医師の働き方改革、暫定特例水準指定の5段階評価案~各医療機関の労務環境等の評価結果を公表~
2024年4月から医師の時間外上限規制、いわゆる『医師の働き方改革』がスタートします。医療機関は年間の上限基準である960時間(A水準)を超えて勤務する医師がいる場合には、事前に「医療機関勤務環境評価センター」の評価を受ける必要があります。8月23日の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」では、その医療機関勤務環境評価センターの評価について議論が行われ、案として5段階評価の内容が示されました。
■暫定特例水準指定までの流れ
2024年4月から医師の時間外上限規制がスタートします。先日成立した「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(改正医療法)」に、いわゆる「医師の働き方改革」の枠組みが盛り込まれました。
医療機関においては、すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制を適用するとともに、追加的健康確保措置として、「28時間までの連続勤務時間制限」「9時間以上の勤務間インターバル」「代償休息」「面接指導と必要に応じた就業上の措置」などを講じる義務が管理者に課されることになります。
図表:新たな時間外労働の上限規制の原則
■暫定特例水準指定までの流れ
2024年4月から医師の時間外上限規制がスタートします。先日成立した「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(改正医療法)」に、いわゆる「医師の働き方改革」の枠組みが盛り込まれました。
医療機関においては、すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制を適用するとともに、追加的健康確保措置として、「28時間までの連続勤務時間制限」「9時間以上の勤務間インターバル」「代償休息」「面接指導と必要に応じた就業上の措置」などを講じる義務が管理者に課されることになります。
図表:新たな時間外労働の上限規制の原則
出典:「医師の働き方改革の推進に関する検討会」資料
すべての医療機関の勤務医に対して、時間外労働を年間960時間(A水準)以内におさめることを目標としていますが、それが難しい医療機関も当然出てきます。そういった医療機関については、事前に都道府県からB(連携Bも含む)、C水準の指定を受ける必要があります。その指定を受けるための流れは以下のとおりになります。
【1】医療機関で「医師労働時間短縮計画」の作成や「追加的健康確保措置」の体制構築を行う
↓
【2】新設される「医療機関勤務環境評価センター」が各医療機関の体制や取り組み状況を評価する
↓
【3】都道府県が評価センターの評価結果を参考に「B・連携B・C水準に指定するべきか否か」を決定する
■5段階評価案が示される
8月23日に「医師の働き方改革の推進に関する検討会」が開催されました。検討会では、先ほどの「医療機関勤務環境評価センター」の評価について議論され、評価案が提案されました。
まず大前提として、労働関係法令および医療法に規定された事項を遵守していることが必要です。そのうえで、「医療機関の医師の労働時間短縮の取り組みの評価に関するガイドライン(評価項目と評価基準)」に基づき、『ストラクチャー(労務管理体制)』『プロセス(医師の労働時間短縮に向けた取り組み)』『アウトカム(労務管理体制の構築と労働時間短縮の取り組み実績後の評価)』3つの評価視点(図表)ごとに、「〇」「×」によって評価されます。その評価結果を踏まえて、S・A・B・C・Dの5段階で全体評価(図表)を行うとしています。
図表:3つの評価視点
すべての医療機関の勤務医に対して、時間外労働を年間960時間(A水準)以内におさめることを目標としていますが、それが難しい医療機関も当然出てきます。そういった医療機関については、事前に都道府県からB(連携Bも含む)、C水準の指定を受ける必要があります。その指定を受けるための流れは以下のとおりになります。
【1】医療機関で「医師労働時間短縮計画」の作成や「追加的健康確保措置」の体制構築を行う
↓
【2】新設される「医療機関勤務環境評価センター」が各医療機関の体制や取り組み状況を評価する
↓
【3】都道府県が評価センターの評価結果を参考に「B・連携B・C水準に指定するべきか否か」を決定する
