する 主体の連携により、 必要なときに「治し、支える」医療や個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様な介護が地域で完結して受けられる こと、(2)地域に健康・医療・介護等に関して必要なときに相談できる専門職やその連携が確保され、さらにそれを自ら選ぶことができること、(3)健康・医療・介護情報に関する安全・安心の情報基盤が整備されることにより、自らの情報を基に、適切な医療・介護を効果的・効率的に受けることができること─の3つの柱の実現を掲げています。

ポスト2025年を展望すると、引き続き高齢化が進行する地域もあれば、高齢化がピークを越え、人口が急速に減少する地域もあり、医療・介護需要の動向は地域によって大きく異なります。これは東京のような大都市圏と中山間地域や離島の状況とを想起すれば明らかといえます。
このような点を踏まえ、医療・介護の確保については、地域を包括的にカバーする提供主体の活用や、オンライン診療などICT技術を活用して時間と場所を超えてサービスを提供することを可能にする形態の活用も図りつつ、必要な医療・介護サービスを確保することを前提に、戦略的に再編を図ることも意識しながら、地域ごとの取組を進めていく必要があるとしています。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

延期された外来機能報告、紹介受診重点医療機関は2023年8月以降に明確化<コラムNo.96>

2021年5月に「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第49号)が成立・公布されました。これにより、外来機能報告制度が創設され、地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、地域においてデータに基づく議論を進めることとしています。外来機能報告制度は、病院及び有床診療所を対象(無床診療所は任意)として、2022年4月から施行されました。


報告様式としては、「紹介受診重点医療機関になる意向の有無」などを報告する様式1と、「医療資源を重点的に活用する外来の実施状況」などを報告する様式2の2種類あります。この報告について、一部レセプト情報の補正作業後に再度集計を行う必要が生じたため、報告期間の延期が行われていました。


今回2月3日に、厚生労働省は「外来機能報告の報告様式2のスケジュール等について」を事務連絡し、以下のような外来機能報告のスケジュールを新たに示しました。



(1)報告期間
様式1:2022年10月1日~2023年4月30日(予定)
様式2:2023年3月6日~2023年3月29日(予定)


(2)報告後のスケジュール
① 都道府県による確認期間
:2023年4月1日~2023年4月30日(予定)

② 紹介受診重点医療機関のとりまとめ等に向けた協議の場で活用するデータの国からの提供日(報告期間内に報告された電子データ)
:2023年5月中(予定)

③ 紹介受診重点医療機関のとりまとめ等に向けた協議の場で活用するデータの国からの提供日(報告された電子データ
:2023年6月中(予定)

④ 2022年度外来機能報告に係る協議の場の開催期間
:2023年5月~2023年7月(予定)

出典:厚生労働省 事務連絡「外来機能報告の報告様式2のスケジュール等について」より抜粋


紹介受診重点医療機関は、外来機能報告に基づき、地域の協議の場で都道府県が明確化することとなっています。当初のスケジュールでは、2022年度内に都道府県による紹介受診重点医療機関の公表が予定されていましたが、報告期間の延長を踏まえ、紹介受診重点医療機関が明確化されるのは、2023年8月以降になると想定されます。


また外来機能報告においては、毎年度、都道府県に「医療資源を重点的に活用する外来の実施状況」「紹介受診重点医療機関となる意向の有無」「地域の外来機能の明確化・連携の推進のために必要なその他の事項」を報告することが必要になってきます。


このうち「医療資源を重点的に活用する外来」には、①医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来(手術前後30日間の外来)、②高額等の医療機器・設備を必要とする外来、③特定の領域に特化した機能を有する外来(紹介患者に対する外来等)—が該当することになります。


今回、2月13日に「『令和4年度外来機能報告制度に関するQ&A』について(その1)」が事務連絡され、上述の②の「高額等の医療機器・設備を必要とする外来」の中に「新型コロナウイルス感染症のPCR検査や抗原検査(抗原定量検査・抗原定性検査)」は含まれない-という考えを明らかにしました。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。

新型コロナ5類への位置づけ変更決定、5月8日から

新型コロナウイルス感染症対策本部は1月27日、新型コロナの感染症法上の位置づけについて、オミクロン株とは大きく異なる変異株が出現するなどの特段の事情が生じない限り、2023年5月8日に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を正式に決めました。


では5類に移行することにより、これまでの状況とどう変わるのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症が新型インフルエンザ等感染症に該当しないものとされたことに伴い、これまで講じてきた各種の政策・措置について、見直しを行うこととなります。このうち、患者などへの対応や、医療提供体制については、3月上旬をめどに具体的な方針を示すとしています。見直しによる対応は以下の通りとなっています。


<患者などへの対応(外来・入院の自己負担分の公費支援)>
・影響を緩和するための措置により、段階的に移行


<医療提供体制>
・これまでは感染症患者を受け入れる医療機関が限定
・今後は、幅広い医療機関でコロナ患者が受診できるよう、必要となる感染対策や準備を講じつつ段階的に移行


<サーベイランス>
・患者毎の届出(発生届)は終了し、患者の発生動向については定点サーベイランスに移行
・ただしゲノムサーベイランスは継続


<基本的な感染対策(マスク、換気、手洗い等)>
・引き続き、効果的な換気や手洗いなどの手指衛生の励行をお願い
・マスクや換気等の基本的な感染対策については個人の主体的な選択を尊重


<ワクチン>
・必要な接種は引き続き自己負担なく受けられるようにする





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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定登録医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。