2021.05.17

コロナ回復患者の後方支援病院確保に向け支援措置を再整理

厚生労働省は5月11日に「新型コロナウイルス感染症から回復した患者の転院を受け入れる後方支援医療機関の確保について」を事務連絡しました。今回の内容は、新型コロナウイルス感染症発症後、懸命な治療によって回復し、退院基準を満たした患者(回復患者)を受け入れる後方病院に対する支援策について、これまで実施されている内容と合わせて整理したものとなっています。それだけ現状において、回復患者を受け入れる後方支援医療機関の確保が重要課題となっていることがうかがえます。

■直近のコロナ病床稼働率、大阪80%超

直近のコロナ病床稼働率について少し見ていきたいと思います。

5月12日に開催された第34回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに資料によると、5月4日時点で全国は44.9%となっています。まだ5割を満たない稼働状況ですが、重症者数の動向が増加傾向であることを考えると予断を許さない状況であることがうかがえます。

エリア別では、東京は36.4%、神奈川28.2%、埼玉44.3%、千葉30.0%と首都圏エリアでは全国の稼働率を下回っています。一方で、大阪83.2%、京都67.6%、兵庫61.3%、福岡62.2%、沖縄68.9%と全国の稼働率を大きく上回っています。特に大阪は、この時点では8割を超えています。

コロナ病床を増やせばよいのでしょうが、すぐには難しいということもあり、まずはコロナ病床の回転率をできるだけ上げていく必要があるといえます。

そうすると、回復患者を即座に受け取ってくれる後方支援医療機関の役割が重要となってくるのです。

出典:第34回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード

■後方支援医療機関に対する主な支援措置を再整理

後方支援医療機関に対する支援措置として、次のようなものがこれまでアナウンスされています。あらためて確認していきましょう。

【1】診療報酬上の臨時的な取扱い
①コロナ感染症から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関で、必要な感染予防策を講じて入院診療を行った場合は、二類感染症患者入院診療加算の3倍(750点/日)を算定できる

②コロナ感染症から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関では救急医療管理加算1(950点/日)を最大90日間算定できる

③コロナ感染症から回復した後、引き続き入院管理が必要な患者を受け入れた医療機関で、「個室」で必要な感染予防策を講じた上で入院診療を行った場合は、二類感染症患者療養環境特別加算の「個室加算」(300点/日)を最大90日間算定できる

【2】新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金
院内等での感染拡大を防ぎながら必要な医療を提供するための診療体制確保等に要する費用が補助対象となっており、回復患者の受入れに当たって必要となる個人防護具の購入費等も補助対象となる(令和2年度に補助を受けた医療機関では、原則として補助対象外である点に留意)

【3】オーバーベッドの特例
①新型コロナウイルス感染症の退院基準を満たしたが、引き続き入院が必要な状態の患者について、当該患者の転院を受け入れている医療機関においては、医療法施行規則第10条ただし書きの臨時応急の場合に該当し、当該患者について、緊急時の対応として、病室に定員を超過して入院させたり、病室以外の場所に入院させたりして差し支えない

②診療報酬においても、緊急事態宣言の出されている期間については、その対象の区域にかかわらず、全ての保険医療機関について、「厚生労働大臣の定める入院患者数の基準及び医師等の定員数の基準並びに入院基本料の算定方法について」の減額措置は適用しない

【4】院内感染によりクラスターが発生した場合の支援
緊急包括支援事業において、「院内感染の発生により、病棟全体や病院全体が実質的に重点医療機関の要件を満たすような医療機関については、都道府県が厚生労働省と協議して重点医療機関と認めた場合は、 都道府県が認めた期日に遡及して、都道府県が認めた期間に限り指定されたものとみなして、重点医療機関の空床確保の補助の対象として差し支えない」とされている。クラスター発生時における空床や休止病床について、コロナ感染患者を受け入れるためのものでなくても、都道府県が認めた期間に限り重点医療機関に指定されたものとみなして、緊急包括支援交付金を活用して、重点医療機関の空床確保の補助対象とすることが可能である。

その他にも、【後方支援医療機関への転院支援】として、「後方支援医療機関のリスト作成」「G-MIS による受入可能病床数の把握」、「地域の実情に応じた転院調整」、「転院患者の移送の支援」などをあらためて公表しています。

さらに、後方支援医療機関が、安心して回復患者を受けられるように【新型コロナウイルス感染症患者の退院基準】も明確に示しています。

■おわりに

新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、あらためて各医療機関の医療機能の明確化が必要であり、その情報を各地域、医療機関で共有しておく必要であると感じます。そしてそれをどこの誰がリーダーシップを発揮して実行していくのか、注目したいところです。


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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)

医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。