日本社会における2大テーマの最新版が公開

我が国、日本で取り組まなければいけない2大テーマとして、「人口減少」と「高齢化」があります。今回はその2つの最新データが公表されましたので、そちらについてまとめておきたいと思います。

13年連続、自然増減数は減少傾向

厚生労働省が9月17日に、2019年の「人口動態統計(確定数)の概況」を公表しました。

この調査は、人口動態事象を把握し、人口及び厚生労働行政施策の基礎資料を得ることを目的としておこなわれているものです。一般的に、人口が拡大する国は成長傾向にあるといえますし、縮小する国は何をしても頭打ちになると考えられますので、この人口動態統計は医療・介護に限らず、かなり重要な調査といえます。

では、その人口動態統計が最新のデータではどうなったのか?簡単に触れていきたいと思います。

・出生数は5万人減少

2019年の出生数は86 万5239 人で、前年の91 万8400 人より5 万3161 人減少しています。4年連続で過去最少を記録しており、1899年の統計開始以来初めて、90万人を割り込むという数字になっています。また出生率(人口千対)も7.0 で、前年の7.4 よりも低下しています。

さらに、「1人の女性が一生の間に生む子供の数」に相当する合計特殊出生率を見ると「1.36」で、前年の1.42から0.06低下しました。

・死亡者数は増加

その一方で、死亡者数は138 万1093 人で、前年の136 万2470 人より1 万8623 人増加し、死亡率(人口千対)は11.2 で前年の11.0 より上昇しています。

・自然増減数は減少

出生数と死亡数の差である自然増減数は△51 万5854 人で、前年の△44 万4070 人より7 万1784 人減少しています。また自然増減率(人口千対)は△4.2 で前年の△3.6 より低下しています。数・率ともに13 年連続で減少・低下した結果となっています。

高齢化率は28.7%まで上昇


つづいて高齢化についても最新データをみていきましょう。

高齢化については、総務省が「敬老の日」(9月16日)を迎えるに当たって、「統計からみた我が国の高齢者―『敬老の日』にちなんで―」を公表しました。こちらの資料には、高齢者の人口や高齢者の就業についてレポートされています。

・高齢者数と率は過去最高値

最新の統計値として日本の高齢者(65歳以上)数は3617万人(2020年9月15日現在)となっています。

前年の3587万人と比較すると、高齢者数は30万人増加したことになります。高齢者の増加ピークとなる「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ、第一次ベビーブーム期)のうち最後の年となる1949年(昭和24年)生まれの人が高齢者層に仲間入りした2014年では同一基準で前年比110万人も増加したが、それと比べると前年比の増加数は少なくなっています。

また高齢化率は2013年では初めて、総人口に占める高齢者の割合が25.0%を超えて以来上昇し続け、2020年は28.7%にまで上昇しました。数・総人口比ともに過去最高の値となっています。

当資料によると、総人口は29万人減少したにもかかわらず、高齢者は30万人増加しており、生産年齢層人口の減少がみてとれます。

・日本の高齢者就業率は主要国2位

一方で、高齢就業者数は16年連続で増加し、892万人と過去最多となり、就業者総数に占める高齢就業者の割合は、13.3%と過去最高となっています。就業者の7.5人に1人が65歳以上高齢者であり、会社や組織にとって、貴重な戦力であることがわかります。

世界の主要国と比較すると、日本の高齢者就業率は24.9%で、韓国の32.9%に次いで高くなっています。アメリカ合衆国は19.6%、カナダは14.3%、イギリス10.7%、ドイツ7.8%などと続きます。日本の高齢者の就業率は、主要国の中でも高い水準にあるといえます。

2つの視点から見直すきっかけに


今回は「人口減少」と「高齢化」について、最新データが公表されましたので、それについて簡単にまとめさせていただきました。

医業経営の視点で考えると、人口構成の変化は「疾病構造の変化」に直結します。仮に自院の提供する医療サービスが地域の疾病構造と合致しないのであれば、現在提供している医療サービスなどを見直しする必要性がでてくるかもしれません。

また働き手の確保という点からも、少子高齢化の中で競争がより激しくなってきますので、求職者にとって魅力的な医療機関にならなければ選んでもらえなくなることは想像に難しくありません(現時点でもそうである地域は多い)。

患者(医療介護ニーズ)と職員(求職者のニーズ)の両方の視点が必要といえるでしょう。「2つの視点において自院はどうか?」見直す1つのきっかけになれば幸いです。

引用元
厚労省:令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況
総務省:統計トピックスNo.121 統計からみた我が国の高齢者


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。