2020.05.28

新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査より

新型コロナウイルス対策としての緊急事態宣言が5月25日、全国で解除されました。

まだ完全に終息したわけではありませんが、諸外国のような感染爆発的な状況はいったん回避されたように思われます。ただまだ第2波、第3波の可能性もあることから油断は禁物ですね。

そして、新型コロナウイルスの影響は病院経営においても、非常に大きなインパクトを与えています。

日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会の3団体が5月18日に公表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査」(速報)から、病院経営の厳しい状況がうかがえます。

■4月病院収入は軒並み減、前年比▲10%以上

速報資料では、2019年4月と2020年4月の実績が比較されていますので、一部をご紹介します。

病院全体(回答数1,049施設)では、
・入院収入は▲8.9%
・外来収入は▲11.5%
・その他医業収入は▲22.8%
と大きく減少し、2020年4月の医業利益率は▲9.0%。

またコロナ患者を受け入れている病院(269施設)に絞ると、
・入院収入は▲12.2%
・外来収入は▲12.0%
・その他医業収入は▲24.5%
と大きく減少し、2020年4月の医業利益率は▲11.8%となっています。

さらに詳細の資料では、外来延患者数、初診患者数、手術件数などの比較もされています。2019年4月と2020年4月の比較をしてみると、

病院全体(回答数1,049施設)では
・外来延患者数:8518人→6841人(▲19.7%)
・初診患者数:919人→532人(▲42.1%)
・病床利用率:82.2%→75.9%(▲6.3ポイント)
・手術件数:156件→128件(▲17.9%)
・救急受入れ件数:380件→246件(▲35.3%)
と軒並み減少しています。

またこれをコロナ患者を受け入れている病院(269施設)に絞ると、
・外来延患者数:17355人→13682人(▲21.2%)
・初診患者数:1809人→1054人(▲41.7%)
・病床利用率:78.2%→67.1%(▲11.1ポイント)
・手術件数:363件→292件(▲19.6%)
・救急受入れ件数:943件→606件(▲35.7%)

コロナ患者を受け入れることは必要なことですが、経営的には非常にマイナスのダメージが大きいことがうかがえます。

さらに8つの特定警戒都道府県(北海道・埼玉・千葉・東京神奈川・京都・大阪・兵庫)に絞ってみると、
・外来延患者数:9682人→7403人(▲23.5%)
・初診患者数:1105人→574人(▲48.1%)
・病床利用率:82.5%→75.3%(▲7.2ポイント)
・手術件数:181件→143件(▲21.0%)
・救急受入れ件数:375件→241件(▲35.7%)

となっており、他のエリアと比べると「外来」により大きな影響が大きく、特に初診患者数などは5割減になっていることがうかがえます。

全体的には入院単価の高い手術や救急などが、それぞれ20%、35%前後減っており、病院経営に大きな打撃を与えているといえそうです。

また入院・外来以外でも、当社のクライアントの状況などをみると、健診事業がストップしてしまっていることも病院経営を逼迫している大きな要因の1つといえます。健診事業といえば、比較的利益率の高い事業ですが、感染防止の観点から内視鏡などの検査を延期するように医師会等から通達が入ったこともあり、健診事業が1月近く完全にストップしている施設もあります。

さらに、マスクやガウンなどの医療材料も高騰していたこともあり、費用面でも例月より苦しくなっている施設も多いかと思われます。

このように緊急事態宣言解除後の病院経営は極めて厳しいといえます。

■経営難からの医療崩壊を防ぐために

このような状況を鑑みると、医療機関への緊急的な助成は必要となってきます。

新型コロナウイルス感染症患者受入病院に対する助成金等の支給(診療報酬の増額や危険手当支給に対する助成など)はもちろんのこと、新型コロナウイルス感染症の診療の有無に関わらず、全ての医療機関の収入減少に対する助成なども検討すべきと考えます。

さらには、第2波、第3波に備えて、病院としては感染対策を含めた医療提供体制の整備もしていかねばなりません。その点も考慮すると、ある程度の助成は必要ではないかと考えます。

そうでなければ、経営難からの医療崩壊につながる恐れも強く危惧されますし、そうなれば第2波、第3波の新型コロナウイルス感染症への対応が困難になりかねません。

そのような状況下、つい先日5月27日に新型コロナウイルス感染症の感染防止、医療提供体制の確保、経済対策などを目指す第2次補正予算を閣議決定されました。

2次補正単体では31兆9114億円が計上されており、医療提供体制の確保等を目指す厚生労働省所管分は4兆9733億円となりました。

ポイントは次の3つを挙げています。
①検査体制の充実、感染拡大防止とワクチン・治療薬の開発(2719億円)
②ウイルスとの長期戦を戦い抜くための医療・福祉の提供体制の確保(2兆7179億円)
③雇用調整助成金の抜本的拡充をはじめとする生活支援(1兆9835億円


医療機関の経営支援に関しては②に該当し、「医療機関等の経営支援のため、無担保・無利子融資を拡充」といった内容も含まれています。

その他、医療物資や個人防護具についても国で確保し、必要な医療機関等へ配付など、支援策がいろいろと盛り込まれているので、一度厚労省のホームページでご確認することをおすすめします。

■令和2年度厚生労働省第二次補正予算案の概要
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/20hosei/02index.html

---------------------------------------
◆筆者プロフィール
---------------------------------------
森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社
認定医業経営コンサルタント
1982年、埼玉県生まれ。
法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学
ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社。
現場営業から開発・企画業務まで携わる。
2015年、医療総研株式会社に入社し、
認定登録医業経営コンサルタントとして、
医療機関の経営改善や組織変革、
人事制度構築などの運営改善業務に従事。