■5段階評価案が示される
8月23日に「医師の働き方改革の推進に関する検討会」が開催されました。検討会では、先ほどの「医療機関勤務環境評価センター」の評価について議論され、評価案が提案されました。
まず大前提として、労働関係法令および医療法に規定された事項を遵守していることが必要です。そのうえで、「医療機関の医師の労働時間短縮の取り組みの評価に関するガイドライン(評価項目と評価基準)」に基づき、『ストラクチャー(労務管理体制)』『プロセス(医師の労働時間短縮に向けた取り組み)』『アウトカム(労務管理体制の構築と労働時間短縮の取り組み実績後の評価)』3つの評価視点(図表)ごとに、「〇」「×」によって評価されます。その評価結果を踏まえて、S・A・B・C・Dの5段階で全体評価(図表)を行うとしています。
図表:3つの評価視点
図表:全体評価の考え方
【5段階評価の概要】
S:他の医療機関の模範となる取り組みが行われ医師の労働時間短縮が着実に進んでいる
A:医師の労働時間短縮に向けた医療機関内の取り組みは十分に行われており医師の労働時間短縮が進んでいる
B:医師の労働時間短縮に向けた医療機関内の取り組みは十分に行われているが、医師の労働時間短縮が進んでいない
C:医師の労働時間短縮に向けた医療機関内の取り組みには改善の必要があり医師労働時間短縮計画案から今後の取り組みの改善が見込まれる
D:医師の労働時間短縮に向けた医療機関内の取り組みには改善の必要があり医師労働時間短縮計画案の見直しが必要である
出典:「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(2021年8月23日)の資料
■D判定病院には訪問評価が必要
2024 年4月からの時間外労働の上限規制適用に向けて、一斉に医療機関勤務環境評価センターによる評価の受審、その結果を踏まえた都道府県によるB・連携B・C 水準の指定を行う必要があります。 2022~2023 年度にまず書面で評価を受け、評価結果がD評価となった医療機関については、 2023 年度に追加で訪問評価を受けることとしています。評価保留やD評価となった場合の訪問評価、都道府県における指定の手続きがあることから、 評価の受審が遅い場合には 、2024年4 月に指定が間に合わない可能性があります。そうした事態を避けるためにも、都道府県の勤務環境改善支援センターなどへの相談や、助言・指導を早い段階から受けることが必要といえます。
また評価結果の有効期間は「原則3年間」とされており、初回指定から3年の間に更新評価を受けることになります。
出典:「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(2021年8月23日)の資料
■おわりに
医療機関勤務環境評価センターによる5段階の評価結果は、公表していく方針とあります。公表の方法などは議論される予定となっていますが、評価結果を明らかにすることにより、各医療機関での勤務環境の改善への取り組みが促進されることが期待されているようです。
この評価結果は、その病院の勤務環境を表すものであり、D評価であればブラックな病院という印象を、一方でS評価であれば健全な職場環境であるという印象を与える可能性もあり、医師や医療従事者などの採用や確保にも影響を与えることも考えられます。
このように医師を始めとする医療機関における勤務環境改善への取組みは、これから加速する「働き手不足」という長期的な経営課題に対する対応策として、取り組まなければならない重要課題といえるでしょう。
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◆筆者プロフィール
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森田仁計(もりた よしかず)
医療総研株式会社 認定医業経営コンサルタント
1982 年、埼玉県生まれ。法政大学工学部卒業後、株式会社三菱化学ビーシーエル(現LSI メディエンス)に入社し、現場営業から開発・企画業務まで携わる。2015 年、医療総研株式会社に入社し、認定登録医業経営コンサルタントとして、医療機関の経営改善や人事制度構築などの組織運営改善業務に従事。著書に『医療費の仕組みと基本がよ~くわかる本』(秀和システム)、『医業経営コンサルティングマニュアルⅠ:経営診断業務編①、Ⅱ:経営診断業務編②、Ⅲ:経営戦略支援業務編』(共著、日本医業経営コンサルタント協会)などがある。