2021.01.08

新型コロナの医業経営への影響~回復傾向にあるものの依然として厳しさ続く~

2020年12月23日に開催された社会保障審議会・医療保険部会では、医療費や患者数などへの新型コロナウイルス感染症の影響についての最新資料が報告されました。今回はその内容について一部紹介していきます。

■医療費6-8月、前年同月比で改善傾向

先日7日に首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言が出されました。新型コロナウイルス感染はいまだに猛威を奮っています。12月23日の医療保険部会では、新型コロナウイルス感染症の医療費などへの影響について、「2020年4-8月分のデータ」をもとに新たな報告がされました。

医療費全体の前年同月比の推移をみると、【4月マイナス8.8%、5月マイナス11.9%、6月マイナス2.4%、7月マイナス4.5%、8月マイナス3.5%】となっています。しかしこれに、休日数などの調整を行うと、医療費全体では【4月マイナス11.1%、5月マイナス12.6%、6月マイナス6.1%、7月マイナス1.8%、8月マイナス1.2%】と、6月~8月にかけて減少幅は縮小していることがわかります。

入院と入院外などの区分ごとの医療費においても同様の傾向にあり、徐々にではありますが医療費全体としては改善傾向にあることがわかります。


図表:休日数等の調整後の医療費の動向:2020年4月~8月


■レセプト件数、入院9月分は前年同月比101.7%

レセプト件数・点数に関する調査においても同様の傾向がみられます。レセプト件数の前年同月比でみると、4月以降、医科・歯科・調剤のいずれにおいても減少が見られていますが、6月には下げ幅に回復がみられていることがわかります。

また以下のうち入院・外来別のレセプト件数でみてみると、入院・外来ともに減少はしていますが、外来の減少幅の方が大きくなっています。双方ともに先程同様に6月には下げ幅の回復がみられており、9月分の入院については前年同月を上回っていることがわかります。


図表:レセプト件数の前年同月比






■9月整形外科などは前年同月と同水準以上まで回復

医科診療所の診療科別のレセプト件数でも同様の傾向がみられ、4月、5月はいずれの診療科も減少していますが、6月には下げ幅は回復しています。しかし診療科ごとのバラツキがみられています。9月分の整形外科は100%(前年同月と同水準)、産婦人科は101.4%(前年同月を上回る)に対して、小児科は70.1%、耳鼻咽喉科は78.1%となっています。

さらに、患者数を反映するレセプト件数だけでなく、医療機関の収入を反映するレセプト点数についても同様のバラツキがあり、9月分の整形外科は103.9%、産婦人科は104.5%(前年同月を上回る)に対して、小児科は72.7%、耳鼻咽喉科は79.8%と、いまだに厳しい経営状況が続いていることがわかります。

図表:医科診療所の診療科別レセプト点数の前年同月比


そのほかにも当資料では、年齢階級別や疾病分類別、診療内容別などの報告がされており、非常に見応えのある内容となっています。

■最後に

前述のとおり医療費全体としては徐々に回復傾向にあるとしても、これまでの赤字分を補填するような状況にはいたっていないことがわかります。また首都圏の1都3県を対象にした緊急事態宣言が出されたことにより、患者の受療動向にもこれまで以上に受診抑制の傾向が強まることが想定されます。
これらが、医療機関の経営にどのように影響を及ぼしていくのか、今後も注視していく必要があるといえます。

図表出典:第138回社会保障審議会医療保険部会 資料


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。